永遠に醒めない恋をした
「だあから、本籍ってなんだよ」
「住民票に書いてるでしょ」
「書いてねえよ」
「あ!本籍地入りの住民票取ってこいって言ったのに本籍地入りにしなかったんだ!バーカ!銀千代バーカ!」
「なんだよ住民票にそんなオプションみたいなもんあるのかよ」
二人用の小さなダイニングテーブルに頭を突き合わせ、小春と銀千代は先ほどからウンウン唸ってたくさんの書類とにらめっこしていた。
書類の記載例を見ながら、これはなんだ、あれはなんだと二人で相談しながら、ひとつひとつ空欄を埋めていく。
「もう一回住民票取り直してきなよ」
「めんどくせえ。空欄でいいだろこんなとこ」
「だめ!バカ!銀千代バカ!」
「間違ってたら勝手に訂正してくれんじゃねえの。新しい本籍……なんだこりゃ」
初めて記入する書類の難解さに、普段さして頭を使って生きていない小春と銀千代は頭を抱える。頭を使っていなくても楽しく生きているのでいいといえばいいのだが、もうちょっと頭を使って生きてきてたらよかったかなあ、だなんて考える。
でも、頭を使って生きていたらたぶん銀千代と付き合い続けていないよな、とも思って、小春は考えることをやめた。
人生って案外、考えないで勢いで生きる方が幸せなときがあるのだ。
「新しい本籍ってどこに置いてもいいらしいよ。舞浜1番地1にしようよ」
「なんだそりゃ」
「夢の国だよ」
「はあ?ばっかじゃねえの」
そんなことを言いながら、銀千代は新しい本籍地、の欄に、舞浜と書き始めた。
ほら、やっぱり銀千代って案外優しい。
「なんだか嬉しいねえ」
「なにが」
「こうやって銀千代と一緒に色々書類を埋めていくのが。これからも一緒に色々協力してやっていこうね」
「めんどくせ。やだよ」
「えええ」
そう言って銀千代は豊かなまつ毛に縁どられた目を伏せて、また一生懸命書類に目を通していた。
大丈夫だよね、二人なら。
そう、小春は思う。
これからも、きっと私は銀千代に永遠に冷めない恋をするんだ。そして、銀千代も、私に。