26.今後
これでは、店で見た時と同じだ。ヒリンは肘掛けを指で叩く。
「あら。小指の縁に言葉は要らないとのことでしたが、そちらも暖かさで緩まれたのですね」
ダレークは答えない。ヒリンを見ることもない。
指を止め、組んでいた足を正した。気味の悪い不快さが苛立ちへと変わる。
相手の言葉を無かったことにする。
それは、上位者だけが許される。下の不出来を見逃すための、下位の者への情けで成り立つ行為だ。
それを伯爵家が、侯爵家であるヒリンに向けた。
ユーシュのマッチング云々とは別に、ダレークの先行きをどうにか塞いでやりたい気分になる。
「ユーシュ様。今後も同じことをされますよ」
促されるまま立ち上がろうとしたユーシュが止まる。ダレークの侍男が目を剥いた。
「…こ、コンゴ…?」
「ユーシュ様を妻とし、子を授かり、またその子が婚約をしても、改心しないと申し上げたのです」
ダレークが大きく息を吐く。ユーシュの肩を掴む手が赤くなっている。
「ラチアーバン嬢。ユーシュの友とはいえ、些か歯を見せすぎではないですか」
「いやだ。ヤケッナの遅咲きかしら」
耳を指で摩る。ダレークの首が赤黒く染まる。
ユーシュは服を握り締める。小さな唇は浅く動くも、言葉までは出てこない。
「それで構わないとおっしゃられるのでしたら、私はこれ以上申しません。しかし、よくよくお考えくださいませ」




