23.集まり
参加者はそれほど多くない。5つの机を中心に、それぞれ3人から4人ほどが立っている。
敢えて人数を絞ったのだから当然だが、侯爵家たるラチアーバン主催の集まりとしては、寂しい光景だった。
左端の机に顔を向ける。
周りは皆、同性同士だとしても2人以上で連れ立っている。その中で1人立つ姿は、新しい話題を提供しているようなものだった。
「ユーシュ様。ランの萎みが早まるようにと祈っておりました。お越しいただきありがとうございます」
「お招き感謝致します」
ヒリンが隣立つと、より周りの意識がユーシュへ集まる。緊張にユーシュの手が震え始めた。ヒリンはしかし、それに言葉をかけない。
首を左右に動かした後、頰に手を当てた。
「小指のご縁の方は、どちらへ?」
震えていた手が握り込まれる。ヒリンの策を下りるなら、ここしかない。
ユーシュは柔らかな眉を下げてみせた。
「ダレーク様は領内の対応でご挨拶が叶わず…アベの手を払い、ヒリン様とヒサユリを愛でたいと申しておりました」
手を口元へ移動させる。目を意識し見開いて、声音を高くした。
「まあ!領地で?アベの悪戯には困ったこと…ユーシュ様、私が身体を空けますので、ダレーク伯によろしくお伝えくださいませ。我が庭の誇るヒサユリで、お二人の道を温めたいのです」
「そのお言葉だけで、私の胸にはヒサユリが揺れております。重ねて感謝致します、ヒリン様。ダレーク様に必ず申し伝えます」
ダレーク、ダレークと名前を繰り返す。
貴族の繋がりは広い。話は日を3度見る内に貴族全体へ行き渡る。
侯爵家の招待をヒサユリの時期に連絡も無く欠席した。
婚約者を一人集まりの場で放置した。
侯爵家に都合を調整させた。
これだけでも正式な後継である名に傷が付く。
更に、ダレークが実際どこにいたか、何をしていたか。
それが広まれば、ヒリンの期待は現実のものとなる。
「待ち遠しいですわ」
上がる口端を押さえ込み、ヒリンは呟いた。




