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15.教えの成果



「夜をいくつ過ぎたでしょうか。素敵な会でございましたね、キレシオ子爵」


ヒリンの言葉に男は頭を上げる。

突いたら破けそうな頰を緩ませ、気の抜けた顔をヒリンへ向けた。


「いつかお側で昼を迎えたいと願っておりました。お越しいただき光栄です。ラチアーバン嬢」


主催である男・キレシオは、挨拶を終えた安堵か軽く息を吐く。

ヒリンの後ろに立つワトナへ僅かに視線を向けると、不思議そうに口を呆けさせた。


「美しい華に目が惑ってしまったようです。お連れのご令嬢のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


ワトナは教えた通り、目礼し笑顔を称えた。キレシオはヒリンへ向けた礼と同じものを返す。

侯爵家と同等の家格、と考えたのだろう。期待通りの反応に、ヒリンは震える唇を抑える。


「子爵、御無礼をお許しください。こちらはワトナ。王の手足に住む、私の友人です」

「…都民、でございますか?」


ヒリンに気付いた時以上に、キレシオは目を見開く。

初めて向けられるだろうヒリン以外の貴族の目に、ワトナの顔が赤くなった。


「ワトナは物覚えがとても良いのです。この作法も、教えを受けてから10も日を見ない内に身につけてしまって…今は通知所で働いておりますが、良いご縁に出会えればと願って止みません」


ワトナの肩に手を添える。ヒリンが侯爵家と知っている者も、知らない者も、彼女に貴族の繋がりがあることはわかった筈だ。いくつかの集団が視界の端でこちらを見るのがわかる。


「素晴らしい方をお連れいただき、感謝致します。私にも、ラチアーバン嬢の思いに力添えさせてください」


キレシオは大きく頷いた。先程まで話していた集団を振り返る。


「是非お2人にご紹介したい者がいます。スヲニィ、こちらへ」


近付いてきた女性もまた、ヒリンとワトナに頭を下げる。

見たことも名前を聞いたこともないため、それほど集まりには参加しない家格なのだろう。キレシオによく似た柔らかい笑顔を浮かべている。


「……きれい……」


ワトナが突然呟いた。ヒリンもキレシオも、女性も目を剥く。

女性の愛想笑いに乗りながら、ヒリンはワトナへの教えをやり直すと心に決めた。



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