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14.違い
粗雑。偽らず言えば、ヒリンは室内をそう感じた。
壁紙はヒリンが幼い頃流行した模様で、生けられた花は数が少なくやや萎れている。食事の盛られた皿は粘土製か木製な上、中身は香草の後味だけが残る。
主催は子爵家と聞いているが、余程金銭に余裕が無いか、平民とそれに集う貴族を下に見ているかだろう。平民が萎縮しないため、という可能性も僅かにあるが、余計な心配に見えた。
室内の中心で話している数人を窺う。立ち居振る舞いや服装からして平民の彼らは、時折会場に目を向けては、薄い笑みを向け合っていた。
ケミィの言う伯爵家に値する平民達は、成程、ワトナと随分異なる。体を泥で汚したことも、ランの頃に寒さを感じたことも無いに違いない。
「ヒリン様。あちらの方です」
「……ああ。見たことがあるわ」
いつの集まりかは覚えていないが、見覚えのある大きな腹だ。少し、そこそこ、まあまあ、服が悲鳴を上げている。
困窮していると聞いたことはない。とするならば、平民を下に見ているか、もしくは慮っているか。
ヒリンの存在に気付いた彼は、目を丸くしてヒリンへ歩み寄った。




