20 みんなの前で魔法が解けてしまいました。
住民の避難が終わり、ようやく戦える状態になりました。
魔法を放とうとすれば、魔物は建物を破壊しながら逃げ回る。
バレィラを放とうと構えた途端、崩れた壁が目の前に落ちてきて、急いで飛び退きます。
「この、ちょこまかと!」
今回の魔物はふわふわした見た目なのにとても素早い。ルーカスが振り下ろす刃を避けて着地します。
ソフィアが頬を膨らませて叫びました。
「もおおお! 邪魔ばっかしないでよ! 追尾の火!」
杖を大きく振り上げるとピンクの光球が、建物を避けながら魔物を追いかけ、魔物の頭に直撃しました。
これがソフィアの新しい魔法。
「ホーミング魔法か」
「やったあ!! お姉様! この隙に停止魔法を!」
わたしはうなずき、時計を構えます。
「エスペイラ!」
魔物は地に膝をついたまま停止し、ルーカスが剣で突いてたたみかける。
「エクストラディクション!」
ソフィアの送還で魔物が魔法陣の向こうに消えていきました。
「よ、よかった……。なんとかなりましたね」
今更になって足が震え、座り込んでしまいました。
離れたところで待機していた騎士たちが駆け寄ってきます。
「ありがとうございます。団長、魔法少女さん」
「いえ、役目を果たしたまでで……」
そろそろ時間切れになってしまう。
急いで退散しないとと思う前に、元に戻ってしまいました。
ーー騎士たちのいる前で。
「え、エデルミラ、さん!?」
ああ、ばれてしまいました。
隠しておきたかったのに。
魔法少女のままなら飛んで逃げるのに、ただの人間のおばあさんではそんなことできません。
「お姉様!」
ソフィアもまた、元の姿に戻ってしまいます。
ソフィアがいつもより遅く来た日。
草原で魔物に襲われた人の一人でした。




