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1 エデルミラ70歳、魔法少女になる。

挿絵(By みてみん)

全26話のコメディ投稿していきます。

最終話まで予約投稿しています。

「殿下いけません! このあと語学の先生がいらっしゃるのですよ!」

「うるさい、ばあや! 俺は勉強なんてまっぴらなんだ!」


 ダミアン王子はわたしの制止を無視して、部屋を出ていってしまいました。

 

 わたしはエデルミラ。

 バル国バルトロン城にお仕えして55年。今年70歳になるメイドです。


 王子はもう16歳。

 だというのに、日課は家庭教師から逃げること。

 国主となる心構えが足りない困ったお人なのです。


「くーー!! また逃げましたねダメアン! 探すの大変なのに! 残業代よこせ!」

「アタシも探しします。もしもダメアン様が魔物と出逢ってしまったらいい餌ですわ!」


 若いメイドたちは怒り心頭。

 ダメアンというのは、密かにメイドの間で使われているダミアン王子のあだ名です。

 すぐ逃げるダメ男だからダメアン。


「助かるわ。わたしは庭園を探します。あなたたちは西棟と東棟をお願いできるかしら。できたら他の子や騎士にも声をかけて」

「はい、エデルミラさん!」


 いまバル国は平和とはいいがたい状況。

 正体不明の、通称魔物 ( まもの)と呼ばれる化物がうろつくようになったのです。


 騎士団が巡回して追い払ってはいますが、倒すには至っていません。

 魔物に見つかったが最後、王子は一分と保たず召されるでしょう。


 二人のメイドはそれぞれ駆け出す。わたしも庭園に向かいました。



 刈り込まれた庭木の影、東屋、石像……人が隠れられそうな場所を丹念に見て回りますが、姿が見えません。

 王子が常に移動している場合、いつまでも終わらない追いかけっこです。


「殿下! 出てきてくださいませ!」


 歩き疲れ足が痛みだした頃、空から白くてふわふわの何かが舞い降りてきました。


「こんなに才能の溢れる人とはじめて会ったでし! ぺぺと契約して魔法少女になってほしいんでし」


 それは、白いうさぎでした。

 どうしてうさぎが喋るのか、宙に浮いているのか、疑問はつきません。


「魔法少女? わたしがですか」

「キミは魔法少女のリーダーにふさわしい。ほかの魔法少女と一緒に、魔物を異界送還してほしいのでし!」 


 わたしは魔法少女と名乗るにはあまりに年を取りすぎています。


「ねえあなた。あまり老人をからかうものではないわ。こんなおばあちゃんが少女になんてなれるものですか」

「ぺぺはぺぺといいまし。そうお呼びくだはい」


 質問の答えになっていません。


「では、ぺぺ。わたしは見ての通り老体。それに、一度も武器を取ったことがないの」

「問題ありませんでふ。キミならできるでふ。これを空に掲げて、『トランスフォルマぺルーカ!』と唱えるのでふ!」


 もふもふした前足で、真っ青な石がついたブローチを渡されました。


 幼い女の子がするならまだしも、70歳のおばあちゃんがそんなことを? 


 ぺぺのつぶらな茶色の瞳がジッとわたしを見ています。

 試すまで、見込み違いだということを納得してくれそうもありません。

 あたりに人がいないのを確認してから、息を大きく吸い込んで言います。


「と、トランスフォルマー、ぺルーカ!」


 ブローチがまばゆい光をはなち、わたしの体を包み込む。

 手先、足先に光が走る。

 十部丈のメイド服も光に包まれました。

 ひっつめ髪にしていたまとめ髪が光を帯びてほどけていく。


「な、なにが起きているの?」


 心なしか、わたしの声が高くなっている。


 光がおさまったとき、わたしはーー

 伝説の魔法少女になっていました。


「なんっなんですかこれはーー!?」


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] こちらで連載してくださり嬉しいです!! そんでもって……魔法少女が変身後に若返るのはお約束ですよね!! ○ュアフ○ワーなどがまさにその先駆けでした( ´∀` ) 果たしてどうなっちゃうの…
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