第89話 スーパータッグ
刃を構える獣人娘2人。
「ん...あれ!?それ魔法具!?」
「え?ああ、折れたあの小太刀を修復に加えて強化したんだ。まぁ色々あって魔法具に昇華した、名は久遠だ。」
2人で話しているとマギア鳥が突っ込んできた。
ガキィンッ
「久遠...?」
「大雑把に言うと、終わりなき道って言う意味さ。」
「なにそれ...かっこいい!!」
ニコがマギア鳥を止めキジコが思いっきり蹴っ飛ばす。
1羽撃破。
「私の剣は無双の意味を込められている。この剣は大切な仲間と未来のために振るう刃であり、負ける事の出来ない覚悟を意味する。」
「だとしたらニコ、私との手合わせに相当な覚悟入れていたんだな!」
「ああ!」
私とニコは駆ける。
「決め台詞あるか?」
「?なんだそれは。」
「こういうのだ。」
私は息を吸う。
「終わりなき道...無限に広がる未来!久遠!」
「...!!。」
ニコはニヒッと笑う。
「未来を守る無双の覚悟と力!真成無双剣!」
「「いざ参る!!!」」
前方から襲い掛かるマギア鳥。
私達は正面から突撃する。
剣を力任せに振り、襲い掛かるマギア鳥を次々と斬るニコ。
金属を仕込めない間接部を的確に斬るキジコ。
4羽撃破、残り5羽。
2羽はさらに高い上空へ移動し監視役に回る。
3羽は監視役から回った情報信号で連携を変え私達の周り上空を旋回する。
5羽は魔法弾を発射する。
「レーザーネットバリア!!」
キジコが魔法弾を防ぐ。
煙が晴れるとニコの姿がない。
ガシャッ
1羽に突き刺さる大剣。
「命中!!」
監視役がこの一撃に気を取られた隙に、
バシュバシュッ
「そっちばっか見てると危ないよ?もう遅いけど。」
キジコのペネトレーザが監視役マギア鳥2羽を貫いた。
残り2羽、急に大きく旋回し始め少しでも被弾しないよう足掻く。
「あっという間だったね。」
「だな、せめて最後くらいハデに決めようじゃないか、キジコ!」
キジコとニコは武器に魔力を込め、お互い背を向ける。
「(ピピッ)」
マギア鳥は動いていない隙を見てお互いを挟み撃ちするように狙う。
「明鏡止水...。」
「全開闘気!」
マギア鳥との距離10m。
「抜刀、化猫妖炎斬!!」
「大解放、大一閃!!!」
ニコに斬られたマギア鳥はその一瞬でただの残骸と成り果て、
キジコに斬られたマギア鳥は通り過ぎたかと思った途端その身が真っ二つとなり、妖しい色の炎に包まれ焼失した。
2人はパチンッとハイタッチする。
「「いっちょあがり!!」」
ーーーーーーーーーー
マギア鳥を退け、ニコを加え進み出す行列。
「このまま約10kmでパースにたどり着くぞ。」
「ようやくか、長かったー。」
流石に歩き疲れた私。
レーダーをずっと広範囲に広げて歩いていた上にさっきの勝負で結構消費したので早く辿り着きたい気持ちでいっぱいだった。
「町に温泉ある?」
「あるぞ。ちょっと上の方だが大浴場がある。」
「本当か!なら到着次第さっさと入りたいな。」
「風呂上がりには館内の食事所に行くといい。風呂上がりに食べるひんやりとしたアイスは美味いぞ!」
「ほほ...お!?アイス、あるの!?」
「ああ!おすすめは酸味の効いたフルーツ味のクリームアイスだ!」
(間違いない、この世界アイスクリームがある!!)
周囲警戒しながらも、同年代の女子友のように2人は仲良く話している。(キジコは前世32歳の魂と異世界来て1年以上の猫肉体)
「楽しそうね、2人も小さい時は揃ってサンの実ジュースを風呂上がりグビって飲んでたなぁ。」
「「母上やめて。」」
そうこうしている内に大きな石橋に着く。
下には綺麗な海が広がっている。
「ようこそ!ここから先が事実上パースの領域内だ。」
どうやら他の保護内の国らしく、橋の先には港と町がある。
「ここまで来ればあと少しだ!みんな頑張るぞー!」
「おー!!」
ーーーーーーーーーー
???
「...しくじったのか。」
「は、はい。出撃した暗殺部隊と待ち伏せ兵は全滅でございます。」
やつれた顔で跪く兵。
威圧を出し椅子に座っている獣人の男。
「チッ、パースは他国との関係が深まっている。面倒なエデルとの同盟は止めようと思ったが...。」
「も、申し訳ありません王よ!!ど...どうか..!!」
「役立たずには要はない。」
ザシュッ
やつれた男の首が落ちる。
「片付けろ、そのゴミを。」
「ぎょ...御意。」
(クラルめが...死んでもなお我の邪魔をするとは忌々しい。貴様の娘は本当にうまくやっている...実にムカつく事だ。
なにが人らしく生きるだ、獣人は獣として生きる事を許された種族、本能のままに生きる事こそが正義だ。
いずれはこの大陸、いや全てが我の物としてくれる。)
この男の名はバノス。
ニコの叔父であり、ニコの両親と平穏派を虐殺した張本人である。
コンコンッ、
「入室を許可する。」
「失礼します、王よ。」
「用があるならさっさと話せ。」
「御意、実は...
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港町を抜け山の方へ入る私達。
意外にも人の流れはここも多い。
「ここらも人が多いね。」
「ああ、パースで管理している区域内だからね。でも、パースまででもある。」
「...そこから先はインヴァシオン派が関わってるのだね。」
「そう。」
でも歩く人達は平和そうである。
この平和と未来を守ることがニコが決めた自身の役割、そして今笑顔でいる人がいるという事はニコの努力はちゃんと結果となっている事だ。
ニコはすごいな。
自由奔放気味に生きてる私よりもずっと神獣にふさわしいだろう。
神獣資格は途中放棄出来ないからちょっと困るな。
「...?どしたのキジコ。」
「え?ああ、ニコのおかげでインヴァシオン派領域が近くても、皆んな笑顔で居られるのってすごいなって。」
「...!ありがとう。」
フォンッ
「(お嬢ら、聞こえるかー?)」
「あ、ジン!!」
「今役所の館からお嬢らが見えた、もうすぐ着くと皆に伝えておいてくれ。)」
「皆んな、もうすぐパースに着くぞ!」
「おおお!!」
「さぁ...ニコ、着いたら温泉案内よろしくお願い!」
「任せ...
「(いや...その...悪い、式典は双方で話し合い夕方になっている。今からあの大浴場行くには..その、時間が合わないんだ。)」
「...。」
キジコは全身に洗浄魔法をかけた!
「キジコ!?」
「...ちくしょおおおおおおお!!!!」
おたのしみはまだ先でした。
ちょっと罪悪感抱いたジンであった...。
次回、風呂




