第83話 ニコ派設立までのお話(後編)
食事を終え、ハルの武器屋へ戻ろうとしたニコとジン。
しかし直後、ニコ達のいる町の通りに金属の体を持つドラゴンが出現。
これにより町は大パニックになり町の武力で対抗するも、強い力を持つ竜には敵わず押されてゆく。
だが、両親達が残した意思と命を守る事を自らの意思で決めたニコは、皆を守るために大きな刃を奮うのだった。
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「ジャアアッ!!」
「ふんっ、はああ!!」
鋭利な爪の攻撃を避け反撃をするニコ。
まだ10歳という幼き肉体でありながら彼女は強く、竜に押されていないのだ。
奮う刃は金属の腕を弾き、火炎弾を切り裂いた。
「す...すごい..!」
「あれが...クラル様とラミ様の御息女..!」
その幼くも勇敢な姿を見た者達は勇気を出す。
「皆んな、俺達もまだ諦めない!!今自分の出来る事を最大限出し尽くせええええ!!!」
「おーーー!!」
ある兵は住民の避難誘導、
ある者は店にある物をかき集め必要な時に使えるアイテムを用意する、
またある物達は、強靭なロープを使い竜の動きを阻害し始める。
「(ピピピピッ....!)」
「...!!皆んな...!」
「ニコ様、我々も出来る最善を尽くします!!」
「お前ら!!ニコ様ばかりに任せんじゃねぇぞ!!」
「おーー!!」
「...はは、すげぇなハル、さすがクラル様とラミ様の娘だ。勇敢な姿を少し見ただけで皆の闘志が燃え始めやがった。」
「ああ...すごいね、あの子。」
(称号に[導く者]とあったが...それの影響もあるのかな?まあ気にする事でもないか、お嬢はその称号を持つのに相応しい存在だった...そういう事なんだろうから。)
「(ピピッ...周囲戦力増大、出力を上昇。)」
「(危険制御不可能、危険制御不k....)」
「ギャオーーーーッ!!!!」
「...ここからが本番...ね、てやあああ!!」
ーーーーー
「よし、避難所に着いた。ハル、お前は大人しくしとけ。」
「...すまないな。」
「気にするな、依頼こなさず死んでもらうとお嬢が困っちまうからな。俺はお嬢の所に向かう。」
「わかった、気をつけるんだよ。」
...!!ドラゴンの魔力が増えやがった。
やはりお嬢はそれに見合う力を持っていたんだな。
だが仮にも相手は竜種、強さは伊達じゃない。
俺も家から武器を持ってこよう、お嬢のこの町来て最初の心の拠り所になった以上寂しくはさせないってやつだ!
ジンは自宅へ戻りロングソードを持つ。
ちゃんと手入れして正解だった。
お嬢が町を守る刃ならこれはお嬢を守る刃...なんてな。
あとアイテムも持っていこう。近くの雑貨屋の分で足りない物があったらまずいからな。
ジンは念入りな準備をして家を飛び出し、ニコとドラゴンがいる場所へ向かったのだった。
ーーーーー
ガンッ、ガキィンッ!!
「でやあああ!!!」
「ガァアア!!」
ニコとドラゴン、両者の戦いは激化していた。
「魔力を込めて...縦斬り!!」
「ハアアア!!!」
異形竜は火炎弾を使い私の一撃を防ぎ、後退し私から距離を取る。
仮にもドラゴン、優れた知能があるようだ。
するとドラゴンはいきなり猛突進を繰り出す。
「シャアアアアア!!!」
ガァンッ!!
「うわっ!?」
ニコは大剣を盾に攻撃を防ぐも後ろに吹っ飛んでしまった。
「やばい..!!」
「キシャアアアッ!!!」
「ニコ様!!ニコ様を守れ!!」
「!!」
その瞬間、重厚な鎧と盾を持った兵団が私と異形竜の間に現れた。
「うおおおおおおお!!」
彼らは異形竜の攻撃を不動の岩の如く防いでいる。そしてその間に私は他の兵にアイテムや魔法具で応急処置を受けていた。
流石に魔力を消費しすぎたか。
すると一人の女性が私に話かける。
「ありがとうございます、ニコ様。」
「へ?」
「貴方が勇敢に戦ってくださったお陰で我々は今、ドラゴンと戦う準備を早急に整える事が出来ました。貴方がいなければまともな準備すら難しかったかも知れません。」
それは深い感謝の言葉だった。
その女性に続き皆が次々と私に頭を下げ始める。
「え!?...え!?」
「ありがとうございます、ニコ様!!」
皆が一斉にそう言葉を述べた。
それは同時に、皆がニコを上に立つ者として認めた事でもあったのだ。
「おいおい皆んな、お嬢が困ってるだろ?」
「あ、ジン!!」
そこにロングソードを持ったジンが現れた。
「お嬢、あとは任せな。」
「ダメ、私も行く。」
「だろうな、よし。お嬢は思うがままに戦え、俺が全力でフォローしてやる。」
私は立ち上がり、大剣を持ってジンと共に異形竜に向かって歩き始める。
「グルルル....!!」
「さあドラゴンさんよー!こっからは俺も参戦するから頑張りな!!」
「覚悟しな...!!」
「ガアアアアアア!!!!」
「「はああああああああ!!!!」」
二人は刃を構えドラゴンへ突撃する。
「でええやあああ!!」
ニコは大剣でドラゴンの右脚を狙う。
しかしドラゴンはその動きを読んで避ける。
が、その瞬間。
「こっちだぜドラゴンさん!!」
ズバッ
「ジャアアアッ!!!」
ドラゴンはニコに気を取られ後両脚の関節を斬られた。
「もういっちょ!!」
その言葉を聞き空へ飛ぶドラゴン。
だが、
ザクッ
「ガアアアッ!!?」
「ナイスヒットだお嬢!」
「こんな所で飛んだら的が増えるだけだもんね!」
ニコはドラゴンが飛んだ隙を狙い横腹目掛けて大剣を投げたのだ。
ドラゴンは横腹に大剣が刺さりダメージもあってバランスが取れず、逃げようとさらに高度を上げるも落下する。
その瞬間を狙いジンは、
「お嬢!!この剣を使え!!」
ジンは剣をニコに渡し走り出す。
「うおおおおお!!!」
ドゴォッ!!
「ゴァッ!?」
なんと落下中のドラゴンの顎に向かって強烈なアッパーを繰り出す。
「お嬢、やれええええええ!!!!」
「!!!...うおおおおおおおお!!!!」
ニコは剣を取り走り、竜よりも高い位置へ飛ぶ。そして剣を構えた首に向かって振り下ろす!!
「あああああああああああああ!!!!!」
「うおおああああああああああ!!!!!」
ズバアッ
竜の首は金属の鱗ごと、ニコによって斬られた。
ズドオオオオン
スタッ、スタッ。
「はあ...はあ...。」
「ぜえ...ぜえ...、ざま..みやがれって。」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
耳を塞いでも防ぎきれんばかりの歓声が町中に響き渡る。
「私...勝ったんだ。」
「ああそうだお嬢。お嬢は勝ったんだよ。ほら、手を貸しな。」
「...ジン女の人抱えてばかりだね。」
「やかましいわ。」
ーーーーーーーーーー
それから3日後...
パース中央広場、そこに少し大きな演説台が置かれている。
そして多くの民が集まっている。
カッカッカッカッ....
「ニコ様ー!!」
「ニコ様ー!!」
髪の毛はフワボサのままだが、メイド達によってお淑やかな服装に着替え(させられ)たちょっと顔が赤いニコが現れた。
「ブフッ...お嬢..くっ...似合ってるぞあははは!!」
「だまらっしゃい!!」
「ギャア!?」
思いっきり足を踏まれるジン。
台の上にニコは立つ。服のバッチには音声拡散術式が刻まれており、町の各地に設置された発声術式が刻まれた水晶から映像を通し聞こえるようだ。
「皆様、私はニコ・ランド・ウルフェンです。
私はこの国の設立に尽力した、
クラル・ランド・ウルフェンと、
ラミ・ランド・ウルフェンの娘です。
両親はバノス率いるインヴァシオン派の虐殺から私を命をかけて守り通し、私は今ここに立っております。
私はここへ来るまではパースという国の存在を知りませんでした。
なぜなら両親とその仲間達がインヴァシオン派から守るために十分な国家体制が出来るまでずっと隠し通していたからです。たとえ親族でも、関わる内容は一切伝えておりませんでした。
それらの尽力が、今皆の命、生きる道へと繋がった!
私は無力だ!
こんな事になるまでただ何も知らず生きていた!
皆が苦労をしていた中を私は虐殺が起きるまでずっと無知だった!!
だから!!
母上と父上達が残した、
皆の命と、
この町と、
諦めない意思を!!
これから引き継いでゆくと決めた!!
誰の意思でもない、
これは私自身が決めた意思だ!!
私が臆病者だったらきっとどこかで逃げていた。
実際怖い!!
皆をまとめ上げられるかわからない!!
何をしていいかも具体的にはわからない!!
だからこそ!!
私は時間をかけてでも、
母上と父上の意思を引き継ぐ者として、
皆を代表する者として、
皆を導く者になる事に尽力する!!
私は、皆のために生きる事をここに宣言する!!!」
「おおおおおおおおおおおおお!!!!」
10歳という幼い身でありながらもその覚悟は大人顔負けであった。
「お嬢、政治絡みはわかんないだろ?俺は役所で働いていたからその辺も手伝ってやるよ。」
「ふふ、ありがと!」
フワッ...
「...!」
「...?どうしたの、ジン?」
「あ..いや、なんでもない!」
「...?」
なぜかちょっと顔が赤いジン。
こうしてわずか10歳の少女は諦めない者達が残した未来を引き継ぎ代表する者となり、真の獣人を目指す獣人達...そう、ニコ派と呼ばれる派閥となったのだ。
ちなみに彼女が無双狼と呼ばれたり、神獣候補になったのはまた別のお話...。




