第79話 もう一人の神獣候補
「昨日は35G、140Sか、これで200G超えたな!」
「あと半分ですね、師匠!」
「みんなのお陰で早く溜まりそうだ。ありがと、二人とも!」
キジコです。
現在の所持金は226G、80S(223G,380S)、
日本円で2268000円だ。
改修費である目標金額400万円までに、ようやく半分超えたのだ。
このまま大型魔物などの討伐を繰り返せばおそらく達成する事が出来るだろう。
『今回は私も参加させてもらうからね!いつも3人でずるいのよ!』
「はは、頼もしいやる気だ。」
『キーッ!!』
「わぁ!?」
整えた髪がまたナチュラルヘアにかき乱された。
今朝、スアがやってきて私達の冒険...というか改修費稼ぎに参加したいと言ってきた。
流石に寂しくさせてしまったなこりゃ。
「あー...髪が。」
「でも師匠、そっちのほうが気楽で良いと思いますよ?」
「え。」
そう考えているうちにギルドへ辿りついた。
どんな依頼があるかな...。
「キジコ様!!!!!」
「うわぁ!?!?」
突如息を切らしながら現れる受付のお姉さん。
思えばこの人の平常状態を見たことあまりない気がする。
「お願いがあります...こ..こちらへ...!!」
「え..?え...?」
ーーーーーーーーーー
やってきたのはギルドの2階、会議室。
長い机が置いてあり、椅子に座っているのは貫禄のある男。
「ギルド長、キジコ様達をお連れしました。」
「ああ、ごくろう。」
おおギルド長か!
ゲームで見たあの貫禄とオーラ...すごい、生で見るとここまで迫力あるなんて...!
「御足労かけた事申し訳ありません、私はこのギルドを運営している[ドルグ]と申します。」
「キジコです...なんかすごい御丁寧に...。」
「数々の困難極める依頼をこなし、厄災如き強さを持った魔物を倒した貴方に頭が上がる事はあり得ません。この私も元冒険者ですが、これほどの功績を残した方は見た事がございません。」
「そ..そりゃどうも..。」
本当に暴れすぎた気もするこの頃。
「それで、どう言った御用でしょう。」
「はい、今朝届いた..こちらの依頼書です。」
そこに書かれていたのは魔物討伐に関する依頼だ。だが他の依頼と比べて何か雰囲気が違うようだが...。
「これは?」
「一言で言えば、貴方への直接依頼でございます。」
「直接!?そういうのはあるんだ!?」
「はい、そして依頼主は...獣人国からです。」
「獣人国!?」
獣人国って...今エデルに喧嘩ふっかけた国じゃん!その国の人から一体なんのご依頼が...。
依頼:私と戦え
依頼主:ニコ
私と戦え
[神獣候補]として、もう一人である
お前を見てみたい。
今日の昼、エガール平野で待つ。
...は!?
「....驚かれたでしょう。書いてある通り、依頼主はもう一人の神獣候補...通称、[無双狼]、ニコです。」
「師匠とは他の...神獣候補!?」
...まさかこんな急に会う事になるなんてね。
「そんな方が..なぜ!?」
「わかりません...。」
...戦いたくて私に会いたいなんて依頼...というより手紙が来るなんて。それも、神獣候補。一体何が目的だ?
罠か...?いや、それだったらわざわざこんな公に通す物か?いやわからないや。
だが行ってみるしかないよな、これ。
だからと言って私のみで行くのは危険過ぎるな、もしもの時のために何人か連れて行くべきかな。
なら今の人数で向かってみるか。
「念のため、ルザーナ達も来てほしい。」
「了解です。」
「エガール平野はどこなの?」
「エガール平野はここから北西にある平野で、その先が獣人国の領域となります。私は行ったことないので転移は使えません。」
「ならルザーナ、送り頼むよ。」
「はい!」
神獣候補ニコ...一体どんなやつか気になるな、倒すわけじゃないけど今後も何かしらで関わっていくだろうから今会うのも損ではないだろう。
「...気をつけてください。向こうの手の内は分かりませんので。」
私達はルザーナに乗って、その平野へ向かった。
ーーーーーーーーーー
エガール平野
「...。」
「お嬢、なんで依頼という形で神獣候補を呼んだ?それも倒すではなく、どんなやつかを戦ってみたいって...。」
平野に集まっている獣人の集団、そこにいるお嬢と呼ばれた彼女の名はニコ。もう一人の神獣候補である。
彼女はクロマと同じ狼の獣人であり、武器は大剣。
「私は叔父上の政策には興味ない、それどころか反対だ。なぜ同じ称号を持ってるだけで殺さなくてはならない?私と同じくこの称号のせいでその運命を振り回されたのと思うと胸が痛い。」
「...お嬢は本当に優しいな。」
「うるさい。」
不機嫌な言葉の割には尻尾が揺れている。
「でも確かに、お嬢の叔父上殿はどうしてあそこまで領土拡大を続けているのでしょうね。今や中立の国が増え、皆分け隔てなく人間として生きようって意思が表れ始めてるのに。」
「叔父上はいつも強欲なところがある。きっとまともな死に方はしないだろう。」
「ですね。」
「報告です、現在キジコと思われる獣人がこちらに向かっております!」
「...!」
ニコはキジコのいる方向へ進み、佇む。
ーーーーー
エガール平野に着くと、わかりやすい事に姿魔力ともに依頼主であろう獣人の女性が立っている。あれがもう一人の神獣候補...ニコ。
ボサボサ気味のロングヘアに狼の耳尻尾、身長は私と同じくらい、大きな剣と凄まじい魔力。顔を見る限り年齢は16歳辺りに見える。あんな若いのにこれだけの魔力...すごい。
「ルザーナ達はここで待っていて。要件はあくまで私宛てだ。」
「気をつけてください、ご主人様。」
「無事でいてくださいね師匠。」
『ちゃんと帰ってくるのよ。』
「ああ、行ってきます。」
私はニコのいる所へ歩み出す。
ザッザッザッ...
ニコとの距離、3m。
「...待たせてしまったかな?」
「いや?少し早い程度だ。私の名前はニコ。お前と同じ神獣候補である。」
「私はキジコ。貴方と同じ神獣候補の魔物です。」
おや、意外とご丁寧な。
「今回、急に呼びつけた事を謝罪する。同じ神獣候補として、今一度手合わせしてみたかったのだ。例のカラミティ・ホーン・ディアーを倒したという報告を聞いていてもたってもいられなくてな。」
なるほど、どうやらカラミアを倒したのは予想以上に大きな功績かつ話題であったらしい。でも倒せたのは私がいたからではない。
「あの魔物はね、仲間がいたからこそ倒せた。だから誇るべきは私ではなく私達なんだ。」
「そうか...だが、その溢れる魔力...こうやって間近で見るとウズウズするな。早く戦いたい...!!」
「まぁ待て、いきなりぶつかり合うと後ろのお仲間さんを巻き込んでしまう。せめて後退させておかないか?」
「ああ、ごめん。みんなー!!これから戦うから後退してくれー!!」
そう言うと獣人達は後退し、私達の周りは広大な土地...いや、試合の舞台となった。
「すまない、初対面なのに見苦しい姿を見せてしまった。私は戦闘欲が少し強いのでな...。」
「はは、個性は人それぞれだ。私にも色々悪い所はあるさ。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
ニコとの対話は実に穏やかだった。
最初はどんなバーサーカーや怖い人が来るかと思っていたが、全くの予想外れ。良い意味で期待はずれだ。
なんというか...今後は友達として付き合って行きたいような人だ。まぁどんな人であるかはこれから知るんだけどね。
フォン...
「(お嬢...まだ戦わないのか?)」
「うるさいぞジン。話すのが楽しいんだ。」
「(もう15分経ってますよ!?)」
「え!?」
「...ごめん、つい長話しちゃったね。」
「はは...あはははは!!」
ニコが笑い出す。
「本当に貴方って面白いね!!いいよ、やる気湧いてきた!今回貴方..いや、君を呼んだのはただ手合わせしてどんな人か知りたかっただけさ、だからしばらく付き合ってくれ。」
ニコから闘気が溢れ出す。
「わかった。私も貴方がどんな人か知りたい。」
「じゃあ...ジン、このまま合図お願い。」
「(わかりました。ではお二人とも、5歩離れてください。)」
5歩下がる。
「(構え。)」
....
....
「(始め!!)」
その瞬間、お互いの右手パンチがぶつかっていた。
キジコ「ねぇ...今のナチュラルヘアとショートボブ、
どっちが似合う?」
ディメン「ナチュラル。キジコちゃんまだ肉体中学生くらいだしアクティブだからそこまで整えなくてもいいかと思うわ。」
キジコ「(´・ω・)」




