第75話 次のトラブルさんどうぞ
以前旅の道中で出会ったドゥーカルンの鎧揚げ屋のおっちゃんがある日ギックリ腰を起こしてしまった。
その際ギックリ腰が治るまでの短期アルバイト依頼をギルドに出しており、おっちゃんの鎧揚げが好きな守護獣イグニールさんにお願いされ働く事になった私達。
その休憩中、おっちゃんの奥さんに呼ばれ向かうとそこには、以前共に旅をした仲間、スーロッタがいた。
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「...お久しぶりです、キジコ様。」
「スー君!?」
店から出て表に出る私。
1年ぶりにあうスーロッタ。
その姿は前にあった時と比べどこか大人びたオーラがある。
装備も新しくなっており、一目見て強くなったのだなと感じる。
「...今のお姿のキジコ様と話すのは初めてですね。」
「そうだね。スー君やみんなは元気にしてるのか?」
「はい、みんな元気にしています。」
「どうしてここへ?」
「現在訳あって部下の兵と共に両国間の見回りをしていまして、その際部下からキジコ様がドゥーカルンにいると聞きましたので。」
「なるほど....ん?部下?」
「第5番副隊長を現在担当しています。」
マッジで!?昇格してるじゃん!1年という時の流れは予想以上に世界を変えるようだな...。
穏やかスマイルなスーロッタ。彼から感じる雰囲気からして、向こうもちゃんと平和なようだが...。
「その様子からすると...帝国は?」
「あれから帝王様や皆の努力でかなり復興致しました。...それでも一度ついた爪痕は皆の心に残ってはいますが...。」
「...そうか。」
「...急ではありますが、本題へ入ります。」
「!」
「獣人の国については知っていますか?」
「いや。」
「彼の国は帝国から北方面にある国で、その名の通り獣人で構成された国です。」
「...!」
以前ロティアートが言っていた気がする、北の方面に神獣候補がいると。ヤツは秩序之天秤の[神域]、神に関する事をある程度知る立場であって、私ともう1人の神獣候補の居場所を知っていた。
おそらくその国だろう...。
「...何かあったの?」
「獣人国は他の国と比べ、領土の確保を主とする傾向がありまして、年々その領土と勢いが増しています。」
「その話を持ち込んだって事は...。」
「はい...キジコ様が現在所属する町リーツ..いえ、中立国家エデルを次の標的とする声明が出ました。」
「はあ!?」
ちょい待った、それって国相手に喧嘩売るって事じゃん!?
「...私昨日やばい研究所に仕返し行ったばかりで早速大戦とかは嫌なんだけど...。」
「お話は聞いております。ですがエデルへの侵攻する様子は現状まだないという事なので今はご安心ください。」
おいおい...次から次へと、これじゃ家の改修費集める暇ないぞ...。まだ時間があるとはいえこれまたのんびり過ごせる日は続いてはいないようだ。
獣人の国かぁ、てっきり平和なケモノっ子国なんてイメージがあったけど全然違いそうだわ。
それから私はスー君と現状についてや今後の事などを話し合った。話を聞く限りじゃ帝王やゲトーさんも大忙しだが元気にしているという事はわかった。
意外なのは以前ディストルと戦った格闘邪精霊についてだ。アイツは今帝国内の警備を任されており、どさくさ紛れに帝国を害そうとする者を見つけ捕まえているらしい。おまけに[リーデン]という名前ももらったそうだ。
その他にも、魔勇者ヴェアートと聖勇者シルトの案と活躍により、両国はお互いの国に対し戦争はもうしないという決まりが出来たそうだ。
本当に、ルザーナの話を聞いた時も思う所はあったけど...長く寝ていたんだな、私。なんかちょっと寂しい気持ちもあるな、なかなか同じ時を過ごせないのって。
同じ時...思えばこの体の寿命はどのくらいなのだろうか。
...そう考えている内に...
「ご主人様ー、そろそろ始めますよー!」
「へ?あ、わかったー!」
「...ルザーナさんも元気そうで何よりです。せっかくですので、私も8つほど買って行きます。」
「はは、ありがとうね。」
そう言って店に戻ろうとした...その時だ、
「グオーーーーッ!!!」
「!!」
「!?」
突如町に響く大きな鳴き声、
「今のは!?」
「...まさか!?」
スーロッタが何かに気づいた。
ドスッ...ドスッ...
「...なんだよアレ...!?」
現れたのは、邪気を表現するかのような禍々しい模様、今まで見てきたものよりもずっと攻撃的な形かつ鋭い角、額には謎の宝石。
「...変異種です。近頃近辺で目撃情報がありまして、極めて危険であろう事から我々が見回りに出たのです。」
「つまり...スー君達が探していた奴がわざわざこっちに来たのね。なんでいつもこう、事ある度に大体の確率で何かに巻き込まれるんだ...。」
(冒険図鑑よりアナウンス
警告、対象の魔力量が個体キジコの7割ほどでございます。
極めて危険な個体です。単独で挑むのは推奨しません。
対象、アイアン・ディアーの変異種、
カラミティ・ホーン・ディアーです。)
以前レベルアップした図鑑スキルから今までになかったアナウンスが入る。というか私の7割程だと?それ本当にやばい奴じゃないか!?
今の私は覚醒した故に基礎的なステータスが各種能力が大幅に上昇しており、その私を基準としての7割。
間違いなく昨日戦ったプロト05って奴よりずっと強い。
...ちょっと待った、
「スー君、目撃例はあるけど...それはどういう状況で?」
「へ...?確か..遠くでしたり、他の魔物と戦っているのをたまたま見たり...などです。」
「あの魔物に対して間近で直接目撃したという証言は...?」
「....!あり...ません。」
やばい、いないって事は最悪死人が出ているかもしれない!撃退ではなく完全に殺す、出なきゃまずい!!
「師匠!町の住民は避難完了しました!」
「おお!?さすがロブスターの時に連携発揮した町...助かった!」
「今帝国の兵が住民避難と護衛をしています、あの魔物が下手な行動出る前に倒しましょう!」
「なら俺も加勢しよう。仮にもエレムス様の元で修行した身だ。」
「ありがとうございます、スーロッタさん!」
よーし、パーティは私、ルザーナ、クロマ、スー君の4人、
相手は以前ロブスターが襲撃してきた平野に佇み、私達に敵意を向けている。
いざ、討伐開始!!
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「朱斗、蒼鈴。わざわざそちらから来てくれた事に感謝する。」
エデル首都、ルーフ
国王の大館、王の部屋。
「「はっ。」」
「聞いておるだろうが、厄災の変異種についてだ。今入った情報だ、ドゥーカルンに現れた。」
「ドゥーカルン!?」
「そう、お主達が守っている神獣候補...キジコが今いる所だ。」
「な..なぜ!?」
「わからない、まともな目撃証言が少ない故確たる生態もわからない。強さに反応したのか神獣資格に反応したか、それとも気まぐれか、いずれにせよこれは非常事態だ、転移スキルを使える者を貸す故早急に向かってほしい。」
「御意!!」
「それと鎧揚げ買ってきてくれない?この仕事小腹空くんだよー...。」
「「母様、公務中は最後まで真面目にしてください。」」




