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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
異世界参上編
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第7話 習得せよ、念力



 気づけば朝

 

 木々に囲まれ、まだちょっぴり薄暗い朝。

 

 少し肌寒い風。


 フワフワ温かい毛布のような何かの上で乗っていた記憶が少しだけあるが今は違う。


 なんというか...誰かの太もも。

 子猫が飼い主の足の上で寝ている図というか。


 すると私に手を当て体を撫でる。

 あ、ちょ、くすぐったい。

 

 眠気漂う中、半目で見上げれば赤が中心の絹のような衣...この世界にもあったんだ、和服。


 そして私の顔を見る、山吹色のふんわり長髪の綺麗なお姉さんの顔....、



 

 ん?和服?お姉さんの顔?太もも?


 

 あれ、人間?


 

 「あら、起こしちゃったわね。」

 

 

 女性の優しい声...ちょっと待ったこの声..、

 まさか!?



 「マウリさん!?!?!?」

 「おはよ、キジコちゃん。」


 え!?どゆこと!?起きたら狐の耳と長い尻尾のある和服美人がいて、それがマウリさん!?嘘ぉ!?

 まさかケモ娘になれる世界か!!

 数多のオタクが夢見たケモ耳ありの世界か!?


 すると向こうから2体の魔物の姿が見える。


 「あれ、そっちの姿になってたの?マウリ。」

 「あらテューニとヴァルケオ、やっほ〜。」

 「マウリ...、キジコが困惑しているぞ...。」

 「可愛いからつい♪この姿で撫でたくて...。」


 私はとりあえず(柔らかい)ふとももーから降り、再びマウリさんをみてみた。


 ちょっと崩れた正座の状態でもわかる、170はある身長、細いけど色気ある姿!its a ナイスバディ!! ゲフンゲフン。


 「ふふ、いいでしょこの体。」

 「ほわわ....。」

 「もしかしてキジコよ、獣人を見たことないのか?」

 「な...生で見るのは初めてです。」

 「....その感じだと向こうの世界、獣人いないのだね..。」


 はい、いないです!!

 ですので今こうやって見惚れまーす!

 異世界万歳!!ありがとうございます!!!


 「ちなみに僕らも獣人になれるよ。」

 「へ?」


 ドロンッと忍者が変化するかの如く、煙の中から2人の獣人イケメンが現れる。


 ヴァルケオは長めの銀髪で後ろで束ねており、身長は...神様ディメンより若干低いな。

 顔は意外とシュッと爽やか。

 服は白くて意外にも薄いコートのような物、前世でお気に入りだったサニークラウズの男性版のような感じだ。

 ライオン耳と尻尾もちゃんとある。


 一方テューニは...紺色の忍者だった。

 忍者マスクはつけてないがプレートのついた鉢巻はしていた。

 んで意外にもちょっぴり童顔寄り。

 身長は160cmと彼らの中では一番低い。

 そういう前世の私は168cm....勝ってるわ。

 みた感じクチバシも鳥のような足も爪もないが...

 バサッ

 羽が背中から生えてる。

 

 「...そもそも獣人ってなんでしょう。」

 「獣人ね...知恵を持つ魔物だけがなれるのは共通点だけど、きっかけの内一つは長い時を生きて、ある時得られるスキルなの。」

 「もう一つは何かしらの称号の影響で手に入るか...だ。」

 「僕らは長い時を生きてこの体を得たんだ。」


 そんな方法があったのか...。

 できればさっさと人化したいと思ったがそう世の中甘くはないのだろう。

 

 「ちなみにこの世界には僕らと別で獣人族ってのがあるんだ。彼らはスキルで得た肉体じゃなくて称号で最初から人の肉体を持っているんだ。」

 「彼らの先祖が、我々のようにスキルで獣人化を得た存在だった。そしてその存在達はとある地にて繁栄していったが...。」

 「後の世代になるほど獣の姿、いわば獣形態になれる者がいなくなり、今じゃ獣の耳や尻尾などを持ったちょっと強い人間程度になったのよ。」


 おお!やっぱり獣人族いたのか...けどこの世界ではそんな歴史があったのか...。


 そういえば前世の文献まんがでも人との混血でその血が薄まったり別の面が強化されたりなんて展開があったから、そういうのもなくは無いのかな。


 「さて、気を取り直して。確かキジコ、念力覚えたかったんだよね。」

 「ああ、はい。この体以上にできる事が増えるので。」

 

 いよいよ異世界らしい技を覚える修行の始まりじゃー!!!

 ちなみにヴァルケオ達はまた獣形態へと戻った。


 「まず、念力は浮遊魔法の一種で物を触れずとも動かせるのが特徴なんだ。仕組みとしては動かしたい対象物に自身の魔力を纏わせる。」

 「とりあえずそこの枝に...魔力ってどう纏わせるの?」

 「その枝にエネルギーを送るってイメージしてごらん。」

 「ふーむよくわからんが...ぬぬぬ。」

 

 すると枝の周りから青白い光が纏いはじめた。

 

 「おおうなんだこりゃ!?」

 「そう、それで枝に魔力が纏わせれたよ。」

 「ちなみに慣れれば複数同時やより少ない魔力で操れ、次第に発光もしなくなるぞ。」


 上達はやはり練習あるのみか。

 頑張らなくちゃ!


 「次に、浮かせるイメージをしてみて」

 「ぬぬぬ。」

  

 ゆっくりだが枝が浮き始めた。


 「キジコちゃん!その調子よ!」

 「あとは....そうだね、右に動かすイメージを。」

 

 (だいたいあそこら辺かな?)


 「右ね...ぬん!」

 

 すると枝は右1.5m先へ....転移した。


 「あれ?」

 「ぶぇっ!?転移!?」


 転移だと?どっかのゲームではよくある、あの?


 「キジコよ、おそらく移動させる予定地点に対して強く念じたな?」

 「へ?はい。」

 「その場合操る物体は移動をすっ飛ばして目的地に直接転移してしまうんだ。」


 なんと、これは我ながらお恥ずかしい。


 「いやいやいや待って待ってヴァルケオ!?転移魔法使えてる時点で浮遊魔法含めた色々な魔法理解工程をすっ飛ばしてるからね!?」

 「む?そうだったか?」


 (空間魔法:物体転移(1)を習得)


 「ん、なんだこれ?物体転移...?」

 「「 Σ( ゜д゜)⁉︎ 」」

 「...キジコ、おそらくお前の種族能力によるレーダーや我の加護により空間把握能力が無意識で上がっていたのかもしれない。」

 「マジか。」


 マウリやテューニの反応見る限り念力の前にとんでもない能力を身に付けたっぽいなこれ...。


 気を取り直して、再度枝を浮かせ今度は左に動かすイメージをする。

 すると枝は今度こそ空中で動き始めた。

 30cmくらいしか浮いてないけど。


 (浮遊魔法:物体移動(1)を習得)


 「よ...よし、とりあえず今のをひたすら繰り返し練習だ。応用技を身につけるなら基本を学ぶのが一番だ。」

 「わかりました。」

 

 そんな感じで私はひたすら反復練習をする。

 何十分

 何時間...



 そして早速...次の日!!



 「それっ!」

 

 無駄な輝きなく枝が兎の魔物の急所をついた。

 ブレも無く素早く。


 「お見事キジコちゃん!すごいじゃない、こんなに早く使えるようになるなんて!」

 「えへへ...ありがとうございます。」


 獣人形態ケモミミびじんのマウリさんが見る中、私は念力を使った攻撃を成功させた。

 

 褒められた。

 素直に嬉しい。

 

 いやー意外と大変だった、動かす対象物が重けりゃ重いほど使用魔力増えるし攻撃として精度を高めるなら無駄な魔力を抑えより集中しなければいけなかったからだ。


 とはいえ必死こいて練習した結果今に至る。

 スキル向上心と学習力のおかげで技術力も経験値も爆速で上がった。

 

 「ちなみにキジコちゃん、複数の物体を操る方法も知りたい?」

 「その心配なく。」


 ふっふっふ、今の段階は割と早い事出来ていたのさ!

 残りの時間は当然、ぬぬ...。


 私の周りからそれなりの重さの石が5つ浮き始めた。


 「すごいわ!私でも結構な日数かかったのに!」

 「頑張りました!」


 するとマウリさん...いや、マウリ姉さんは私を持ち上げ思いっきり抱きしめてきた。

 子供の成長喜ぶ母親のような光景だった。


 「お、キジコ。予想道理かなりの上達速度だね。」

 「あ、テュー兄。」

 「テュー兄!?!?」


 せっかくだし心を込めて変なあだ名つけた。

 よく見たらマウリ姉さんちょっとツボってる。



 「ごほん、ヴァルケオから連絡。」


 テュー兄の空気が少し重くなる。


 「あら、どうかしたの?」

 「この前ヴァルケオが近いうちこの森が戦争の予定地になるって言ってたよね。」

 「ええ。」

 「...そろそろ来るみたい。聖人族と魔人族。」

 「...来るのね。」

 「聖人族?魔人族?」


 急に初めて聞く単語がきた。


 「キジコ、この世界の人間は複数の種族があるんだ。」

 「この地域で争おうとする聖人族、魔人族。通称人族。」

 「それと以前言った獣人族、そして...獣人族と同じく時代と共に血が薄まった一族、その名も竜人族。それら通称亜人族。僕達は彼らをひとまとめに人間と呼んでいる。」


 彼らのいう人間って複数の人の種族をまとめた言い方だったのか。 

 だからヴァルケオが詳しい種族言わずただ人間と言ってたのか。


 「他にもあるけど大国としてはこの4つが代表的ね。」

 「そして人族だけど、この森に到着するのはお互い3日後。それまで僕達守護獣は神域に結界を張る。」

 「結界?」

 「決められた者以外入れない壁さ。実際は色々種類あるけど。」

 「キジコちゃんも戦争が終わるまで隠れてるといいよ。」

 「結界の範囲は?」

 「少なくとも僕達と共に行動していたエリアは全て神域だから別に狭くは無いよ。」


 そういやヴァルケオに連れられてきた安全地帯だったなここ。


 「だからキジコちゃんには下手に危害は来ないから安心してね。」


 妙なフラグの予感も立ったがまぁ大丈夫だろ。

 

 「とりあえずキジコはしばらく神域に隠れていて。神獣の資格を持っている以上連れ去ろうとする奴がいると思う。」

 「わかりました。」


 戦争かぁ。

 まさかこっちの世界でも味わうとは思わなかった。

 趣味に溢れたスローライフが目的だったけどなんでもかんでも都合良いわけじゃない。

 ここは甘えておくとしますか。



 この時の私は、あんな事件に遭う事をまだ知らない...。

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