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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
波乱のマイライフ編
78/302

第73話 響け音鳴

おまけあり

 ガシャアッ!! ドゴォッ!!


 「でやああ!!」

 

 ズドォッ!!


 「...しぶといじゃないか。」


 キジコです。

 敵の転移技を食らって、現在マギアシリーズに囲まれ襲われてます。


 襲ってくるたびに猫ぱんち、猫きっく、小太刀で斬り捨て、ペネトレーザで一層し、それから....とまぁ、ピンチではない。むしろ廃棄処分担当な感じになってきた。


 「ガルァッ!!」

 「どりゃっ!」グシャッ!!


 ...初見の時はまぁちょっと苦労したけど戦いすぎてだんだんマギアシリーズの弱点がわかってきた。


 はぁ、無敵無双の主人公目指してるわけじゃないのに...。


 「所長...神獣候補だんだん呆れてますよ..?」

 「う...うるさい!!こうなったら[05]を使え!!」

 「ええ!?でもアレは制御不能のプロト10《テン》の...。」

 「構わん!!アイツは我々の研究を邪魔した悪しき魔物だ!!なんとしても滅ぼせ!!」

 「...了解..しました。」


 あー、そういやロティアートの件で恨み買ってたな。恨んできたのは向こうの勝手だけど。


 そう考えてるとシャッターの向こうからずっと大きな魔力を持った気配を感じた。どうやらもっとマシな戦いができそうだ。


 「グルルルッ....!」

 

 現れたのは、溢れんばかりの膨大な魔力と改造されてなお収まらない圧力。それは体調6mもあろう、黒い虎だ。


 ...すげぇ、私自身も不安とワクワクで肌がピリピリする。


 私は小太刀を構える。

 虎は私の目をじっと見ている。

 

 目を逸らせば虎は即座に襲い掛かるだろう。しかし私はわざと逸らした。


 「グオオッ!!」

 「...!!」


 虎は真っ直ぐ襲い掛かる。

 私は虎に刃を向け受け流すように斬る。


 「ガアアァッ!?」

 「よし、うまくい...って、あら?」


 虎の傷が塞がっているではないか。

 畜生、自動治癒持ちじゃねぇか!!


 「ゴアアッ!!」

 「おわっ!?」

 「キャーッ!!」


 虎は力押しなタックルを繰り出す。

 避ける事は出来たが...


 ドゴオオッ!!


 「わああ!??やっぱり動かさない方が良かったじゃないですか所長ーー!!」

 「う...うるさい!!」


 壁に大きなヒビが入る。なるほど、これは確かに制御不能な感じあるわ。今の一撃で普通にシャッター壊れていつでも脱出可能になってしまった。

 シャッターの向こうには研究員と思われる悲鳴が聞こえたのでこのままだと余計な死人が出てしまう。


 「グルル....!!」


 ぬぅ、自動治癒もあってかなりタフかもな。

 仕方ない、


 「魔砲弾マジックキャノン、チャージ。」


 私は魔力を溜め始める。


 「!!」


 だが虎は何かを察し、私の周囲を走り始める。どうやら命中を避けるための行動のようだ。

 まずいな...いくらあの図体だからといって動かれると当たらない。かと言ってペネトレーザじゃ火力に欠ける。


 「ガルルル....!!」


 虎は不規則に動き続ける。

 狙おうにも予測が難しい、何か停止させるのにいい手は...


 (『これはね、音鳴おとなりという石なの。魔力を込めて投げると音がなるの。きっと何かに使えると思ったのでスアは持ってきました!』)


 ...!!


 私は音鳴全部に魔力を思いっきり込め上へ投げた。


 「行っけえええええええええええええ!!!」


 そして全力で耳を塞ぐ!!!





 



ーーーーー


 ...グッ、全力で耳を塞いだがそれでもかなりの音が聞こえていた。


 音の衝撃は研究所中を響き渡り、近くにいた虎は気絶、ガラス越しの所長やシャッター近くの研究員達も倒れている。

 ...死んでないよな?加護、生体感知....うん、みんな死んでない。

 

 

 フォンッ...


 クロマから念話通信が来た。


 「師匠!?今のデッカい音はなんですか!?」

 「ああ、スアから貰った音鳴を使ったんだ。都合よく研究所の全員仲良く気絶している。今のうちに朱斗達に連絡しておいて、全員捕らえておきたい。」

 「あれ、作戦では私の転移で逃げるとありましたからてっきり研究所ぶっ飛ばすのかと。」

 「考えてみれば他の末端や大元を調査する必要があるから残しておく必要がある。だからクロマは転移で警兵を連れてきてほしい。出来る?」

 「お任せあれ!!」


 さて、その間に...生体感知...!


 ....


 ....


 ...ダメだ、さっきいた教授ってやつの反応がどこにもない。どこに行った?


ーーーーーーーーーー

 どこかの森


 (...クク、神獣候補キジコ。なかなか面白いやつじゃないか。まさか最も武力のある末端研究所が潰れてしまうとは...。)


 (念のため彼らの集めたデータは全て[スキル:記録保存]に刻ませてもらった。彼らの研究成果がどう花を咲かせるか楽しみだったが...仕方ない。)


 (だが...面白いものも手に入った。)


 教授の手にはとても小さな瓶がある。

 その中には赤い液体が入っていた。

 

 これを使えばマギアシリーズやディストルを超える生命体を開発出来るだろう...。


 ああ、研究とは楽しいものだ!!


 はーっはっはっはっはっは!!!



ーーーーーーーーーー

 3時間後....


 「どうだった、朱斗?」

 「だめだ、その教授って奴は見つからなかった。」

 「...どさくさ紛れて逃げたか。」


 しばらくして研究所内は警兵に溢れ、研究員達は次々と捕まっていた。


 「例の研究員が色々証言吐いたりそれをもとに証拠が集まったから、そのギアスターを製造していた第2研究所も後々調査予定らしい。ぶっ飛んだ騒動だったがお疲れさん。」

 「ああ。」

 

 とりあえず今回の件はひと段落ついた。研究所内にあったマギアシリーズは調査のため引き取るそうだ。


 はー、疲れた。

 しばらくこんな訳わからん騒動はごめんだな。


 「朱斗、私疲れたから先帰ってるよ。」

 「ん?ああ、わかった。ゆっくり休めよ。...ん?」

 「どうした?」

 「お前、足から血が出てるぞ。」

 「へ?ああ本当だ。破片が飛んできたのかな...まぁいいや。あとは頼むよ。」


 私とルザーナはクロマの転移で町へ帰った。



ーーーーーーーーーー

 おまけ


 「やっほーヴァルケオ!」

 「んん?...あ、イグニールじゃないか。」


 キジコが研究所に潜入していた時、ヴァルケオ達は館にてキジコの帰りを待っていた。

 その際、ドゥークの森の守護獣であるイグニールがやって来た。

 

 「あらイグニール、久しぶりじゃない。」

 「お久しぶりですイグニールさん。」

 「やほー!」


 相変わらず自由気ままな一面溢れる方だ。


 ヴァルケオ達にとってイグニールやエレムスは数少なくなった大昔からの仲間。今でもこうしてたまに会えるだけでもお互い嬉しいのだ。


 「それで、何のようだ?」

 「ん?ああ、これよ。」


 イグニールは真剣な顔になり、手に持っていた紙をヴァルケオ達に見せる。


 「これは?」

 「依頼ってやつよ。すでにギルドにも通達しているわ...かなり厄介よ。」


 ヴァルケオ達は内容を見て、顔を暗くする。


 「...これはかなり厄介だな。」

 「うん、これはすごく厄介だろうね。」

 「無事だといいわね...。」


 守護獣達が震える事態...それは..




 依頼:急募、短期鎧揚げ屋の手伝い募集!!


 依頼主:鎧揚げのおじさん


 •先日、作業中にギックリ腰を患い動けなくなっちまった。幸い薬草の薬があったので早くて1週間でどうにかなるだろうけど、その間の鎧揚げを誰かに頼みたい!

 頼む、この町の名物を終わらせたくない!!



 「...ギックリ腰...人間達が歳を取ると起きてしまう...恐ろしい症状よ...!!」


 次回、キジコちゃんの鎧揚げ屋

鎧揚げ屋のおっちゃん、大ピンチ!!

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