第72話 ステルス(キジコ目線)
よく見たら71話が二重投稿なってました。
どうもすみませんでしたorz
ヴィンの森
今は夜、
少し冷たい風が木々の中を通り、
揺れる木の葉は音を出し、
擦れる音は歩く周囲の音を消す、
あ、キジコです。
現在、研究所前まで来ましたが警備がいるだろうから隠れております、猫の姿で。
最初は超有名なステルスゲームのように匍匐前進や木々に隠れて行こうと思ったのだけれど、それなりの高さの草とかがなく、木も細め。
そして目の前にはそれなりに整備された道がある。そんな状態で人の姿で進めば速攻見つかる。
なので久々の猫モードで隠れ進んでいるのだー!!ニャー!!!
ーーーーーーーーーー
ザッザッザッ...
ん?誰か来たぞ。
「はぁ...夜の警備は怖ぇし面倒だな..。」
「大型魔物がいる地域じゃないだけ良い方だ。」
警備兵か、だが見た感じアレは傭兵というか雇われ冒険者とかだな。
でも、なんというか仕事に対してやる気を感じないな。何かあったのか?
「こんな仕事するなら低所得でも町でゆるゆる平和に過ごした方が幸せだったかなぁ。」
「ヘッ、今生きているだけでも十分幸せだ。」
なーるほど!
自分に合わない職場選んじゃった感じだなこれ。
...いっけね、そういや研究所の侵入方法考えないと。確か強化証とかそういうのがいるんだっけな。多分警備関係なら第1フロアに入るくらいのは持っているかもな。
レーダー起動、....ん?微量だが片方のポケットから魔力を感じる。確かめてみるか。通り過ぎる瞬間に物体転移で手に入れてみるか。
シュンッ...
(パラッ)
よしっ、間違いなくこれだ。クレジットカードみたいな形だが、どうやら紋章を用いた術式による鍵のようだ。
えーと、あの大きな入り口から入るのかな。
カードにスキル物体浮遊発動、そのまま入り口に...いや待った。おそらくこのカードを入り口にタッチしたら音が鳴るかもしれん。
別に入り口とか無いかな...あら?
少し離れた位置に人が通れる程度の扉があった。扉の前に書いてある文字を見る限り警備兵の部屋らしいな。
さっきの入り口と同様カードタッチしないと入れないっぽいが、もしかすれば他の部屋に繋がってるかもしれないからこっちから侵入するか。
...でも結局音の問題は解決して無いな。仕方ない、タッチした後隠れるか。
私はカードを認証盤と思われる所にタッチした。
カチャッ
扉の鍵が開いた!!
しかし、音は鳴らなかった!!
...あれ?何も起こらなかった。
でもまぁそれでいいや。...ああそうだ、念の為カードはここに置いておこう。落としたって見せかけるために。
そしてついでにこのチラシをっと。あの人達にいい職場見つかりますように。
ーーーーー
扉の先を進んでみると、石材を中心とした内装となっていた。その先にあった警備室からは声がする、行ってみよう。
そこにいたのはのは警備の傭兵と思われる男と研究服を着た女性がいた。
「ねぇ、マギアシリーズの警備はどうなってる?」
「ああ、周辺に配置した奴らか。今のところ異常はないな。」
マギアシリーズ...?周辺配置って...まさかあの改造魔物の事か!!結構カッコいい名前ついてるじゃんアレ!!
それから女性は長々説明し始める。
要点をまとめると、
•マギアシリーズは次世代の兵器
•3ヶ月後には量産体制が整っている
•各国に売却予定
•マギアシリーズは下級支配というスキルで操っている
•外にいるマギアシリーズはあの女性が全て操っている
•あの魔物の機械のような道具は人工魔法具というものそして先程の下級支配が有れば大量に操れ、個人で大量の武力を得られる
•操ってる側が気絶、死亡するとマギアシリーズは停止する。どうやらあくまで下級支配で操ってこそ動く模様
こんな感じである。なら話は早い。
私は魔身強化を足に集中させ移動、研究員の女をぶっ叩いて気絶させた。(頑張って加減したよ!)
警備員の男は焦る。同時に外のマギアシリーズが次々停止している模様。これで外が少しは安全になったかな?
...お?あの扉開いてる、あそこからなら内部へ侵入出来るな。
パラッ...
ん?なんだこの資料....は?
私は急いでこっそりその資料を空間収納庫へ入れた。
私は扉を見つけ即座に研究所内へ突入したのだった。
ーーーーー
ふむ、第一フロアはどうやらさっきの大きな入り口からして何かあると思ったけど、どうやら荷物の搬入口だったようだ。
このフロアは少し暗く、見渡す限りどこも大きな箱やコンテナ、檻が置いてある。床を見る限りマギアシリーズはここから出てきたみたいだな...床に新し爪痕、マギアシリーズの金属の爪の痕がある。
「ギャオー!!」
「ワオ゛ーーー!」
「うわぁ!?」
やばっ、声が出てしまった。
おまけにこれ魔物達じゃないか、どうやらここに運ばれてきた魔物がマギアシリーズに改造される感じだな。
「誰だ!!?」
やばば!?
まずい、どこに...あれだ!!
ダッダッダッダッ...
「侵入者か!?...ってあれ、誰もいなかった。」
「ニ゛ャー!!」←私
やってきたのは研究服を着た男。
「気のせいか...。」
研究員が去ろうとした時だった、大きな入り口が開く。
「ああ..うるさい...。いつも耳に響くよこれ。」
やってきたのは初老の男性。次々運ばれて来るのは檻に入れられた魔物達。
男達の話を聞く限りどうやら魔物達は第3フロアという所に運ばれるらしい。とりあえずこのままの状態でいよう。
ーーーーー
運ばれたのは数々の物々しい器材がある部屋で、どこかロティアートの研究室を思い出す。魔法を中心とした器材で前世の現代科学とは似てるようで全然違う技術。
檻の外には魔法か何かの鎖で縛られた魔物がいる。だが檻の中と比べて妙に大人しい...?
いや違う、怯えているのか...。
本能か何かで察したのかわからないが、魔物達はもう逃げられないと理解したのかもしれない。待ち受けるのは死よりも辛い結末...。
...流石に放って置きたくないな。魔物は普段討伐対象とはいえ、ここで見殺すのはなんというか...胸糞悪い。
私の隠れた檻は鍵がかかってないため脱出し、こっそり狼魔物の鎖を切った。
狼はキョトンとする。
(おい、お前を縛る物は取り払った!!)
「...!!ア゛オ゛ーーーーン!!!」
「「!?」」
狼は遠吠えをした。研究員達は拘束が解かれた事に驚いており、私はその隙に他の魔物達の拘束も解く。
「ぎゃあああ!!」
「キャーッ!!」
魔物達は研究員達に襲いかかる。
あんた達が繰り返していた酷い光景よりずっと自然的な行動だ、私は放っておいた。
カタッ
ありゃ、これは...鍵のカード?だがこれは4と記されている、もしかすれば第4フロアにいけるかもしれない。
私はどさくさに紛れ第4フロアへ向かった。
ーーーーーーーーーー
...少し暗いな。猫目だから問題なく見えるが...。
...!
私は何かに気づく。...目に見えない何かだった。おそらく今真っ直ぐ進んだら何か不味いことが起きていた。
何があった..?
そうだ、魔法具の見通之眼を使えば何か見えるかもしれない。
私は空間収納から見通之眼を取り出し覗いてみる。すると私が進もうとした先には2本の線が縦に伸びている。
驚いた、まさか[赤外線センサー]まであるなんて。
だが猫モードなら問題なく進める隙間なので、私は注意しながら進んだ。
しばらく進んでいると、大きな扉を見つけた。生命反応を感じないからおそらく倉庫区域なのかもしれない。
私は試しに倉庫の認証盤にカードをタッチしてみると、倉庫の扉が開いた。
さてさてご拝けー.....え??
中にあったのは100...200...300...なんてもんじゃない、人工魔法具....そう、マギアシリーズに取り付けられていたあの機械らしき物が沢山置いてある。
機械は一部紫色に光っており、強い魔力を持っていた。もしかするとフォーセ鉱石はこれに使われていたのかもしれない。
...そういや警備室で気絶させた女が言っていたな、3ヶ月後には量産体制が整うと...。何か関係あるかもしれない。
私は人の姿へと戻り、20発分ペネトレーザを待機状態にする。
放っておけば各地でマギアシリーズによる大きな被害が出てしまう。国ではなく盗賊などが購入してしまったら旅人や冒険者達が危ない。
だからそうならないためにも、容赦なく破壊させてもらうよ。
私は人工魔法具に向け、ペネトレーザを一斉に解き放った。
ーーーーーーーーーー
5分もなく、人工魔法具はただの残骸へと変わり果てた。これだけすれば向こうもかなり痛手かもしれない。
...ん?多くの生命反応がこちらへ向かっている。ちょうどいい、もしかすれば例の教授ってやつもいるかもしれない。
私は猫モードになって残骸の中へ身を隠す。
「ぎ...ギアスターが...!!」
「..だ..誰がこんな事をした!?」
そのあと部屋の中に研究員達が急いで入ってきた。この光景を見て絶望している、どうやら大当たりだったな。
お、2人服装が少し違う。アレが教授と所長とかそういうのかな。
私は研究員達の後ろへ回り込み、人モードにチェンジ。
「ようやく見つけた。あんたが教授と所長って奴?」
「「...!?」」
教授と所長の周りに待機状態のペネトレーザが発生する。
「あんたらを探してた。」
「だ..誰だ貴様は!?」
「君達が目の敵にしていたキジコです。先日は君達のお仲間に喧嘩売られたので買いにきたというか、仕返しに来ました。」
研究員達は驚く。
「お...お前はあの神獣候補か..!!」
「はい。ちなみに二人が所長と教授ってやつかな。」
「そ...それがどうした!?」
「この研究やめてくれるかな?このままだと私の大切な家族や町や居場所にどんな危険が及ぶかわからないからさ。」
「...断る。これは新世代の兵器だ。」
所長と思われる男が喋る。
「なぜ断る?」
「この研究はかつて魔物を使役する方法を探るために行っていた実験から見つけたもの、この実験を完全に成功させれば貧困や独裁や弱戦力で苦しむ国家や個人の助けになる!!人、個人は皆が決して強いわけじゃない、そしてその苦しみを味わう者達は刻々増えている!!そんな人達を救うため、我々はこの研究を終わらせることは出来ないのだ!!!」
「なるほど。」
「じゃ...じゃあ..!」
「いや、壊すよ?」
「...へ?」
「どんな理由かと期待してみれば...ただの希望的推論のみの話じゃないか。
この力はいずれ〇〇に使える、〇〇に役に立つって考えはさ、確かにそうなるかもしれないけどさ、後の事はどうなの?
兵器が生まれた理由ってのはさ、確かに最初は人を守りたいからって理由があったからこそかもしれない。
でも、時が経つにつれそれは多くの人を不幸にする道具へ成り果てた。
なぜなら、一方の正義はまた一方では悪だからだ。誰かを救ったら今度はそれが原因で新たな怨恨が生まれる。
そして、悪用へとなるのだ。
あんた達がやろうとしている事はいずれそうなる。」
「だ..だが!」
「警備室で気絶した女性が言っていたんだ、
3ヶ月後には量産体制が整って[各国に売却する]のだから、
ってね。」
「...!!」
「あんたは人を救いたいって貧困独裁や弱戦力の国の力になるって言い訳ついたけどさ、売却って時点でもう良い印象...ないんだわ。いやそういうの普通なんだろうけどさ、格安で売れると思わないんだよね。」
「た...タダだ!!そう、タダで...!!」
「馬鹿か?そんな子供みたいな言い訳。」
私は空間収納庫からとある資料を取り出した。
「さっき言った女性研究員が持ってた資料なんだけどさ、定期的な納金の上であげるって感じ何だよね。...しかもかなり高額かつ、弱み握ってる所に対しては強制的な宣伝をさせようともしてる。」
「...。」
「もうあんた達真っ黒だってわかったからさ、私はここの兵器をそろそろ破壊するよ。」
「...させんぞ。」
「ん?」
「そうはさせんぞおおおおおおお!!!」
「!?」
所長から突然魔力が溢れ、自身の下に魔法陣が現れる...これ確かどこかで...
(クロマ(行きますよ師匠!!))
あ!?転移か!!
しかし遅し、私はどこかへ飛ばされた。
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...ここどこだ?
ちょっと暗くて広い空間。
「やぁキジコ。」
「...!」
観覧室というのかな、ガラス越し上から私を見下ろす所長。
「...君の言った事は正しい。ゆえにあのような証拠を持って逃げられては困るというもの。」
「それだけ私の潜入が優秀だっていう証拠だね。」
「ッ...!!...ギアスターの破壊といい...どこまでも私を怒らせてくれる!!よくも教授の前で恥をかかせてくれたな!!」
するとその部屋が明るくなる。
同時にシャッターが開き、マギアシリーズが現れる。
「...なんか、ありきたりな展開だな。」
「何を言ってるかわからないが貴様はここで死んでもらう。」
はぁ、だんだん変な展開になってきたなぁ。
まぁサクッと終わらせて、また趣味溢れるライフ過ごしますかなぁ。
だんだん変な展開になってる中、キジコは無事家の改修費を稼いでスローライフを送れるのか!?




