第68話 兵器
キジコです。
ルザーナとクロマを連れ魔物の群れの退治依頼に出かけたところ、ワイバーンのムラクと出会いました。
その後突如怪しい研究員が私達を襲撃、狙いはフォーセ鉱石と私の命。研究員は改造された魔物を使い襲い掛かるのだった。
「ふんっ!!」
「ガァッ!?」
改造虎はキジコの猫パンチを喰らい怯む。しかし大きなダメージはくらっていなようである。
「硬いなコイツ...改造されただけあるってことか!」
「ガオッ!!」
「のわ!?」
鋭い金属の爪が襲い掛かる、いくら私でもまともにこれくらえば肉が引き裂かれてしまうかもしれない。
一度距離を取ろう。
「ガルル...。」
「...!!この気配。」
改造虎の尻尾の結晶が光始める。
どうやらあの虎はレーダー機能を人工的に搭載されているらしく、尻尾にある結晶は以前...アイアンディアーの額に似た物があったのを思い出す。その際額の結晶から私の位置を探知していたことから、あの虎も同じことができるのではないかと推測する。
「...試してみるか...ソイッ。」
ボンッ
「ガゥッ!!」
「かかったな、どりゃああ!!」
改造虎は魔法弾の囮に引っかかった。
やはり、この改造虎はレーダーに集中している間は他の機能が若干低下している。気配や魔力反応に過敏になっている分、さっきの魔法弾が[隠密使った私]より気配が強い場合はそっちを優先的に狙うみたいだ。
「ガ...ガ....。」
私は右手を前に出し、エネルギーを込める。
「相手が悪かったね。魔砲撃!」
その瞬間、アニメ漫画で見るような光線が改造虎を粉々にし、彼方へぶっ飛ばした。
ふぅ、倒すのに必要な知識があったから何とかなった。さて、あの男を追うか。
ーーーーー
ガンッ バキッ
「かったぁ...クロマさん、大丈夫?」
「大丈夫です。...鳥と狼、空陸のタッグとは実に厄介ですね。」
二人は改造狼、改造鷲と戦っている。ルザーナは改造狼の相手をしているが一筋縄でいかないようである。
改造狼は非常に強く、人工的に作り上げられたその脚は凄まじい瞬発力を生みルザーナに襲い掛かる。
「ガルァ!!」
「クッ...青之脚撃!」
ガキィンッ....
「!?」
「チィッ...またか!!」
空を飛ぶ改造鷲。
「...あの鳥、空から私達の行動を監視しているようですね。何か動きがあればその情報を戦闘力に長けた狼に送り、狼に危険が迫れば今みたいにバリアを張る。」
「おまけにあの鳥、隠密を使ってかなりの速度で飛んでいるから狙いづらい。」
「面倒な連携ですね。」
支援に長けた鷲、戦闘に長けた狼。その連携をどう突破するか...。
「...別れて戦うのはやめておきましょう。下手な分散はかえって戦力が下がるだけです。」
「ですね。しかし、どう対応しますか...。」
「どんな連携も必ずどこかに隙は存在します。...どこかの瞬間に。」
すると狼が再び襲い掛かる。
「はあっ!!」
ガキィンッ...
「...ッ!!」
クロマが何かに気づいた。
「...もしかすれば!!」
「...!何かわかりました!?」
「はい!」
そう言うとクロマは魔力を溜め始める。
「(ピピッ)」
「...!!ガルァッ!!」
「ルザーナさん!!」
「どりゃあっ!!」
ガキィンッ....
「ダメか...!!」
「いえ、そのまま維持してください!!」
ルザーナは狼に対し蹴りを喰らわそうとその体勢を維持、するとある事に気づく。
バリアが消えていない。そして狼も動けていない。
「これは..!?」
「バリア自体は狼も適用内です。なので狼自体は守れても攻撃が出来ないのです。狼が攻められた際にバリアを張られる仕組みなのでしょう、そのまま維持していれば狼は封じれます!!」
「な..なるほど...。」
「そしてこのバリア...おそらく!」
クロマは杖を上に上げ、空に魔法陣を作る。
「大落雷!!」
その瞬間、激しい轟音と光が改造鷲を襲った。改造鷲はその衝撃で砕け散った。
「当たった!?」
「さっきバリアを張られた際あの鳥は近くにいました。もしやと思い撃ってみましたが大当たりでしたね。あのバリアは対象と距離が近くないと発動できないみたいでした。」
そして張られたバリアは消えて...
「どりゃああ!!!」
そのままルザーナの蹴り技は狼の顔に直撃、狼は頭骨を砕かれそのまま動くことはなかった。
「「よしっ!!」」
改造狼、改造鷲、撃破!!
「そうだ、あの男は!?」
「...!いない..ってご主人様もいない!?」
「一体どこへ...
ドゴォッ!!
「「わぁ!?」」
空から強い衝撃が来る。
ーーーーー
空を見るとものすごい速度で飛行する物体が二つある...ムラクと改造ワイバーンだ。
お互い空で何度もぶつかり合い、炎を吐き、そしてその度に発生する衝撃で地上へ強い風が来る。
灰色の竜、鋼色の竜、両者の熾烈な戦いはどんどん増してゆく。
「(ピピッ...。)」
「な!?」
改造竜の口から魔法弾が放たれる。
「ぐっ..、うおおお!!」
ムラクは怯むも突撃、改造竜に体当たりをした。だが改造竜は立て直しムラクを弾き返し、その隙を狙うレーザーを放つ。
ムラクはレーザーを避けるもバランスを崩した一瞬を狙われ、改造竜の体当たりをくらった。金属の体だけありその威力は強く、ムラクは一瞬、意識を失いかけた。
「...元が我が同族だけあり、空に於いて強さは凄まじい..!同族として...何としても止める!!」
ムラクは魔力を纏う。
「速度上昇強化、魔身強化...出力上昇!!」
「(ピピッ...対象...危険...。)」
「はああ!!」
ムラクの飛行速度がさらに増す。その速度は改造竜に対応出来るものではなかった。
「(ピピッ...。)」
改造竜はバリアを張る。しかし...
「制御解除!!!!」
ムラクは力押しでバリアを破り、改造竜に突撃。そのまま地上に向かって隕石の如く、改造竜を地面に叩きつけるのであった。
「(ピピ...ピピピッ...。)」
「改造された苦しみから解き放ってやる、同族よ。」
そう言い、ムラクは改造竜の頭部を破壊した。
「...これで全て倒したな。」
「ムラク様!!」
ルザーナとクロマがこちらに来る。
「ご無事ですか?」
「ああ、私はまだ動ける。...ん?キジコ様は?」
「おそらくですがあの男を追っていったかと思われます。」
「ですがどこにいるかまでは分からず...。」
「そうか...。」
改造魔物を全て倒した!
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「はぁ..はぁ...。」
全力で走って逃げる研究員の男。
「ここまで来れば大丈夫だろう。あの魔物は我々が作り上げた次世代の兵器となるだろう傑作...!負けるはずが...
「みーつけた。」
「へ?ぎゃあっ!?」
音も無く、突如キジコの姿が現れる。
「ずいぶん急いでいる様子じゃないか。研究の実験をするっていうなら現場で記録していないと意味がないでしょ?」
「な...へ..兵器はどうした!?」
「兵器?ああ、あの改造された魔物ね。ごめんごめん、壊しちゃった。」
「な..ば、馬鹿を言うな!!」
「だから信じられない時のために現場で記録するのが実験でしょ?ほら行くぞ。」
「は..離せ!!」
キジコは研究員の胸ぐら掴み草原に戻った。
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さぁさぁ尋問開始〜
「まず、あんたの研究所はどこだ?教えなきゃ殺すよ、もう研究出来ないよ?」
ストレートな脅迫をしてみる。
「ひぃ..!!け..研究所は各地にある。私のいた所は末端、本部はわからない!!」
「本当だな...?」
「ほ..本当ですー!!」
ふむ、なら困ったな...それだと簡単に潰すことができない。おまけに末端研究員には大元の情報は流していないときた。
ならせめて...
「あんたのいた研究所はどこだ?」
「...ここから...北東に...20km離れた地点にある...ヴィンの森の中だ...!!」
「内部に罠は?」
「か...怪物が逃げた時のための設備は...!!」
なるほど、危険生物扱ってるならまぁあるか。
「そうか、じゃあもういいや。」バシッ
研究員を気絶させた。
「師匠、直接案内させた方が良かったのでは?」
「仲間が情報漏洩対策としてこの男殺すかもしれないし、コイツ自身が罠に嵌めてくるかもしれない。クロマ、ルザーナ、コイツを警察に突き出しに行くよ。」
「警察...?...ああ、警兵ですね。わかりました。」
一度体勢を立て直してから向かうとしよう。なので今は依頼報酬の受け取りに行くとしよう。
それからムラクとは別れ、私達はクロマの転移で町へ戻ったのだった。
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「なるほど、それは災難だったな。」
その日の夜、館にて朱斗と蒼鈴に今回のことについて報告した。
「あの研究員、あれから何か話した?」
「なんでも、研究所内にまだ大型の改造魔物がいるらしい。それに加え、例のフォーセ鉱石のエネルギーを使った別の実験生物もいるらしい。」
「末端とはいえ油断できないだろう。もし突入するなら気をつけた方がいい。」
生憎ながら私は突入します、敵対しているとわかった以上放っておけない。
ようやく掴みかけたスローライフを邪魔されたんだ。私をこれ以上動かすって言うならお高い代金を奴らに支払ってもらいますかぁ。
だがその前に、そろそろ入手しておかなければ。
「準備としてなんだけどさ、空間収納の習得に付き合ってくれない?」
バッグを拡大しましょう。
次回、ようやくバッグ拡大




