第67話 お前何者
お待たせしましたorz
「フォーセ鉱石?」
キジコです。
ギルドにて依頼を受注しに行ったのですが、その時受付のお姉さんが私達に直接依頼したい内容があると言い、現在に至ります。
「この鉱石は資料のように紫色の結晶であるのが特徴で、バルバの森の先にあるアーディ洞窟にて採掘が出来るのです。」
「それがどうしたのでしょう?」
「実は現在その洞窟付近の森にて、
[ルフト・コレル・ワイバーン]が確認されまして...。」
わ..ワイバーンだと...。
まさか今になって異世界とかで結構強い存在だったりする名を聞くことになるなんて。
サラマンダーとかはかなり早く会えてるけど。
館にあった本で見たがワイバーンは前足が翼となっている竜の一種で、飛行能力が非常に優れており縄張りに入った奴を容赦なく焼き尽くすとか。
飛行高度にもよるけど私達は飛び道具というか遠距離技があるからまだ対処できるかなぁ。(例:ペネトレーザ)
「この竜は非常に強く、実力ある冒険者チームも手を焼いています。...ですが本来この辺りにはいないはずなのですが...。」
「...一ついいかしら。」
「...?なんでしょうクロマ様。」
「依頼主は誰かしら?」
「へ..あら?書いていませんね...匿名のようです。」
「フォーセ鉱石はある魔法と抽出魔法の併用で高出力のエネルギーが生み出されるの。その危険性から長年採掘許可は出ていません。依頼自体はワイバーンの討伐だけど、立ち入り厳重禁止区域内の魔物をわざわざ狩る必要性があると思えないわ。」
...なるほど、クロマの言った事が本当なら行く必要はないな。だが同時にそのワイバーンの討伐依頼が出ているって事は...
「...そいつはワイバーンの討伐後そのフォーセ鉱石を集めるのが目的。禁じられた品なので売却はない。裏ルートとかがあるとしてもリスクがある。」
「師匠の言う通りです。推測ではありますがこの事から依頼主はフォーセ鉱石を何かに使う、扱い方を知っている人物である可能性があります。」
「...ギルド長に連絡してみます、少々お待ちください。」
...昨日ルザーナとクロマが帰って来た後に聞いた話だが、この前受けた依頼でツキノ草12本の採取があったが、ツキノ草は病気による熱や痛みを緩和する効果...つまり解熱鎮痛剤として使われるそうだ。
だがツキノ草は1本で8〜10人分の鎮痛薬が作れるらしく、12本も一体何に使うのか。近隣の病院は鎮痛薬の在庫はまだあるらしく、ただの怪我であれば回復薬とかでどうにかなる。
それに加え、さっきの依頼と同様匿名だったそうだ。
...何か妙に悪い予感がする。おそらく遠くない内に事件が起きる気がする。
「お待たせ致しました。先程の依頼は棄却されました。お騒がせしてしまいまして申し訳ありません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「ご主人様、こちらの依頼はどうでしょうか?」
ルザーナが依頼の書かれた紙を持ってきた。そこには魔物の群れの討伐依頼が書かれていた。
「...ふむ、これにしようか。この依頼を受注します。」
「かしこまりました。」
ーーーーーーーーーー
ールース草原ー
シュンッ...
「ご到着です師匠!」
「す...すごい、これが転移...。」
クロマの転移で移動時間を大幅短縮した私達。すげぇなこの子。
この辺りはルース草原というらしく、この草原を超えた先は帝国領に入るらしい。まぁ帝国自体はかなり先の距離にあるが。
この地域は森や丘などがあり、地形が少し複雑。どこから目的の魔物の群れがやってくるか気をつけないと。
そう思っていた矢先...
「ギャオーーーーッ!!」
「!!」
現れたのは四足歩行の黒いトカゲ。
種族名は[ノワ・ハオ・リザード]という。
この魔物は特定の棲家は持たず、群れで各地を移動しながら生きている。その際町を襲ったりする事があるらしく、近頃数が増えているという事もあり討伐依頼が出たそうだ。
さて、いざ討伐開s...ちょっと待った。
「...?どうかしましたか、ご主人様。」
「ルザーナ...思えばその格好のまま来たの?」
ルザーナの服装は昨日作ってあげたワンピースとサンダル。勝負に向いてる服装ではないはずだが...
「ご心配なく!魔力変形!!」
「は!?」
ルザーナの体が輝き出す。
するとワンピースやサンダルが形状変化する。
青い鱗模様の鎧と薄水色の生地、サンダルは少しヒールのある白い皮のブーツになっている。スカートはなくなり水色と黒のレギンスが現れ、尻尾がより目立つ。
顔にも鱗のような装備が現れ、長い前髪が何故か後ろ方面にたなびき、前が見えやすそうになる。
...正直言葉だけでは説明が難しい、簡単に言えば、
「が...合体させたのか...あの服とお前のアーマーを!?」
「はい!あ、元にも戻せますからね!」
万能魔法、魔力変形持ってる事自体ビックリだがまさかそこまですごい技術持っていたなんて...。もはや変身である。
「さぁ、行きますよ!!」
「ギャ...ギャオ?」
過剰戦力チームいざ出陣!
「猫ぱんち!」
「破岩脚!」
「サンダースピア!」
ーーーーー
「ふぅ、呆気なかったですね。」
「当たり前だ、私達の戦力じゃ過剰過ぎる。」
リザードは50匹くらいいたが1撃で1匹倒せたので直ぐに終わった。依頼達成〜。
「さて、すぐ終わっちゃったけど報告しに...
ゴオッ!!
「...!?」
すごい風圧共に大きな影が現れる。
「主らは何者だ?」
「な...!?」
前足が翼、大きな体格、灰色の表皮...
「...さっき棄却された依頼のワイバーンって...。」
「...間違いなくアイツだな。」
「私の名はムラク。竜王様の命でこの辺りを守護する存在。」
現れたのは町で棄却された依頼のターゲットであったワイバーン。私にとってはこの世界で...いや、人生で初めて見る本物の竜だろう。
その威圧感は凄まじく、見ているだけでも驚きとワクワクで痺れる。
「私はキジコ。こっちがルザーナでそっちはクロマ。」
「キジコだと..?なるほど、その凄まじい魔力なら納得だな。いや改めて、貴方が例の神獣候補でございましたか、お初にお目にかかります。」
ムラクは深々頭を下げる。
「え...私そんなにえらい存在じゃない..よ?」
「いえ、貴方の事は竜王様からお聞きしました。素晴らしい才覚の持ち主だと。」
「え..ええ...。」
私の噂どこまで広がってんだ...。
「それで...ムラクさんはどうしてここへ?」
「ムラクで構いません。先程、アーディ洞窟の前に謎の男が現れまして、
(「近い内にこの近辺で邪悪な獣人が現れます。ヤツは私にある不幸を与えた、だがヤツは私の力では倒せません、どうか偉大なる貴方の力をお貸し下さい。そしてその獣人を殲滅してほしい。」)
...とな。」
「...フォーセ鉱石の匿名依頼の件と無関係に思えないな。」
「待ってください師匠、だとすればその男は今洞窟に!?」
「いや、私も間抜けではない。洞窟の近辺は強力な結界を重ねて張っている、おそらく奴は今頃...
ザッザッザ...
「ん、誰か来たぞ..?」
「...!ちょうどいい、我の後ろに隠れよ。」
「重ねて申し訳ない偉大な竜よ。」
現れたのは研究員のような服装の男。
「何用だ?我は貴様の助言通りその獣人を待っているだけなのだがな。」
「ああすまない、実は私の祖父が昔洞窟の中に大ぃ〜切な指輪を落としたと言っていたのですが、結界が邪魔で入れないんだ。大変無礼なのはわかっています、どうか今一時道を開けてくれないだろうか?」
男の言葉の端々から怪しさを感じる。おまけにムラクに対して言葉の割には敬意もない。
何者だ..?
「貴様は指輪よりも、もしやこのような石を探しているのではないか?」
「ん?」
ムラクは空間収納と思われる所から紫色の結晶がある鉱石を出す。
「な..!?あ...失礼。私が欲しいのはこれではなくてですね...。」
「ふむ、それは失礼した。いらないのであれば捨てても構わん。」
「いえ、せっかく貴方様から頂いたこの石、私はありがたく頂きたいと思いま...あ?」
男はやはりフォーセ鉱石を狙っていたようだ。だがあの鉱石はもしや...
「...い、いやぁ...またすまない、わ、私の妻がこの鉱石が嫌いなことを思い出したよ!は..はは..。」
「いらないのはそれが偽物だからだろ?」
「な!?」
私はムラクの後ろから現れる。
「貴様は!!」
「なるほど、ダミーはアメジストか。この世界でも綺麗な色しているな。」
謎の男は顔色を悪くする。
「りゅ..竜様、コイツです!!邪悪な獣人とはコイツの事です!!危険です、今すぐ排除を...!!」
「もう遅いよ。あんたはムラク...ワイバーンの討伐依頼出していた匿名の人物だろ?」
「な..!?い、一体なんの事だ!!」
ふむ、コイツすぐ焦りやがる。ババ抜きで速攻負けるパターンのやつだな。
「洞窟は立ち入り厳重禁止区域です。依頼には付近に現れたワイバーンを倒せと書かれておりましたけど、依頼側の貴方がなぜここにいるのでしょうか?」
「..だからなんの...!」
「たしか今私の事を邪悪な獣人だとか言って目の敵にしていたよね?」
「...!」
「思ったんだけどさ、なぜ私達がここに現れるのを知っていたんだ?それに加えなぜムラクをここに向かうよう仕向けた?」
「...。」
「...面倒くさいからさ、そろそろ吐いてくれないかな?あんたの正体。」
「はぁ...上手く行かなかったかぁ。」
「...!!」
「もう全部言うさ。匿名で依頼したのも、お前を殺そうとした事も、フォーセ鉱石が狙いだって言うのも、全部当たりだよ。
私はとある研究所の職員でね、実験の過程でフォーセ鉱石によるエネルギーが必要になってしまってね。採掘行こうと思えばワイバーンが住み着いたときた。派手に暴れられると禁止区域にいた事が国にバレてしまうから、正直一か八かギルドに依頼してみたのさ。失敗したけど。
次に君を敵対している理由ね、担当直入に言って君が嫌いなんだよ。去年ロティアートという男が開発した[ディストル]という怪物、私達の研究所にとってはあんな素晴らしい人工生命体は研究意欲唆る物だった。
ぜひ研究してみたいと思っていたのに...君は跡形もなく消しとばした。...相当腹が立ったよ。
そして君達がここに来る事をどうして知っていたか。簡単に言えば今君達が受けている依頼は私が出したのだからだ。
洞窟と距離の近い所に来たヤツに対し、そいつは邪悪な者としてワイバーンを差し向け、いない間に採掘するっていう目的だった。
だが驚く事に依頼を受けたのは君だとギルドを通じて知ってね、これほどいいチャンスは無いと思ったさ。
だから私が君達が来る前にあれこれ使って先回りし、ワイバーンに君達を狙うよう仕向け、その間に鉱石を取って逃げるつもりだった。
...はぁ、神獣候補の殺害と鉱石採取両方失敗するとは、なかなかいい作戦だと思ってたんだなぁ。」
「すんなり教えてくれた事には感謝するよ。でもやけに色々話すじゃないか?」
「はは、そんなの簡単さ...。」
男の周りに3つ魔法陣が現れる。
すると魔法陣から、
•金属の脚とボディ、いかにも別種のであろう角が生えた大きな狼
•金属の爪と顔、両目が人工的な何かである大型の鷲
•金属のゴーグルと脚、尻尾にはレーダーの役割を持った結晶がある大きい虎。
「色々バレてしまった以上君達は死んでもらうからさ!!研究成果の実験台になれ!!」
現れたのは明らかに改造された魔物。どうやら奴らの研究所はロクでもない所らしい。
「ムラク、あの男が逃げないようしてくれるか?」
「言われずとも。」
「お前の相手はこっちだ!!」
さらに大きな魔法陣が現れる。
そこから現れたのは、さっきの3体以上に金属の体へ改造されたワイバーンだった。
「...!?...よくも同族を!!」
「アハハハ、いい声じゃないか!!いけぇ!!!」
「みんな行くぞ!!」
一体奴らは何者だ?
やっと落ち着いた生活を送れると思った矢先に現れたのは謎の研究組織。
畜生急に牙剥き出してきやがって、私の目指すスローライフを邪魔するって言うなら...ぶっ飛ばしてくれるわ!!
いざ、勝負開始!!




