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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
波乱のマイライフ編
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第65話 私も強くなりました

 「私はもう、迷わない。」


 自身の求める何かを理解し、突如覚醒したルザーナ。

 その姿は人。だが体にはまるで竜のようにも見える青い鱗のアーマー、リザードスケイルと言えるものだろう。

 

 その髪は青く、金色の目は鋭く輝き、溢れる闘気は凄まじい圧力を生む。


 「...この姿にも、何か意味があるのでしょう。きっと。」


 ルザーナは自身の体を見るがそれほど驚きはしなかった。求めた力の一端だからだろうか..?


 「あり得ない...あり得ないぃぃ!!獣人化覚醒個体は数ヶ月前に歴史上数百年ぶりに出現したばかりだって言うのに...もう新たなる個体が現れただと!?あり得ない!!あり得ないいいい!!!」


 暗殺者は恐怖と焦りに飲み込まれ絶望する。

 それだけでない、ルザーナは神獣資格や守護獣のような特別な称号は持っていない。神獣資格を持つキジコの家族ではあるが、そのような関係が直接覚醒に繋がるわけではない。


 ただ確実なのは、ルザーナは求めた何かを掴めた...ただそうなのだ。


 「一撃で終わらせます。」

 「いや...嫌だ!死にたくない...死にたくないい!!」

 「金で依頼されたのでしょうけど...運が悪かったですね。」

 「嫌だああああああああ!!!」


 ルザーナは脚に魔力を込める。すると脚にある傷から禍々しいオーラが溢れる。


 思えば呪力斬の痛みがない、それどころか同じ力を感じる。

 禍々しいオーラはヘビのような見た目の装甲となり、ルザーナの左脚に装備される。


 「...呪いの力が私の力として吸収されたようですね。ちょうどいいです、これで仕留めましょう。」


 暗殺者はもはや声が出ない、なぜなら肉体が逃走という行動に全ての力を使っているのだから。

 何もかもが想定外。ターゲットは覚醒、呪力は相手の力として吸収された、自慢のスキル下降気流ダウンバーストは耐え切られた、暗殺術が通じる気配がもう無い、もはや暗殺者に勝てる要素は何もないのだ。


 「さようならです。」


 ルザーナは高く飛び、暗殺者に目掛けて技を発動する。


 「青之大流星アズールフルメテオ。」


 

 その一撃は木々を吹っ飛ばし、周囲の魔物も消し飛ばし、凄まじい衝撃と風圧は森中に広がり、残っているのは隕石でも落ちたかのような跡。


 だが、暗殺者はギリギリ当たっていない...いや、技を外されていた。


 「あ...ああ..!」

 「どうです?少なくともこれで貴方は1回2回死んだじゃ済まない事に遭いました。」

 「あ...。」


 「貴方の落としたメモなのですが、すごいですね。どうやら短期間でかなり私に関する情報を集めていますね、それどころか他のターゲットに関する情報まで。勝手ながら貴方を生かしておきます、これからは我々の情報収集係として生きてもらいます。」 

 「え...?」

 「断るとは言いませんよね?従うのであれば命は保証しますし、断れば貴方を恨む人々に突き出して無惨に殺してもらいますかな。」

 「し...従います!!この残された命を貴方に、私の全てを捧げます!!ですのでどうか命だけはあああ!!」

 「...契約成立ですね。ではこちらに来てもらいます。ああ、裏切れば苦痛を与えながら殺します。」


 ルザーナは暗殺者を引き摺りエレムスの所へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー


 人の姿の私、

 ボロボロの暗殺者、

 どこか誇らしげなエレムス、

 どこか満足げなイグニール、

 ぽかーんとしてるゼオ達。


 「えーと、ルザーナです。」

 「ええええええええええええええええ!?」


 そうなりますよね、はい。

 ちょっと森の奥に行ってたサラマンダーが人に化けて帰ってきたのですから。


 「ほ..本当にルザーナ..さん?」

 「はい、ルザーナです。」

 「そ..その男は?」

 「元暗殺者です。依頼主に私の命を狙うよう言われてたみたいです。」


 その男を突き出し、エレムスが寄る。


 「ひ..ひぃ..!」

 「なるほど。お前、依頼主は誰だ?」

 「は..反神獣派の...ジーマという男に依頼されました..!」

 「ん?やけにすんなり吐くんだな。」

 「わ...私は死にたくありません...ので..!」

 「え?」

 「裏切れば殺すって脅しただけです。」

 (お前...そんな怖い子だったっけ..?)


 するとイグニールが暗殺者に、


 「あんた名前は?」

 「え..あ..スオロです。」

 「スオロね、...スキル:[監視契約オマエシモベ・スオロ]。」

 「へ?」

 「今からあんたは我々の監視下で生きる事になった。もし妙な動きをすれば...わかるな?」

 「は..はいいいぃぃぃ!!」


 情報係を無理矢理手に入れた!

 

 「それじゃ、私はジーマって奴の所に行くからあとはよろしくね〜。」


 そう言ってイグニールさんはどこかへ飛んで行った。


 「さて、そら。」

 

 エレムスがスオロに治療ヒールをかける。


 「早速だがお前は反神獣派の残党に関する情報を集めて貰うとしよう。わかったらさっさと行け。」

 「はいぃ!!」


 急ぎ足でスオロはどこかへ消えた。


 「さて、気を取り直して...予想外な成長をしたじゃないか、ルザーナよ。」

 「は、はい!」


 再び皆んな私をじっと見つめ始めた、ちょっと...恥ずかしい..。


 それから私は15分くらいゼオさん達から質問責めをくらいましたとさ。



ーーーーーーーーーー

 

 そこからはまた再び努力の日々です。

 季節が変わると修行内容も変わるので大変です。

 

 覚醒した後でもエレムス様の指導は厳しい...いやそれどころか私に対してはより一層キツくなったような気がします。


 ([あいつ鍛えがいある奴にはとことん燃えるからなぁ..。]第29話あとがき参照)


 面白い事に覚醒しても前の体、つまりサラマンダーとしての肉体に戻る事は可能らしく、必要に応じてご主人様を乗せて運ぶ事が出来そうです。


 ちなみに日常は基本的に楽しかったです。


 ドゥークの森の木であるアヴィードは冬になるにつれ葉が散り、やがて暗い世界に陽の光を浴びせます。

 幹がそもそもとっても長い木なので明るいかどうかが怪しいですが、ずっと明るくはなりました。


 迎えた13月の月末、近辺の町ドゥーカルンにて皆さんと一緒に新年を迎えました。1月1日、町は新たな年を迎え大賑わい。


 ※【1年(13ヶ月395日の世界)】

 

 「よぉ兄ちゃん姉ちゃん達、新年おめでとさん!!」

 「お、鎧揚げ屋のおっちゃん!おめでとうございます!」

 「はっはっは!森に入ってからすっかり良い面構えになったんじゃねえか?日頃の修練努力ご苦労様だな!」

 「はは、ありがとうございます!」


 鎧揚げ屋の人も相変わらず元気そうで何より。


 新年から98日目....


 「すっかり満開だな、今年もまた綺麗に咲いたもんだ。」

 

 アヴィードの木は春頃に赤い花を咲かせる。

 ...ご主人様は花が散って葉が生い茂った頃にこの世界へ参られましたから、去年これを見たかったと言っておられましたが...ご主人様は未だ目覚めていないとの事。

 ご主人様にも見せてあげたかったな。


 確かこの花は薬草ならぬ薬花としての効果や花の蜜が調味料になるなど、季節限定の品として高く取引されるらしく、料理好きのミーシャさんは目を輝かせていた。


 そして花が散る時期がやってきて森の地面は花で赤く染まっていた。この光景をスカーレットワールドというらしく、まさにこの時期だけの絶景らしいです。

 ちなみにミーシャさんは他人に迷惑かけない程度に沢山採取していました。



 そして迎えた5月15日...正直おおよそではありますが、ご主人様が眠り目覚めぬまま1年が経ちました。


 ゼオさん達は1ヶ月前に、一足早く帝国に戻りました。なんでもヴェアートさんがそろそろ戻ってきて欲しいなんて小さく呟いていた所をゲトーさんが(うっかり)聞いてしまった模様。

 その事をゲトーさんから念話で聞き、流石に長く帝国を空けていた為頃合いとして帰っていった。


 私もそろそろもっと色んな所で鍛えるべきかなかと、そんな事を考えていたある日でした、


 「ご報告があります!!」


 すっかり従順になったスオロ君。


 「どうしました?」



 「ルザーナ様、キジコ様がお目覚めになられました!!」


 なるほどなるほ...ど!!??

 私はスオロに掴みかかる。


 「おいスオロ今のは本当か!!?」

 「ぐえぇ...ほ...本当でござい...ます...!」

 「あ...ごめんなさい..。」


 ...実に13ヶ月が経ったある日の事、ご主人様が目覚めたという報告を私は知った。


ーーーーー


 「リーツへの旅の準備はこちらで整えておいたよルザーナ。」

 「ありがとうございます。」


 ご主人様が目覚めたと知り、中立最大国家エデルにある町、リーツに向かう事を決めた私。

 

 「まだ守護獣に勝る実力とは言いづらいが、1年前のあの頃とは大きく違う。よく頑張ったな。」

 「...いえ、まだまだです。」

 「求めていた何かを掴んだ時点でも十分合格点だ、師匠側として嬉しいよ。」

 「本当ね、ミーシャちゃん達も帰っちゃったからお姉さん余計さびしーよー。」

 「茶化すな(バシッ)。」

 「イターーー!?」


 「さて、私はこれで。1年本当に..ありがとうございました。」

 「気をつけろよ。」

 「お体気をつけてね〜。」


 私は1年の修行を終え、リーツに向かったのでした。


 

ーーーーーーーーーー


 回想終了


 「....以上です。」

 「...まさかエレムス様の所で修行なさっていたとは。」

 「というか、キジコ様が目覚めたのは一昨日の午前だっていうのに、まさかもうリーツに辿り着くなんてな...。」


 現在私キジコが目覚めて3日目の午後。

 (起きる:1日目、vsヴァルケオ:流石に初日はしんどいので2日目に行った)


 「ずっと走っていましたから!」


 ルザーナの自信満々な答えに皆唖然とする。この町は帝国からは離れており、ドゥークの森からずっと走ったとなると結構な速度で走らなければならないのだ。


 でも考えてみれば、元が脚力の発達したサラマンダーでありエレムスの下で修行、さらには覚醒したんだからと、皆結局は納得したのでした。


 「でも驚いたよ、まさかルザーナまで覚醒していたなんて...。」


 正直、これが一番驚いた。


 「あれ、服は大丈夫なの?」

 「鱗のついた鎧のような体でしたが、一応意識すれば消す事はできまs...

 「待ったルザーナ!!」

 「むぐぅ。」

 「...色々な意味でそれ以上は言ってはいけない、うん。」

 「...?わかりました。」


 元が魔物だから一部常識が...。(主に一部の羞恥心が..。)

 服何が似合うのかな...服...ん?


 「...待てよ?そうだ。」

 「..?どうしたキジコ。」

 「この町、手芸屋さんとかある?」

 「?、そりゃあるけど。」

 「ルザーナに服を作ってみようかなって。」

 「..!!」

 「そういえばキジコ、いつのまにか裁縫師ってスキル持っていたね。」 


 「あれ、でも家の改修代はどうするの?」

 「いや、一日であれだけ一気に依頼受注するとギルドの人がまたドタバタ大忙しなるだろうし...ね。」

 「...師匠の受けた依頼はどれもハードな方でしたからね..。師匠からすれば楽ですが、並の冒険者では準備を整えないと難しいのです。」


 迷惑かけたのは失敗だったので、もう少しいいクエストが出次第に再度動こうと思う。


 それまでは趣味を楽しむとしましょー!


ーーーーーーーーーー

 おまけ


 「ねぇヴァルケオ、私のスキルから隠密が無くなったんだ。それに猫爪って言うよくわからない統合スキルまであるんだ。」

 「ふーむ...もしかすればだけど、キジコが成長した事で肉体的に馴染みやすいスキルがスキルじゃなくなったのかも。」

 「え...どゆこと?」

 「隠密は気配を隠すスキルなんだけど、キジコが成長した事で技術的な面だけで再現可能になったんじゃないかと思うんだ。だからスキルとしてあった隠密は消えたんじゃないかと推測するよ。」

 

 ...そういうのあるんだ。だとしたら今あるスキルもその内いくつか消えるかもな...。


 「じゃあこの猫爪ってのは..。」

 「発動してご覧。」

 「猫爪発動..。」


 すると私の爪が伸び、鋭くなる。


 「...なんじゃこりゃ。」

 「多分君が持ってた爪に関するスキルが統合...というより融合した事で現れたスキルなのかもね。おそらくその爪に魔力を纏えば...。」


 リンゴを用意した。


 「どれどれ...えい。」


 スパッ


 「...わお。」

 「...思った以上に切れ味高そうだから扱い気をつけてね。」

 「...はい。」


 おまけ終了

ちなみにスオロはイグニールの監視の下で今でも情報収集役として働かされてます。情報収集能力が高いのを見込み生かされました。



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