第64話 私が求めた強さは
ちょっと短めです
「シャアアッ!!」
「!!、ヴルァッ!!」
「ガッ!?..チッ、高い報酬金出るだけあって、簡単に殺せなさそうだな..。」
ルザーナの前に現れたのはナイフを持った謎の魔人族の男。
狙いはルザーナ、多額の報酬金を契約にその首を取りに来た、いわゆる暗殺者だ。
この暗殺者の実力は高い。
不意を突かれたとはいえルザーナは斬撃を食らってしまった。
おそらく隠密やナイフのスキルもかなり強化してあるだろう、だからかなり暗いこの森では思う存分以上に効果を発揮するだろう。
「ケケッ、そろそろ面白いものを見せてやろう。」
「!!」
「シィッ!!」
暗殺者は姿を眩ます。
気配はまるで感じない、流れる微風の方が荒々しく感じるほどに。
...。
...。
...ッ...
(音..!!...いいえダメ、一方だけに突っ込むのは危険...!)
「青之・火炎球壁!!」
私は球体状の青い炎のバリアを作る。
バシュッ...
「...勘がいいな、ナイフは貴様の首に命中するはずだったのだがな。」
私の首根っこを狙って飛んできたナイフは高熱で変形している。この判断はちゃんと合っていたようだ。
だが暗殺者の姿はまだ無い、一体どこだ....。
...そうだ!
(...面倒だな...あっさり殺せそうな雰囲気だっつーのにどうも油断ならねぇ。もう少し報酬金ふんだくっておくべきだったか..?)
「..!!青之火炎!!」
「何!?グアアッ!!」
ルザーナは何と姿が見えない暗殺者に火炎弾を命中させた。
(上手くいきました..。炎の壁を応用し、熱波で相手の位置を特定が出来ました。
相手は熱反応すら隠していました、なら熱波に当ててみればどうか試してみましたが大当たりでした。相手は当てられた熱波の温度も無効化していたおかげで見つけれました。)
ルザーナの種族は熱反応を特定出来る器官があるため、まさに今のルザーナだからこそ扱える探知方法だ。ちなみに熱波だけでもある程度探知は可能。
「チィッ!!二連斬り!!」
「ヴル..破岩脚!!」
「な!?ぐあっ!!」
ケイさんが使っていた技、ようやく成功しました...。
「...舐めやがって!!」
暗殺者は再び姿を消した。だが先程と比べ走る速度が格段に上がっている。熱波による探知じゃ遅い...。
「ジャアッ!!」
「!?、ヴルッ!!」
間一髪回避が出来た、どうやら本気を出し始めたようです。
「おらっ!!」
「ヴルッ!!」
「チィッ、図体の割にちょこまか動きやがる..!!」
すると暗殺者は魔力を溜め始める。
「くらえ下降気流!!」
上から下へ押しつける空気の流れが発生する。幸い範囲が小さいようで避けることはでき...
「馬鹿めそっちは囮だ!!本命はこっちだ!!」
「な!?」
やられた、奴は私が回避して足元が安定していない瞬間を狙い、より大きな気流を発動させていたのだ。
私はそのまま地面に叩きつけられた。
「あ..ああ..。」
「ははは!どうやら俺の勝ちだな!!では早速首を頂くかな..。」
「...させない!!」
「な!?」
地面に魔力エネルギーを爆発させて無理やり起き上がった。
「ぐ...。」
「お..驚かせやがって、どの道その空間は俺以外のやつは気流が重くてまともに動けねぇのによ。」
体が重い、魔身強化を使ってもこれほどまだ負荷があるなんて...。
...でも、こんな所で弱音を吐いていられない!
「ジャアッ!!」
「..!!」
ーーーーーーーーーー
「はぁ、はぁ、エレムスさん..マジで強いって..。」
「この程度でくたばるな、魔力がまだあるなら息を整えてからまた来い。」
「はい..!」
(妙だ、ルザーナは何と戦っている...?気配は我にはわかるのだが...何者だ此奴..?)
「すまない、一旦ルザーナの様子を...
「待ったエレムス。」
「..なんだイグニール。」
「...今あの子は自分の求める何かを掴みかけている。..だからお願い、今手を貸しちゃまた掴み損ねてしまう。今はただ、見守っていてあげて。」
「...わかった。」
(...無事でいろよ。)
ーーーーーーーーーー
「...ヴル..。」
「カハハハ!!耐えるねぇ、もう魔力も尽きかけてるっていうのに俺の技を何度も防ぎやがる。...腹立たしいトカゲが!!」
暗殺者はナイフに魔力を込める。
「呪力斬。」
「ああ ゛っ...!!?」
凄まじい痛みが左脚に入る。
「どうだ効くだろ?この呪力斬は魔力消費も多く派手でもねぇが威力と痛みは別格、例え回復しようがその呪力は消えない。今から死ぬ貴様にはなかなか面白いプレゼントだろぉ?」
「ガッ...!?」
左脚に焼けるように、抉るような、引き裂かれるような酷く凄まじい痛みが走る。正直もう立っていられない。
でも倒れちゃダメ、守護獣様に鍛えてもらったのにこんな結果じゃ...ご主人様に...!!
...いや、違う。
「...だ...。」
「あ?」
「まだ動ける!!!」
「な!?ぐあっ!!」
尻尾で暗殺者を叩きつけ木にぶっ飛ばす。
「あ゛あ゛!?」
「...ケケッ、動かない方がいいぜ?そんな激痛、普通まだ立てている方がおかしいぜ?」
(...そうだ、私が強さを求める理由、)
「ヴルァッ!!」
「グアッ!?」
火炎弾を吐くルザーナ。
(ご主人様を守りたいから?)
「..まだそんな力が...グハッ!?」
(ご主人様のお役に...立ちたいから?)
「ヴハッ...。」
「...魔力が切れたか。手こずらせやがって..。」
(違う、どっちも違う!!)
「ヴルァァァッ!!!」
「何!?ゴァッ!?」
私が...強さを求めるのは...あの時私を...拾ってくださったご主人様のため...ずっと鍛えた私自身が...
「...イテェなクソが..。あれだけしておいて気流内から脱出なんてありえねぇ..。こんな脚力まで残してやがったなんて..。」
何も掴めず、
ずっと、
自分の夢事ばかり考えて、
ご主人様の気持ちを真に考えず、
ただ役に立ちたいと足掻いてた私が、
無力な私自身が...
情けないのだ
ただ情けないのです
嘲笑えるほどに情けないです
泣きたいほど、情けないのです
だから私は力を求める
ご主人様を守る力ではなく
ご主人様と..
[ずっと家族でいられる強さ]を
私は求める
ーーーーー
辺りが光に包み込まれた。
そして...
「...なぜだ..!?」
「...。」
「聞いてねぇよこんなのよぉ!!...なんなんだお前はあ!!」
青い鱗のアーマー、美しい青い髪、金の目、深紅のスカーフ、人の姿。
「私はもう、迷わない。」




