第61話 従者《シモベ》になります。
薬草採取の途中、突如現れたのは盗賊紛いの魔女クロマ。狙いは私の採取した薬草のようで、おまけにやってる事が盗賊紛いだと言ってみれば逆ギレ起こし勝負を挑んできた。
面倒だなぁ...大人しくさせますか。
「私を怒らせた事、後悔しなさい!アースサンダー!!」
技名の通り地面に電流が流れる。私はすかさず飛んだがおそらく...
「かかったわね!フォールサンダー!!」
やっぱりな、普通飛べば誰だってその隙を狙う。私の上に雷のボールが現れる。
「くらえ!!」
その瞬間雷のボールは輝き、私に目掛け雷が落ちる。
「...ふむ、結構威力高いな...。」
「へ?」
伊達に自信過剰なわけではないようだ。ここ結構高い木があるのにちゃんと私に命中した。ふむ、初めて会った頃のゼオ達よりも強い。
クロマは平然としている私を見て驚く。見る限り、どうやら自信ある一発だったらしい。
「これならどう!?サンダースピア!!」
槍状の雷が5本襲ってくる。(カッコいい。)
「ペネトレーザ。」
「なぁ!?」
早く撃てば壊さなかったのに。
クロマは地団駄を踏み、さらに強い魔力を込め始める。
「見てなさい...こ、ここからが本番よ!!」
するとクロマがフワッと浮き始める。浮遊魔法のようだが、クロマの周りには電気が纏われている。どうやら本気なのは本当っぽいな。
面白そうだ、どんな力か見てみよう。
私は試しに魔力弾を撃ってみる。
「何よ、今の遅い攻撃。貴方やっぱり弱いわね?」
向こうは謎に自信がついたようだが、やはりあの浮遊魔法は雷魔法を用いて己の飛行速度を上げた状態らしい。電磁力なのか何なのか、仕組みはわからないけど。
ふーむ、どう倒すか...そうだ。
私は森の中を走る。
「あ!逃さないわよ!!」
クロマは猛スピードで追いかける。
森に住んでいるだけあってか木々の間を難無く通り、すぐに追いつこうとする。
けど私も考えだってある。
とある童話では、飛んで追ってくる魔女の通り道に針金を仕掛けるっていう恐ろしい作戦を考えた子供達がいた。
だがおそらくクロマはそういうのは引っかからないだろう。ならばここは...
ピカッ...
「!!、...光の網?」
クロマの見る先には木と木の間に横に何本も張られたレーザー。触れると斬れます。
「こんなもの...かかるわけがないわ。」
クロマはすぐに止まるが...
「!!」
残念、後ろと上空にも張っています。そして時間で内側にも張られていきます。
進めるのは一方のみ。クロマは高速で飛び、網から逃れようと進む。だが既にレーダー張ってるのであんたの居場所は把握している。
さぁ私より強いと言うならどう動く?
クロマは網の空いている方向へ全速力で進むが、網からは逃れられない。
「何よしつこい!どこまで追ってくるのよこれ!!」
苛立つクロマ。
すると、網が追跡を止めた。
「..!!やっと網が追いついてこない..!....あははは!所詮あんなの長続きするわけないわよね!!」
しかし油断大敵。
「..しまった!奴はどこ!?」
「ここだよ。」
「え...ギャッ!?」
加減はしたが地面に叩き落とし、そのままクロマは気絶した。
レーザーで追い込んでいた辺りで隠密を使っていた。
しかしこの隠密、知らない間にステータスから消えていた。思えば猫爪って言うスキルも知らない間にある、なんだこれ..?
よくわからないので後でヴァルケオに聞いてみるかな。
ーーーーー
「うぅ...。」
「私の勝ち。諦めな。」
「こ..この..!!」
「諦 め ろ。」
(補助スキル:威圧を習得しました。)
「ひぃ...!!」
あれ、威圧ゲットしちゃった。お陰でこの子怖がらせちゃったじゃん。
「...もべ..。」
「?」
「私をシモベにしてくださいキジコ様あ!!」
...へ?なんつった?
「貴方様の強さ、威圧、圧倒的余裕感、全て感服致しました!!」
「え、ちょ...。」
「この愚かなクロマ、先程の無礼な行為を償うため貴方に絶対服従いたします!!命令とあればなんだって致します!!!」
え..ちょ...えええ.....。
変人が仲間(?)になった!
ーーーーー
それからクロマの知識をもとにヒカゲ草とヨカゲ草を手に入れ、小型魔物討伐の件はそれぞれの素材をケースに入れなんとかなった。
ただ...
「キジコ様、お荷物お持ち致しましょうか!」
知識は有難いが...ついてきた。
「...ついて来るの?...てか君、家は大丈夫なの?」
「はい!空間スキルも長けておりますので、空間収納も転移も出来ます!!」
マジか!?え、この子転移とか使える子だったの!?それはすげぇ....待てよ?スキルにもよるがそっち使った方が強くね?多分。
「大蛇の首、私が運びますのでご心配なく!」
...荷物持ちとしてはまぁ..しばらく考えておこう。
それから私(達)は町へ戻り一括報告。当然、ギルドにいた者達が次々驚く。どうやらあの蛇、ギルドにとって本当に困ったヤツだったみたいだな。
受付のお姉さんは慌てて完了手続きや報告をしている。そのためかギルド職員達何人かが自分の仕事を後回しにしている。
だが、驚く事はまだあった。
「ク、クロマ様!本日はどう言った御用件で...?」
「...様?」
「キジコ様、この方はバルバ森林の高名な魔女様でして...。」
「...え?」
「えへん!!」
まじで...。盗賊紛いのこの魔女っ子が..!?
「私は今日からキジコ様の忠実な従者よ!だから住む場所はもう森ではない!!」
「ちょ、おま..。」
「なんだって!?神獣候補の勢力にあの魔女が!?」
「マジか!?あの魔女が!?」
...周りの冒険者達の反応を見る限りどうやら町では有名かつ凄まじい実力者であるのがわかる。覚醒前の私が戦っていれば苦戦していたのかもな。
本当世の中、何が起こるか分かったものじゃないなぁ。
ーーーーーーーーーー
それからしばらくして、受付のお姉さんが私を呼ぶ。
「ご...御依頼の報酬金を...お渡しします。」
薬草採取(1)...50シルバー(5000円)
薬草採取(2)...45シルバー(4500円)
薬草採取(3)...55シルバー(5500円)
小型魔物討伐(1)...3ゴールド(30000円)
小型魔物討伐(2)...5ゴールド(50000円)
ふむ...まぁこんなもんか、日稼ぎ額としては多分いい方だな。
大型魔物討伐...30ゴールド(300000円)
ふむふむ...ふぁ!?
「30ゴールド!?」
「ひゃ..はい!」
いきなり合計金額39ゴールド50シルバー(日本円395000円)か、かなりの稼ぎだな...。
「ありがとうございます。」
「いえいえとんでもございません!大蛇討伐こちらも感謝しておりますぅ!!」
「取り込み中失礼するよ。」
「ん?」
「朱斗様!」
現れたのは朱斗。
「キジコ様、客人...いや、あなたの家族がお見えです。」
?、ヴァルケオ達とは違う感じだな...待てよ、まさか!
私は急いで領主館へ戻る。
するとそこにいたのは、
「お久しぶりです、ご主人様。」
美しい体型ライン、青い鱗、綺麗な金の目、そして...真紅のスカーフ。
私の大切な家族....ルザーナだ。




