第5話 頼れる先輩
あばばばばばばばばばばば
え、え、何!?守護獣!?!?
ちょちょちょ待って!!
理解が追いつかない!!
落ち着け、偶数を数えるんだ、1,3,5,7…..これ奇数だ。
えーと
ヴァルケオに安全なところに案内してもらう
↓
何故か背中に乗せてもらいお日様当たりながらレッツゴー
↓
寝落ち
↓
目覚めると夕方
↓
ライオンさん以外の2体(1頭と1羽)の守護獣がいる
↓
ふぁ!?
というわけである。
うむ!全く何が起こってるんだかわかんない!
てか、ヴァルケオもそうだけどあの狐さんと鳥さんもまた綺麗な...、おっとまた見惚れてしまった。私もいつかあんな綺麗な毛並み持てるかな...。
いや待てよ、修行したり趣味の経験活かせば案外経験値とかになってその内たどり着けんじゃね?
きゃっほい、これは根本的に試していかなくては!
(補助スキル:向上心(1)を取得。このスキルは常に発動。自ら興味を持って行ったことの経験値が1.2倍となります。なお、レベル上昇毎に倍率が0.2加算されます。)
(補助スキル:学習力(1)を習得。このスキルは常に発動。知識や技術に対する理解力、記憶力が上昇します。なお、称号知恵ある者の効果でさらにスキル効果が上昇します。)
ちょっと待ったスキルお姉さん!!
なんかすごいスキルが来たよ!?
なんかとりあえず頑張っていこーと考えたらゲットできたよ!?
こんないきなりもらっていいの!?ありがとうございます!!ありがとうございます!!!
これ序盤としちゃ当たりじゃない!?
なんせ地道な努力が大きな結果につながる、いやそれどこかもっと大きくなる可能性だってある!塵も積もればエベレストにさえなりえるかもな!!
そうして私は新たなスキルに思考を集中させると同時に、また体が震えていた。
「あれ、固まってる?」
「....流石に複数の守護獣の威圧は早すぎたか。」
はい。だって怖いもん。さっき精神強度だの威圧耐性だの取ったけどそれでもおたくら怖いもん。
だがせめて自己紹介はしておこう。
「わわわ私は...きっ..キジコ..でしゅ。」
「あ、噛んだ。」
「やーん可愛い♡よろしくねキジコちゃん!」
「マウリって稀にそういう口調なるよね...。」
恥っず。
震え声に戻ってるし最後噛んじゃったし。念話なのに。
てか狐さん何私に萌えてんの!?
15mもあろう尻尾が犬の様にフリフリ、どういう光景だ...。
「キジコ、さっきも言ったけど向こうが下手にこの領域に侵入しない限りこの辺りは安全だ。けど、今の君だと弱くてどんなきっかけで死んでしまうかわからない。」
「そこで、僕たち守護獣が君の新たな生のためにしばらく育てる事にした。」
「え?」
え?なんつった?育てる!?
あれ?私は安全地帯まで案内だけで済んだと思ってたけど知らん間に何かあった!?
寝落ちしてる間になんかあったの!?
「ヴァルケオ、テューニ、やっぱキジコちゃん戸惑ってるじゃん。ちゃんと話した方がいいよ、称号の事。」
「称号...?」
「キジコちゃんステータスが見れるのよね、見てごらんなさい。」
どういうこっちゃ、ステータスオープン!
えーと称号称号...
称号:転生者 知恵ある者 前世の知識 多趣味
神獣へ歩みし者
ふんふん特に変化は....神獣へ歩みし者!?
おかしいでしょ!?転生してまだ初日だよ!?どういう過密スケジュール組めばこうなるの!?
「なんでしょう...この称号...?」
「神獣へ歩みし者。それはこの世界の秩序を守る4種族の存在の内一つ、神獣になる資格を持つ者の事を指します。」
「そしてキジコよ。どういうわけかお前はその資格を持つ者へ選ばれた。」
なぁぁぁんだってぇぇぇぇぇぇぇ!?!?
「転生してまだ初日だっていう子にすごい残酷な運命だよ、世の中。」
いや全くもってそうです!!
こんな展開、本にしても急展開すぎてクソストーリーだよクソ!!
趣味とお昼寝溢れるスローライフはこの地域ないんですか!?
「この称号持つ子って、すごい狙われるのよね。人族じゃ神の使いだとかなんとかで連れて行こうとする奴いるし、稀にいる同じ資格持つ奴にはライバル減らしに狙うのがいるし。」
「さらば....スローライフ... (´・ω...:.;::..サラサラ」
「わー!!待って待ってキジコちゃん灰にならないで!そうならないために私達があなたを育ててあげるの!」
「...いいのですか?私なんかのために..。」
「いいのよ、私みたいに念話使える魔物自体もう少ないし賑やかになると嬉しいのよ。」
やっぱ念話使える魔物とかは少ないのか...。
ん?もう少ない...?それって...、
「..前はもっといたのですか?」
「そうだよキジコ、僕たちみたいな魔物は時代を重ねるにつれて数が減っているんだ。とても急な話だけど、この森にいてくれると嬉しいかな。」
マウリ達の目が少し暗くなっていた。
....色々わからない所もあるけどまとめれば今のように仲良く話せる魔物、同族が減ってるから大切にしているって感じだよね。レーダーでなんとなく感じる、寂しさの混じる声だ。
何があったかは知らなけど昔はもっと沢山いたんだろう、笑顔で話せるかけがえのない仲間が。
私も似た所があるからわかる。
前世で勤めていた会社は忙しい時は死ぬほど忙しい。仲が良い上司や同僚、後輩揃って死ぬほど働いた事が何度もあった。
でも辞めたいと思わなかった。
給料が高いから?違う。
社内環境がいいから?違う。
働きがいがあるから?違う。
違う、違う、違う。
私が働き続けたのは居場所があったから。
別に他の所ではいじめられてはいない、むしろご近所付き合いや家族付き合いはよかった方だ。
私はただ、長く一緒にいた人達とさよならするのが嫌だった。ただそれだけ。
会社のみんなは仕事の忙しさとは反対に仲が良かった。
若い頃私に仕事のあれこれ叩き込んでくれた古参の先輩型が退職するときはいつも悲しく複雑な気持ちだった。
特に日菜ちゃんは妹の様に私と仕事を頑張った仲だった。そして私が死んでしまいあの子を泣かせた。
かけがえのない仲間が消えていくのは誰だって悲しい。それはどの時代どの世界でも、私は今痛感した。
ヴァルケオ達は強い。でもどうにもならない事だってある。
なら私が出来ることは、
「わかりました、ここで暮らしたいです。弱い力で夢掲げても結局は無力ですから。」
素直に提案を受け入れた。
今の私は弱い。大好きな趣味を好きな時間にすることさえ出来ないほど貧弱。
ならば彼らにこの世界の知識を得る事や十分な強さにまでまずは鍛えさせてもらおう。
あえて最大の目的を掲げるなら、多趣味な私へ戻ること。
そして日菜ちゃんとの約束、十分な休みを取れるスローライフを手に入れる。
「決まりだね。それじゃキジコ、誰の加護を得たい?」
「へ?加護?」
「え?」
「え?」
「...キジコ、もしかして前世とかで加護とか受けてなかったのか?」
「前世でそんな非現実的なのないよ?」
「え?」
「だったら...キジコちゃん、魔法やスキルとか何使えたの?」
「存在しないですそんなもの。」
「「「え?」」」
「私がいた世界は魔法も加護とかそんなものありませんよ。あったのは長い人類歴史の知恵と技術と科学力の塊なんですけど..。」
「なん....だと...。」
そうきたか。世界的な根本的知識が違えば異世界へのイメージも違うわな。
私のいた世界、それも日本はアニメ漫画小説と言った創作文化の塊。
それゆえ異世界との大きな違いは少しは把握出来る。文化万歳。
しかしこちらは違う。
現時点じゃこの世界では、異世界や架空への文化や知識が浅く感じる。まだ確認出来ていない時点じゃ言い切る事は出来ないが、ヴァルケオ達は魔法のない世界なんて考えられない様子だった。
それだけこちらの世界と前世の世界の根本的知識が違うのかな。
「...よく生きていけたわねキジコちゃん。」
「そりゃ法律とかその辺しっかりあったので。」
「キジコがいた世界とはそこまで違うものなのか...。」
「魔法の有無でそこまで反応するんですね..。」
「そりゃそうだよ!この世界はスキルや魔法あってこその文化だよ!キジコの世界だってその科学技術がなきゃ生きていけないでしょ!?」
「いや、そういうのなくても生きていける人普通にいるよ(田舎の超人とかアウトドアサバイバル人とか)。」
「ええ!?」
「...キジコの世界はどうやら本当に人々に多くの技術があるのだな...。」
え、そこまで私のいた世界褒められるものなの?なんか照れるな...。
「アタシ達の、この世界は魔法やスキルに依存気味でね、魔力なしの技術で生きていくのは所によっちゃ自殺行為なのよ。」
「マジか...。」
そんな怖い世界なの!?
神様め、なんて所に転生させやがった。
「そういえば加護ってなんですか?」
「加護ってのはね、下位の者が上位の者から与えられるスキルでできたお守りみたいなものよ。」
「与える側によって効果が違うのが注意点だね。ちなみに僕は暗夜完全把握。君の夜目以上に夜の世界を見通せるよ。」
「アタシは時間把握。どこにいても何時なのかがわかるの。遠い土地の時差はわからないけど。」
「そして我は生体感知。そなたの周囲感知を魔物や人間などに重点を置いた加護だ。」
正直これは悩む。
でも今伸ばすならこの体と合う効果が良い。
ならば、
「ヴァルケオさんの加護でお願いします。」
「わかった。」
その瞬間私の体が光った。
よく見たら私の尻尾に若干銀色が混じった。
加護の証かな。
「とりあえずこの世界で学ぶ事は山ほどあるみたいなので、その..色々お願いします...。」
「ああ、新しい仲間として歓迎するよ。」
こうして私に早速、頼れる先輩ができた。