第53話 趣味vs悪趣味 中編
『いいか、作戦はこうだ。』
俺様・・・前衛、近接
キジコ・・・中衛、遠距離
ミーシャ・・・後衛、支援
『今のままじゃそのミルカーナってヤツは助けらんねぇ。ヤツは今色々不安定な状態で、ある程度弱らせてからじゃねぇと[助ける魔法]が使えない。』
「わかった...それで行こう。」
「ア゛....!!!」
「...!来ます!!」
キジコです。ミーシャとやたら闘気ある妙な邪精霊の加勢が入り、ディストルが第二形態になったりと忙しい状況です。
『どらあっ!!』
「...!!」
邪精霊とディストルの脚が激突、金属でも仕込んでるかのような硬い衝突音がした。どれだけ鍛えりゃあんな音鳴るってんだよ。
というか体格が小さくなったことでディストルは素早い動きと物理的攻撃手段がより可能となっており、接近戦に向かない以上邪精霊に前衛を任せた方が良いだろう。
ミーシャは私と邪精霊に身体強化魔法をかけている。精霊之祝福だと邪精霊が大ダメージを喰らうのでこちらにしたのだ。
そして私は隙を狙ったり援護で射撃だ。使用するスキルはとりあえず魔法矢。広い範囲を使う以上ペネトレーザだと仲間にまで貫きかけないのでこちらを使用する。
だがこのままでは威力が低い。...あのスキルを試すか..?
「ア゛ァ!!」
『チィッ、だりゃあ!!』
素手同士拳脚で戦う両者はバトル漫画で見るような激しい戦いをしている。
『はあっ!!』
「ア゛!?」
手で防がれたが邪精霊のアッパーが入る、今だ..魔法矢!!
光の矢が5本、ディストルの背中に命中する。
ズズズ....
「ア...ア゛..!」
『うお!?やはり再生持ちか...。』
「でもダメージは蓄積するから続けて攻撃お願い!!」
ディストルは再び邪精霊を攻める。その猛攻に対抗する邪精霊。
「ガア゛!!」
『ッ!!その技じゃ威力が低い、他に無いか!?』
もうその答えが来たか。
あー...覚悟決めよう、発動しますかな..意識を集中..。
「統合スキル:魔砲、発動!!」
魔砲...私、キジコが趣味で読んでた漫画の技を再現しようと努力した結果得たスキルが統合したスキル。これによりスキルはより円滑に発動できるのだが、今までキジコはそのままスキルを単体で使用していた。
それはこのスキルは制御が難しいからだ。円滑に発動できるというのはスキルを強く意識しなくとも少しの意思ですぐ撃てるというのが正体であり、下手に火力の高い技を意識すれば暴発して仲間も危険な目に合わせかねない。
だから今までスキルを単体で使っていたんだが...流石に火力の事もある。どうせならさっきから使っておけば良かったが今こそ使うべきだ。
「魔力チャージ...いくぞ、邪精霊一旦ひいて!!」
『!?..どうした!』
邪精霊が下がったその瞬間、15発のペネトレーザがディストルを貫き、貫いた部位が...爆発した。
『!?』
「一旦休んでいて。」
次にキジコの周りに50もある魔法矢が現れる、そしてレーザーのような速度で雨のようにディストルへ襲う。魔力の矢は発射した直後にまたチャージされ発射準備に入る。
「ア゛ア゛ア゛ーー!!」
『よし...効いてるぞ!!』
「待ってください!何かきます!!」
ディストルは両手両指をこちらに向ける。すると指からシャワーのようにレーザーが襲いかかる。
「逃げてキジコ様!!!」
「うおお!?」
地面はレーザーで細切れになっており、被弾していたら大変なことになっていた...!
「一旦吹っ飛んでろ!はあ!!」
私は直後に強めの魔砲撃で反撃、ディストルは後ろへ吹っ飛んでいった。
「一度回復します、治療!!」
その隙を狙い一度建物の影に隠れ、体勢を立て直す。
『...他のやつは無いか確かに聞いたが、今の威力はなんだ...?』
「普段は危なくて使ってないスキル。」
『そ...そうか。』
「おーい、大丈夫かー!!」
この声はゼオか..!
「おーいこっち!!」
「...!いた、みんな!!」
ようやくゼオ達と合流した。いやーお久しぶりです数時間ぶりですー...なんて言ってる場合じゃない。作戦内容を伝え、行動を開始。
邪精霊、ケイ、アリア、スーロッタ...前衛
キジコ、ゼオ...中衛
ミーシャ...後衛
...ん?ゼオ君中衛...?まいいや。
さて、体勢は立て直し皆でディストルの元へ現れる。ディストルは私達を見ると再び魔力を込め、襲いかかってきた。
「精霊さん...力を貸して!全体強化魔法、アルティマオーラ!!」
(体力魔力、攻撃防御素早さなど様々なステータスが伸びる。)
まず真っ先にケイと邪精霊が飛び出す。
「行くっすよ!!砕鋼拳!!」
『くらいやがれええ!!』
2人がディストルに向かいパンチを繰り出す。軌道がわかりやすかったのか防がれる。だが当然これで終わらない。
「疾風降竜斬!!」
「ガッ!?」
アリアが背後から大技を仕掛ける。先程2人の攻撃で意識を逸らしたのだ。だが...
「何よこの髪の毛...!?ミルカーナさんこんな硬い毛だった!?」
「アリア離脱しろ!!」
「了解!」
先程棘状の髪の毛で襲ってきたというだけあって、衝撃によるダメージは与えられたものの刃は届かなかった。
これはどうするかと私が考えていると、ゼオ君が剣に魔力を込める。
「魔法整形、砲撃。」
え?ちょ、今なんて言った?ブラスト...?
するとゼオの剣が二股フォーク状に形状変化し、その間には高い魔力が溜まっている。
てかゼオ君いつの間にこんな器用な事出来るようになったの!?
「その顔..そりゃ驚きますよね、一度キジコ様のような技をやってみたかったので意識してみました!」
は!?...もしかしてこの子天才じゃね?
「標準よし、行くぜ魔力弾!!」
「ア゛!?」
「ゲ、ちょっとずれたかな...まだまだ練習しなきゃ..。」
...ディストルの反応見る限り今の技は私の魔砲撃と同様ノックバックというか衝撃が強いようだ。あれ連続で撃てるようになったらヒットアンドアウェイ戦法出来るじゃん。
「...ニゲ...テ....アア゛アア゛...!!」
「!!お母さん!?」
『ダメだミーシャ!!まだ化け物自体の本能が強い!..だが確実に事は進んでいる筈だ、だから油断しないで!』
『....んあ?』
ミルカーナさんの意思が一瞬だが再び表に出た。こちらの攻撃はちゃんと効いている、気を引き締めよう。
すると邪精霊が後退し私に話しかける、
『...予定変更だ。おい、一番の大技の準備をしろ。』
「ん?」
『助かる可能性のやばくなってきた。この作戦はタイミングが重要だ、俺の合図に合わせて叩き込める準備をしてくれ。』
「...わかった。」
『どういう事だ邪精霊!?まだ不安定なんだぞ!?』
『...肉体がもうもたねぇんだ、あの姿になってから魔力が少しずつだが暴走し始めている。ミルカーナの魂の形とロティアートが組み込んだ数多くの生物情報に拒否反応が出ている。最初ミーシャを娘と気づいて動揺していたのが証拠だ。』
『おいちょっと待て、...だとすれば、もってあとどれくらいだ...?』
『...魔力サイクルというか暴走加速度にもよるが最も安全なのはもって20分。』
『...!!』
『...俺は目的あってミルカーナってやつを救う予定だって言うのに...ホント、とんだ事件に突っ込んじまったなぁ。』
邪精霊はどこか自分の行動に呆れていた。
「ねぇ、そもそもミルカーナさんはどうやって助けるの?」
『そこのレリィって精霊がミルカーナに加護をかけていたろ。加護は魂も保護の対象内だ、化け物自体が弱りミルカーナの魂が表層化したところでレリィの加護の力を最大限にし取り出す。これらは精霊の力と膨大な魔力が必要だ。』
「魂...やはり肉体はダメか。」
『改造されている時点でアウトだ、魂が無事だったのが本当に奇跡だ。』
「よし、なら作戦...開始しようか。」
「そこの邪精霊さん話終わったなら交代いいっすかぁ!?」
『ああ任せろ、ケケッ。』
さぁ、仕上げといこうか!!
おまけ:ゼオは基本をおさえた戦闘スタイルですがこれはゲトー副総隊長に才能見込まれ叩き込まれたものであり、結果彼はキジコとの旅で何気にかなり成長しました。




