第51話 帝王vs邪精霊
帝王視点
『お前...相当強いな..?面白ぇ、殺しがいがありそうだ。』
我は21代目サジェス帝国現帝王、ハルバンス=サジェス。
キジコ、ゲトーらと3手に分かれ現在、邪精霊を相手している。
ロティアートはこの邪精霊をかなり強化しているらしく、我としてもそうすぐに倒せる相手ではないかも知れない。
邪精霊は仮面や丈夫そうなコートを纏った黒い人型。下手に異形と戦うよりはまだマシだな。
「ふん、生憎簡単に殺される様な生き方はしていない。貴様こそ骨のあるヤツだといいんだがな!」
『へ、なら安心しろ。俺は強えからなあっ!!』
邪精霊は魔力のレーザーで横薙ぎをする。避けるのは簡単だったが、レーザーが通った跡は石造の地面が抉れ焦げていた。
どうやら火力は凄まじい様だな。
「ふんっ!!」
『ケッ!やるじゃねぇか!』
ハルバードを振り、一定の距離を保ち邪精霊を攻める。
『ならこれはどうだ!マジックアロー!!』
60本くらいの魔力の矢が襲いかかる。一本一本の威力はそこまで大したことはないが数が多い!
「ぬあああ!!」
『どうした?頑張って防いでるようだが何発かくらってるじゃねぇか!ヒャハハ!』
「...。」
光の矢は辺りに散らばり、消えた。
「...思ったよりやる気の出ない戦いだな。魔力量の割にはその程度なのか!」
『強がりか?いいぜ乗ってやるよ、後悔すんじゃねぇぜ!!』
邪精霊は武術で挑んできた。その動きは素早く、無駄がない。これなら面白そうだな!
「はああ!!」
『だりゃあああ!!』
一定の範囲内には近づかせない帝王、さまざまな角度で確実に狙う邪精霊。
両者の動きは非常に早く、高い技術を感じられる。下手に加勢をすれば足枷になるだけと言えるほど。
達人級の戦闘をするお互いはまだ決め手がない。このまま続けてもジリ貧でどちらかが負ける。
帝王は隙を狙い槍に魔力を込める。
「セレネスラッシュ!!」
『ぬお!?危ねぇな!!』
光の斬撃が邪精霊を襲った。
『...手が掠ったか。』
「惜しいな、腹部を狙ったつもりだったがな。」
『次はそうはいかねえぞ!!』
ふむ、そろそろ使い始めるか。
「纏・光陰龍!!」
帝王に青白い魔法陣が現れ、そこには龍の様な物が書かれている。
『なんだ?それ。』
「纏・光陰龍、古き時代より代々帝王に伝承されし力だ。国の民を守るためいざ参る!!」
『面白え!!魔身強化ァ!!』
青白い光と黒紫のオーラがぶつかり合う。瞬きするたびその閃光は激しい音を立て辺りに衝撃波を与える。
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「!、あっちから誰か戦っている音がするっすよ!!」
「わかった、向かおう!!」
ようやく町の中心へたどり着いたゼオ達、今起きている状況確認のため行動している。
「...お?あそこで戦っているのは...あ!?」
「て...帝王様ぁ!?」
ーーーーーーーーーー
「!、ゼオ達か!!今は取り込み中だ!!」
『焦るな、あいつらを人質も不意打ちもしねぇよ。俺様は今この戦いが楽しいんだからな。』
「ほう..邪精霊がその様な事を言うとは意外だな。」
『よくわからねぇんだけどよ、この体になってから誰かと戦うのが楽しくてよぉ...。今も疼くんだわ...。』
本来邪精霊はそういった細かい感情までは持たない。どう言う事だ...いや、確かロティアートはこの邪精霊の肉体を特別製の物だとかなんとか言っていた。
おそらくあの肉体、何かしら戦闘意欲を与えるスキルか情報を組み込まれているのだろう。
だがあの邪精霊そのものも戦闘技術がかなり高い、とっておきに持ってこいだな。
「ゼオ達!!決して加勢するではないぞ!」
「は..はっ!!」
『あは..はは.は..!お前...本当面白い!いつも俺が戦わされてきたのはすぐに壊れる人形ばかりだった!!でもお前は違う、全く壊れる気がしねぇ。そうだよ...こう言うやつと俺は戦いたかったんだ!!!』
邪精霊に激しく燃え上がる様な闘気が湧き出る。あの様子だと召喚された後からずっと満足のある生き方が出来ていなかった様だな。
ロティアートめ、自分の興味ある物以外はかなり杜撰だな。
「ならば我もその闘志に応えて見せようぞ!!」
その瞬間先程よりもさらに激しい戦闘が始まる。拳と刃がぶつかるたびにビリビリとした圧力と衝撃が走り、離れて見ているゼオ達を震え上がらせる。
「つ...強すぎるでしょ両方とも...!?」
「...あの強さは異次元だ、まさに帝王にふさわしき強さと余裕..。」
「...なんて高い技術...お互い達人の域っす。」
「確かに俺達が混ざれば足を引っ張る以外にある行動がねぇ...。」
「凄すぎます...。」
ぶつかり合うオーラはどんどん燃え上がり、激しさを増す。
「やるではないか、我もまだまだ闘志が燃え上がって仕方がないわい!」
『いいぞ..いいぞそれが[闘い]だああ!!なんて楽しいんだ!!俺は今、この時を楽しんでいる!!』
邪精霊は拳に魔力を溜め始める。
「どうやら大技撃つようだな...どれ、もう少し続けたい気持ちもあるが生憎時間をあまりかけるわけにはいかん。この一撃に全てをかける。」
帝王の魔力が爆発的に増え始める。どうやら決着が着く模様。
『テメェとの闘い...今までで一番楽しかった!礼にしては雑だが全てを込めた一撃を食らわせてやる!!』
「来い!!」
『アーダテルク・フィストオオオ!!!』
「スパークル・ルナ・ブラストオオオ!!!」
眩い光が衝突する。
轟音が響き渡る。
一番凄まじい衝撃波が一帯に渡る。
「...。」
「...そろそろ光が収まってきたか...?」
『...はは..これは...予想外だったわ。』
「ああ...全くだ。」
「...あれ..両方とも大した傷が...出来ていない...!?」
「...驚いたっす、お互いの技の威力が超互角だったっす。」
「まさか...相殺!?」
『あーあ、あれだけ魔力ぶち込んだのにこれじゃ消化不良だわ。わりーけど今日の所は終わり、また今度にしようや。』
「ああ...あの化け物をなんとかすれば明日以降の世界はあるだろうがな。」
「帝王様!!」
「おおちょうど良かった、肩を貸してくれ。」
流石にヨレヨレの帝王。
「お前ら、これを。」
「...!?これはアルティマポーション!?」
アルティマポーション:体力と魔力が大幅回復する。ゲームであって嬉しい系アイテム。
「これをそこの[闘士]に飲ませろ。」
「闘士...!?まさか、邪精霊に!?」
「!?」
『...なんのつもりだ?』
「詫びだ、お前はそのポーションですぐ回復出来るだろうが我は時間がかかる。それに消化不良でムカムカしているならあの化け物をサンドバックにすりゃあ良い。」
『...ま、いいか。もらうぜ。』
邪精霊はパシッとポーションを取り飲んだ。
『...よし。』
「向こうで戦っている奴の加勢になるといい。ヤツ..キジコもかなり才能を持っているぞ、お前の生きがいに十分な未来をな。」
『そりゃあまた面白い。ケケッ、では向かいますかなぁ。』
「待ってください!」
「ぬ?」
「...私も連れて行ってください。」
『なに?』
「ミーシャ!?危険すぎるよ!!」
「私は..お母さんを助けたいです...。理由はそれだけです。」
「...いいだろう。」
「帝王様!?」
『構わねえだろ、そいつ溢れるほど凄まじい精霊力持ってるじゃねぇか。精霊族の力なら希望はあるしな。』
「...!!」
『その辺お前らの方がよく知っているのじゃないか?精霊さん達よぉ。』
『...ああ、そうだね。』
『邪精霊!!アッチらの邪魔はしないでよね!!』
『やかましい精霊さんだなぁ、ははは。』
『ムキー!!』
邪精霊は妙に毒でも抜けたかのような明るさがある。
「...では、向かいましょう。お母さん、待っててね。私が...助けるから!」
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「とりあえず先にロティアートを縛ったらどうだお主ら。」
ミーシャと邪精霊がキジコの元に向かった後、ゲトーと合流した。
あれ、ゲトーの戦った跡はそんな荒れてないな。(あんたらが暴れすぎなだけです)
「オ゛オ゛オ゛ーーー....。」
「不気味な声だなぁ...。」
「我々はやれる事はやった。後は皆に任せるとしよう。」
頼んだぞ、お前ら。
次回ようやくキジコ




