第49話 起動
「...大人しく従ってはくれなさそうだね。それどころかみんな、精神強度のレベル高いから洗脳も効かない。」
武器を構え始める戦闘員達、しかし全員その眼は赤く怪しく光っている。
「何してるの...部下まで洗脳なんかして。」
「ディストル様に怯えて動かないからさ。それに僕が動かした方がまだマシな戦力なんだからさ、今更だけどこうやって当然じゃない?」
「あっそ、じゃあ死ね。」
私は魔砲貫通光線を40発、ロティアートに向けて撃った。
「みんな出番だよ。」
なんとロティアートは部下を操り盾にした。部下には貫通耐性の魔法か何かがあったのか、ロティアートに貫かなかった。
「ぬおおおおおお!!」
「はあ!!」
「おおう!!?帝王様と副総隊長も僕を狙うのですか!?」
戦闘員達が二人に襲いかかる。
「ふん、甘い!!」
「気をつけよゲトー!!こいつらは城の兵と同様傷を負っても起き上がるぞ!!」
「大丈夫です。部下を斬るよりも百万倍マシですよ!!」
どうやらザコは二人に任せても良さそうだな。二人とも、とんでもない戦闘技術を見せてるし安心してロティアートを攻撃できる。
ロティアートはムッとした表示でこちらを見る。今更なんだその表情?こっちは怒りでシワだらけになりそうなんだがなああ!!!
「だりゃああ!!」
思い切り近接で挑む私。
「チッ、小さい体でうろちょろされると困るのですがねぇ...!痛撃之域!!」
赤黒い円陣が現れる。
「ぐおおおお!?」
すると近くにいた戦闘員が苦しんで倒れる。どうやら発動者以外があの円陣内に入るとダメージ受けるとかそういう奴だな。
「魔砲撃!!」
「ぐあっ!?」
ロティアートは後ろの壁にぶっ飛ぶ。
「いたた....は!?ケーブルは!?ああ..無事か..!」
「頑丈だね。まぁミルカーナさん助けるんだから下手に壊せもしないか。まぁ私自身には助ける方法は無いんだけど。」
「..重要なケーブルが...ディストル様が傷ついたらどうするんですかああああ!!!」
「!?」
ロティアートは急に激怒し、猛スピードで襲いかかって来た。まずい、5割程度加減隠密発動!!中途半端なヘイトでせめて翻弄回避だ..!
「うおあああああああ!!!」
「うお!?、危ねぇ!!」
「ディストル様にぃ...何かあったらどうするんですかああああ!?」
ロティアートはものすごい速度で私を斬ろうと剣を振る。帝王から信頼ある実力だけあって油断すれば死ぬ。
「はああ!!」ガガガガッ
「...レーザーをバリアにねえ!!小癪なんですよ!!」
しかしこの怒り様、逆鱗触れるにしても逆鱗のサイズデカ過ぎるだろ。
まぁ、仮に実力あるやつでもこんだけ技術込みで剣を振ってりゃ...
「はぁ...はぁ...!!」
「怒り任せに襲い掛かるから息切れるんじゃないの?」
早くもスタミナ切れだな。周りの構成員に魔力使ってるから思う様にも動けないのだろう。
「強撃爪!!」
「があ!?」
ロティアートは膝立ちに座り込み血を流す。
「が..ああ..!!」
「...本性を表した途端冷静さも欠片もないな、ロティアート。慈悲はない、今ここで...!」
「...!!!!悪魔之操人形オオオオオ!!!!」
「今更何を考えている、私に洗脳は....
バキッ...
「!」
「オ゛オ゛...オ゛オ゛オ゛....!!!!」
「!!!」
ガシャァッ
「オ゛オ゛オ゛...オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛...!!!」
...まぁ予想通りだがついに動かしやがった、あの化け物を...。
カプセルを割り現れた化け物。魔力が上昇し、目を開けば4つ、尻尾まで生えており、たなびく髪は金属の様な重厚感がある。
そしてカプセルの外に出るとその体には神話の女神がつけてそうな衣が巻かれる。
「ア゛..アア..。」
「おはよう...ございます..ディストル様、さぁ...アイツらを殺しましょう!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「う...うわあああああああ!!!!」
洗脳から解かれた構成員達は恐怖で逃げ出した。
「...帝王、ゲトー、いくよ。」
「そういうキジコよ、お主もまだくたばるでないぞ?」
「仮にも副総隊長だぞ、まだまだ行けますよ。」
「...では皆様...死んでください。」ピカッ
「!!」
ディストルの口からビーム砲が飛ぶ。妙にコテコテだがいざ直面してみれば危ないなこれ。さらに、
「ガア゛ア゛!!」
「!?、ぐうっ!」
「ゲトー!!」
「がはっ...ご心配なさらずに帝王様、逆にようやくまともな戦いができてウキウキしてるだけですよ。」
「強がっている場合じゃありませんよ副総隊長!」
ディストルは4つの眼で私達を見た瞬間、岩でも飛んできたかの様な強い衝撃波が襲いかかった。
「ぐあ..!」
「キジコ!がはっ!?」
そしてそのまま後ろの壁に叩きつけられた。これはまずい、思った以上にこのディストルという怪物は強い。
私はなんとか耐えながらも大きいダメージを受けてしまった。回復魔法はまだレベル低くて役に立たない、ならばこの鍛え上げた集中力を存分に使うしかない..。
「エレムス教官には無闇に使うな言われたけど今こそ使う時...全レーダースキル機能フル稼働!!」
部屋から発せられる気配や動き、感覚情報が私の頭の中に送り込まれる。こうなりゃジリ貧覚悟でもやってやるしかない!
私は覚悟を決めディストルの方へ向かう。
「言っておきますが僕もいますからね!!」
「させん!!」
ロティアートが急襲しようとするがゲトーに妨害される。
「キジコ様、帝王様!!そちらは頼みます!!」
「帝王様まで加わるのはまずいな...君、手伝ってもらうよ。」
ロティアートは懐から謎の宝石を取り出し投げる。すると宝石から光が溢れ肉体が形成されてゆく。
『...なんだ?出番か..¿』
「..!!邪精霊か..!」
「その通りです。僕が作った特別な人形に受肉しているから強いですよ。」
加勢を期待した帝王と分断されてしまった。
キジコvsディストル・ジ・オーヌ
帝王vs邪精霊
ゲトーvsロティアート
私だけ明らかに超ハードモードに挑んでるねこれ、うん。ディストルも私だけが挑むことに疑問すら感じる仕草が見える、なぜかちょっとイラッとした。
「ここじゃ狭いですね。ディストル様!!」
するとディストルから赤黒いオーラが湧き始める。一体何をする気!?
「...!!全員防御体制!!!」
「オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ーーーーーッ!!」
すると赤黒いオーラがエネルギー状になり屋根を貫く。
まずい、ここは帝国の中心地下!!!
ディストルはそのまま宙へ浮かび地上へ向かう。このままじゃ住民がやばい!!
「では皆さん、上で待っています!」
ロティアートと邪精霊も突然姿が消えた。
やられた、来た道途中からわからないぞ..!どうやって地上に戻るか...?
「急ぐぞ、我に掴まれ!!」
「へ?...
「失礼しますキジコ様!!」
ゲトーが私を抱え帝王の肩に触れる。
「飛翔スキル:魔力飛翔!!しっかり捕まっていろ!!」
すると帝王を中心に魔力のオーラというか光球が私達を包む。
その瞬間、飛んだ。
地上に向けなんと飛んだのだ。
魔力飛翔:物体移動の応用で魔力を用いて空中移動するスキル。習得はかなり難しい。
私達は時速70kmくらいで飛び、あっという間に地上へ辿り着く。帝王すげー!!
しかし地上を見渡し絶句した。
その光景を一言で言うなら、瓦礫。
先程のエネルギー砲を中心に街は崩壊しており、人々はさらに上空にいるディストルから逃げている。
まだ一定範囲以上は無事だが国中大パニックになっている。やりやがったな...!
地上に降り立つとさっき消えた不愉快な奴がいた。
「あれ、もう来たんですね。さすが帝王様。」
「...町をこんなことにするなんてなんのつもりだ?」
「言いましたよね、狭いですねって。ですからもっと広い所を用意しただけです!」
「...ロティアート貴様...!!住民に手をかけた事の罪は大きいぞ。」
『オイオイ...お前の相手は俺だ。』
「僕も副総隊長を倒しませんとね。」
「ふん、簡単に言うとは舐められたもんだな。」
ディストルは地上へ降り私を睨む。ここだと彼らを巻き込むしもう少し向こうに行こう。ディストルも私の動きを理解したのか同じ方向へ向かう。
そういやこの怪物、ロティアートの悪趣味だっけな?
私の統合スキル魔砲も、異世界に来て趣味で見ていたアニメや漫画みたいな事をしたいという努力で得たものだ。(若干偶発だったが)
なら試してやる。私の趣味とあんたの悪趣味、どっちが強いってな。
ーーーーーーーーーー
ゼオ達視点
「はぁ..はぁ..なんだ?急に倒れたぞこいつら?」
「一体何が....
ズドォォォン.....
「...!!!中心街からだ...!!」
「な...なんだこの禍々しい気配!?」
「...何?この圧力...?」
反神獣派戦闘員達を倒し中心へ向かうゼオ達。しかしその上空に現れたディストルを見て絶句する。
凄まじい強さを持つ化け物だから?そう。
禍々しい見た目だから?そうでもある。
あまりにも強い圧力だから?それでもある。
だが彼らは、[その存在を知っていたから]その姿と禍々しさに絶句した。
「う...うそ..だろ?なんで?」
「嘘...!!」
「そんな..嘘っすよね...ねえ!!?」
「...どうして..こうなった..!!」
どうして...どうしてああなっているの...!?嘘なら..嘘だと言って..
「どうしてなの...お母さん...!。」
ゲトー→帝王→キジコで進めます。orz




