第47話 手遅れ
....は!
しまった、ロティアートは!?皆んなは!?
「あ...ん...?」
「ゲトー、帝王!」
「...!!帝王様、キジコ様、ご無事ですか!?」
「ようやく起きたんだね、おはよー。」
「..ロティアート!!」
「あーあ。レギスに忍ばせた傭兵がまさかの術式の知識を持っていたなんて。それどころか些細なミスを僕がしてしまうなんて....笑える。」
ロティアート...第7番隊副隊長にして反神獣派組織ボス。
「...あんたがボスだったなんてね。」
「意外でした?」
「そりゃ意外でしょ。」
「あはは、それは失礼しました。では改めて、僕は反神獣派組織のボス、ティライターであり帝国軍第7番隊副隊長のロティアートと申します。以後お見知り置きを。」
「そういや気になってたんだけど、あんたの部下はどうやって私を追跡してたの?」
「[神域]といえばわかりますかね?」」
「な!?」
「...あんたの方がそれ持ってたんかい。」
[神域]の効果の応用:神の領域に関わる存在の位置の把握可能。
「まさか...お前も秩序之天秤だったのか。ならば私からも聞きたいことがあるな。[調律]はいつも[神域]に反応があった。そして真実が見えるまで隠していたが..少し遅かったか。」
「はい、遅かったですね。帝王様。」
「レギスの森の謎の力....組織構成員を森に忍ばせた辺り、何か知っているな?」
「もっちろんです!...邪獣...という言葉に覚えはありませんか?」
「「!!」」
「邪獣....?」
「遥か昔、まだ魔物の方が多かった頃のこの世界を絶望と恐怖に染めた災厄の魔物。
その牙は如何なる物も食いちぎり、爪は全てを引き裂き、そのたなびく毛は金属のような強度を持ち触れる者を一瞬で血に染め、その存在は絶望なり。」
そんな化け物がいたのかこの世界...。そんな時代に転生しなくてよかった..。だがその邪獣がレギスの森となんの関係があるのだ?
「...まさか森に邪獣の遺体が埋められているとでもいうのか?それはあり得ん、邪獣は遥か昔の英雄が消滅させたのだぞ!?」
「はい、その通りでございます。しかし奴は英雄と戦っている最中、傷を負い牙を損傷しました。その破片が...。」
「...森の謎の力の正体か。」
そういう事か...あれ、だとしたら..
「なぜそれを狙っているの?」
「ようやくその言葉が出ましたか、ではここからは実際に見てもらった方がよろしいでしょう。みんなー、彼らを案内するから手伝ってくれない?」
部屋のどこからか、フードローブ姿の反神獣派構成員が集まってきて、私達を拘束したままロティアートについていった。
ロティアートの進んでいる所は結局地下水路ではある。しかし、進む度に禍々しい力が増している。
なんというか...ドス黒い、この世にあってはならない何かとも言えるような何か恐ろしい力。尻尾と耳が下がり、肉球から汗が出て、体の毛が立ち震えが止まらない...。
「ティライター様、この先に何があるのでしょうか...?」
「そういえば君達にも見せた事なかったね。この先にはこの世界を浄化する事ができる高貴な存在がね。」
「おお、なんと!」
この世界の浄化...?高貴な存在?こんな所にか?一体何を...。
それから暗い道をしばらく歩き、20分程。
「...そろそろ帝国の中心部辺りだな。」
「はい、...まさか中心部の地下にその恐ろしいものがあるのでしょうか..?」
「まぁ正解だね。」
(補助スキル:精神強度のレベルが(10)になりました。)
(周囲に精神強度(10)でも抑えれない圧力を確認、さらなる強化を実行。)
(実行失敗。称号によるバットステータス効果により、スキルの極地点への到達不可。)
(代用措置としてスキル:恐怖耐性(3)を習得しました。)
あれ、今のアナウンスはなんだ?バットステータス?代用?...今はよくわからないけど急に体が楽になった。まだちょっと怖いけど。
「さ、着きましたよ。」
部屋の中は重厚な音で満たされている。
時々光が見える。
ロティアートに案内された所は真っ暗な部屋。私は肉体関係上見えはするが...あ?
「おいロティアート....なんだよ...あれ..!?」
「おお、そういえばキジコ様は猫だからちょっと灯りあれば見えますね!」
「あれはなんだと聞いているんだ!!!」
「なんだ...このオーラ!?」
「まずい、あれは非常にまずい..!」
「おやおや、見えなくても二人とも何か察したようですね。でも不味くないですよ、「このお方]は救世主なのですから。」
あ...ああ...なんだよあれ...
なんというか...墨汁や墨の方が何百倍も明るく見えるほどドス黒く感じるこのオーラ、
ヴァルケオの比じゃないこの威圧感...
(スキル:威圧耐性のレベルが(10)になりました。)
(スキル:威圧耐性(10)でも抑えきれない威圧を確認、極地点スキルへ実行致します。)
(実行失敗。称号によるバットステータス効果により、スキルの極地点への到達不可。)
「ティライター様...申し訳ありません、我らには...!」
「ああ、君達弱いもんね。じゃあ灯りつけようか。」
パッ
「......!?」
そこにあったのは、
謎の液体の入った巨大なカプセル
大小様々なケーブル
明らかに時代に合わない機械設備
カプセルの中には、
5mもあるように見える図体
不気味な黒紫の肌
液体の中でゆらゆら動く長い髪
うずくまっているが体型からして女性
そして、長い耳。
まさか....ああ...そんなまさか...!!!
「ティ..ティライター様...これは!?」
恐怖で震える構成員。
「ロティアート...お前..あれはなんだ!?」
ロティアートは何事も無いかのように笑顔でいる。
「作りました!」
「...は?」
「だーかーらー、作ったんですよ!この僕の自信作にして最高傑作!!」
あ...?
「すごいでしょ!?この凄まじい力!!美しい姿ぁ!!名付けて[ディストル・ジ・オーヌ]様ぁ!!」
「作った....?ざけるな...ふざけなよ!」
「どしました?」
「この怪物....素体があるのじゃないか...?[ダークエルフの女性]のな!!!!」
「!!」
「おや?これは素晴らしい、まさかすぐ気づくなんて...キジコ様も色々才能あるのじゃないですか?!」
「黙れ!!!」
なんで...なんでこうなる!?
([生きてはいる、ギリギリ加護の反応がある])
(『詳しい居場所まではわからないが、大まかなところであればわかる、帝国の中心だ。』)
「ミルカーナ...そのダークエルフの女性の名前は...ミルカーナなんじゃないか!?」
「おお!!名前も知っていたなんて!!当ったりです!!」
「..ロティアート貴様ぁ!!その女性は...まさか!!」
「ゲトー副総隊長も大昔会ったことありましたねぇ。屋敷からこっそり脱走し、ハーフエルフの家にいたヴェアートお嬢様のお迎えの時に!」
ああ、こいつは許してはいけない
絶対に許さない
ミーシャになんて言えばいいのだろう
もう...遅かったなんて
ミルカーナ….ダークエルフの女性であり、
探していたミーシャの母親だ




