第45話 動乱の始まり
「ぜぇ...ぜぇ...なんで...魔物が...。」
「ど..どうやら前に魔物がここに侵入したらしく、増殖し今に至る...感じです。」
キジコです。
現在帝国地下水路にて、また戦いをしています。てかこういうの多くない?
地下にこんなヤモリがいるなんて地上は大丈夫なのか...。
「この魔物、というより生物は夜行性だから暗い所は身体的特徴からして、向こうに部があるから気をつけないとね...。」
「定期的に討伐が行われるが、未だ殲滅には至っていない。」
帝国軍も苦労しているんだな...。
「ずっと戦ってるわけにはいかないね、とりあえず進も...
「!、危ない!!」
「へ?」
すると通路の角からヤモリ魔物が現れ私を狙う。
まずい!しくじった!!
「電撃弾!!」
「ギュゥッ!?」
「...!..危なかった..すみません。」
「奴らは狡猾に獲物を狙います。...気づくのが遅かった我々にも負はある。」
ダメだ、歩いても石壁灯り石壁灯り...感覚が色々おかしくなってしまう...。早くゴールに辿り着かないかな....。
「それにしてもロティアート、今のをよく気がついたな。まだ魔物は姿が見えていなかったはずなのに。」
「はい、前に調査をした際ヤツらは先程と似た行動をしたので、もしやと。」
「調査?今この辺りは作戦の練り直しで討伐エリア外のはずだったが?」
「調査情報が少なかったので少し調べていました。」
「そうか、ご苦労だった。」
迷宮じみた地下水路をさらに歩き十数分、流石に暗くて狭い道だから少し疲労感も来る。
道なり道を進んでもまた似たような道。
まだ着かないのかな...そう思っていた時だ。
ゲトーとロティアートは急に立ち止まり石壁を見る。
するとゲトーは石壁に手を当て、何かを詠唱し始める。同時に壁に魔法陣が現れ、カチカチと形が少しずつ変わる。
...まさか。
ゴゴゴゴゴ....
「さぁ、あと少しです。」
やはり、隠し扉!
すご...子供の時こういう秘密基地作りたかったの覚えてるわ..。
扉が閉まりその先にあったのは先程とは明らかに材質が異なる道と階段。
「城につながる道です。事実上我々は帝国城内に入りました。」
おお!ようやく着いたんだ...。よし、再び気を引き締めよう。
私達は階段を登り、通路を進む。
その道中は特にトラブルもなく、無事に...
「あれ、この扉固いな...どこか錆びているのか..?」
...いや少しは何かありました。
ーーーーーーーーーー
帝国、とある広場にて
【...ということだ。皆、急がねばならない。】
旅を終えキジコと別れたゼオ達。
しかし別れた直後、魔勇者ヴェアートからとんでもない情報が入った。
この情報は他の者に聞こえると都合が悪く、彼らはあまり人のいない帝国の広場にてヴェアートからの通信を聞いていた。
この通信を聞いた彼らはヴェアートと同様驚愕した。
「そんな...あの人が..!?」
「嘘ではないのですか!?」
【残念ながら本当だ。部下のスキル[正直者]に偽りはない。】
「...。」
彼らは沈黙する。
反神獣派組織のトップ、つまりボスは彼ら自身もよく知る人物だったからだ。
「...早くキジコ様を助けないと!」
「ダメだ、今帝国城内は限られた者のみしか入れず、周りも厳戒態勢になっている。」
【...アタ..私から追加の警備兵として手回しをしておく。すぐ城に向かってくれ、危険なのはキジコ様だけではないかもしれない!】
「了解しました!」
彼らは急いで城に向かおうとした..その時、
ザッザッザッ....
「...いっぱい現れて、帝国内でもお構いなしってか?」
「生憎今キジちゃんはいないっすよ。」
「ボスからの命令、今からお前らも抹殺対象だ。世界のために消えろ。」
ーーーーーーーーーー
ガガガガ.....!
「ふぅ、やっと開いた..。後で錆落としをしておかないとな...。」
「なんで錆びちゃってたんですかね..緊急避難通路は定期的に点検していたのに。」
「湿気か何かでやられたか..?ここ窓ないから。」
ここはどこかの倉庫内、帝国城内のどの辺りかはわからない。扉は資材で隠れており、外からだと見えづらい。
「どこなのでしょう、ここ。」
「ここは副総隊長階級の公務室の隣にある倉庫だ。あの扉の先にその部屋に出れる。」
倉庫を出ると立派な個人公務室というか、漫画アニメとかで偉い人がペーパー仕事とかしているアレというか部屋。
見方を変えりゃセーブポイントにも見えなくもない。
「えーと...特に急を要する書類は来ていないな。よし、帝王様の元へ向かいましょう。」
そして私達は部屋を出た。
城の内装は思ってた以上にしっかりしていて、窓もガラス張り。
...というか思えばガラス、旅の道中いろんな所に普通にあったな...。前世ではよく見る物だったからつい意識していなかった。
城内は厳重体制で警備しているそうだから基本的に安心らしい。そのため私達は普通に歩いて帝王のいる部屋へ向かった。
すると...
「ん?なんだあれ。」
「飲料水タンクです。...少し休憩しますか?」
「まぁ確かにちょっと疲れたし休憩します。」
驚いた、ウォーターサーバーのような物まであるとは。喉乾いてたから助かる。
「どうぞ。」
おお...紙コップまで!
えーと、飲食鑑定でも毒の反応なし。
というわけで私達は一度休憩をする事にした。
「ほぇ...疲れるな。それ故にただの水でも美味しく感じる。」
「...結構人間臭い事言うんですね。」
「はは、色々教えられてたからね。」
タッタッタ...
「ん?誰か来るぞ?」
「おそらく見回り兵だろう。」
「...!見つけたぞー!!猫の魔物だー!!」
「「「!?」」」
2人の警備兵が槍を向け突然襲いかかってきた。
「危ない!!」
ゲトーとロティアートが剣を抜き兵を止める。
「お前らどうした!?キジコ様は重要客と通達しただろ!!」
「魔物を殺せ...神獣を殺せ....!!」
「どうした!?おい!!」
「ゲトーさん!!そいつ..目の色が!」
「!!」
その警備兵は魔人族特有の黒白が逆の目だが、白の部分が怪しい赤色になっている。
「...!?洗脳..スキルだと...!?」
「何ですって!?」
「ええ!?そう言うスキルあるの!?」
マジか!?城の中の安全じゃねぇじゃん!!
ダッダッダッ...!
やばい...後ろからも...!
...いや待て、あの兵..目の色普通だ。
「あれは..味方..?」
「...!!ダメだ、洗脳兵だ!!」
ロティアートが後ろに周るとその途端、向かってきた兵の目の色が赤く、怪しく光り始めた。
戦いながら進んではいるが突如現れた洗脳兵は増えるばかり。
キリがない...どうするか...。
「...ダメだ..倒しても目の色が戻らねぇ...それどころかまだ起き上がってくる..!お前ら...俺がわからないのか!!」
「副総隊長、キジコ様、こっちです早く!!」
「!」
休憩したばかりなのにとりあえず全力で逃げた。
「はぁ..はぁ...一体...何が起こったんだ!?」
「わかりません...これも..反神獣派の仕業だというのか...!?」
「ばかな...城内に!?」
一体どこから湧いてきたって言うんだ...。
平穏は地平線の向こうどころか世界旅行でもしているのか?
「...今の状況だと帝王の身も危ない、早く行こう。」
「ああ...。」
「...副総隊長..彼らを救うには今は...。」
「わかっている..。」
ゲトーは先頭に立ち、案内すると共に走り出す。
しかし..
「だりゃあああ!!」
「!...」
怪しい目を光らせ、どこか虚な兵士達はどんどん現れる。倒しても起き上がる、血を流しても起き上がる。
ゲトーは辛いのだ。彼にとって大切な部下達を止めるために倒さなくてはいけないのだから。
彼は部下を非常に大切に思う人間である。それ故彼らは覚悟があってもゲトーは死ぬ姿を見たくない。だから少しでも生存率を上げるため熱血気味になる。
そして今、洗脳されているとはいえ自身の手で彼らを、斬らなくてはいけないのだから。
「...目を覚ませお前らああああああああああ!!」
悲痛の声は操り人形には届かない。




