第43話 ラストスパート
「キジコ大丈夫かなぁ。」
「もうすぐゲトー副総隊長と合流します。ようやくではありますが...帝国に到着致します。」
ここはレギスの森の神域とも言える場所。
レギスの森の戦争が現在一旦休戦中であり、その隙に魔勇者ヴェアートと聖勇者シルトは神域にて守護獣達と話し合っていた。
「キジコちゃん、帰ってくる頃にはどれほど強くなっているのかな〜?」
「エレムスが興味を持ち予想してた以上に鍛え上げちゃったんだ。並の強い魔物を余裕で倒せる強さになってはいるね。」
ドゥークの森の守護獣であり友であるエレムスから報告を受けたヴァルケオ。
流石のエレムスの特訓魂に巻き込まれたキジコが気の毒に思えた。
「それで、戦争は再びいつ始まる予定なの?」
「我々王国軍はまだ再戦の通達は来ていません。」
「同じく、帝国もです。」
「...物資の供給はありますが...疲弊的にもそろそろ兵ももってあと1週間もありません。せめて今、撤退通達があれば...。」
いくら食料などの物資があっても兵達も長く戦える気力は持っていない。シルトとヴェアートはこの戦争の終了が早く通達されないかを待っている。
「...本来はキジコ様が帝王にお願いする予定の一つにありましたが、一か八か...帝王に現状を伝え、撤退できないかお願いしてみます。」
「...そうか。」
「私も、一度王にこの現状を伝えます。ヴェアート、とりあえず伝える内容についてだが....。」
そのまま二人は離れた所で策を練っている。自国と部下とこの森にこれ以上被害が出ないように。
「...上手くいくといいね。」
「二人とも部下を大切に思う人だからね、もう現状を受け入れがたいのは当然なんだと僕は思うよ。」
「もし、撤退が決まったらキジコに伝えておくよ。」
何がともあれ無事でいろよ、キジコ。
ーーーーーーーーーー
「そりゃああっ!!」
「ギャウッ!?」
キジコです。
とうとう帝国が見える所まで来ました。しかし現在また狼魔物の群の襲撃に遭っています。
目的地直前に現れるタイプのウザったいエンカウントです。
「強撃爪!!」
「ハードスラッシュ!!」
「はぁ...はぁ..合流地点まであと少しだって言うのに...!」
「副総隊長に連絡しましたが...到着までに時間がかかるようです..!合流地点自体はまだ先ですので...!」
「みんな頑張れ!ドゥークの森と違って逃げても追いかけてくるぞ、コイツらは!」
「ガルルル.....。」
かなりまずい状況である、ようやく帝国に着く直前での大量襲撃。疲弊してるとこ狙われるのはいくら強くてもかなり都合が悪い。
なんとしても退けないと...!
「まずいな、人の出入りの少ない東を選んだ故に冒険者も周りにいない!裏目に出てしまった...。」
しかし言い換えれば下手な被害を増やさないとも言えるがやられてしまえば元も子もない。
仕方ない、魔力ケチってる場合じゃない!
「魔砲貫通光線!!』
「青之火炎!!」
「ギャオゥ!?」
「ガルルルル....!!」
「どうなってんだ!?狼の遺体は消えるしどんどん現れるし!」
「カカカ...!どうかな、我の自慢の召喚獣は?」
「!!」
森から黒いローブの男が現れた。
「何もんだアンタ!?...いや反神獣派の戦闘員か!」
「カカカ、いかにも!スクルゴのヤツはしくじったようだが私はそうもいかん!
我が名はウォルーポ、部下の失態を拭うため貴様を殺す!」
なぁ!?あの偽物野郎の上司か!この貫禄からして結構強いぞあの男。しかもこの様子...まだまだ余裕そうじゃん...!
「さぁ行けえ!オオカミ達よ!!」
「アオーーーーン!!!」
「みんな、来るぞ!!」
大量のオオカミは私達に向かって牙を剥けやって来る。こちらも迎撃しなくては!
「おっしゃあ!魔法整形!」
「!?」
「はあ!?ゼオお前いつのまにそのスキルを!?」
「ヒヒッ!俺は基本的な動きを重視するから手に入れて起きたかったんだ!努力して正解だったぜ!どおりゃあ!!」
ゼオ君すっご...!スー君が使ったところを以前見ただけでほぼ独学で入手したと言うのか...!?すげぇなあの子。
「ミーシャ!えーと精霊さん!サポートお願い!!」
「任せて!」
『わかった!!』
「精霊之祝福!!」
「よーし...おお!?」
「ギャウッ!?」
「ぐああああ!?」
あれ、いつもより力が湧き上がるぞ!?それに召喚獣も一気に消えたしウォルーポって奴も苦しんでいる。
「!?、どうしましたか!」
「だりゃっ、どりゃあっ!...その技の効果上がってない?」
「へ?」
『そりゃ効果は上がるよ。ミーシャがまた精霊の声を聞けるようになって、精霊魔法をフルに発揮できるようになったんだから!』
「なんと!?」
それは嬉しい限りじゃないか!よーし、勝負はここからだ!
「ちっ、癪に触る奴らめ。オオカミはまだいるぞ!それ行けえ!!」
「こっちもまだまだ行くぞ!!魔砲弾!!」
「アリア、大丈夫か!?」
「ええ...ミーシャのフェアリーギフトなかったらやばかったわ!」
オオカミ相手に善戦しているアリア。しかし彼女はチームの中では体力が少し低い。この旅で鍛えられ、その技術は今や上級なのだがこのままだとジリ貧である。
「くぅ...私は全然余裕っすけど皆んなは一度下がった方が..!」
「ダメ、私だってお荷物じゃない!ケイ、[あの技]使うわ、手伝って!」
「...まさかアリア、あの技っすか!?」
「カーッハッハッハ!いくら貴様らでもこのオオカミの群れには体力が持たないじゃろう!降参はさせんぞ....お?」
「はあああああああ!!!」
「な!?」
アリアの奥義、自身の2本の剣に魔力を思い切り込め、高い位置から下方向に向かって敵を斬り込む大技。
アリアはケイの手助けで上に飛び、魔力を使いウォルーポ目掛けて空中を蹴る。
「食いやがれええ!!疾風降竜斬!!!」
「な...ぐあああ!?」
ウォルーポは瞬時にバリアを張り攻撃を防ぐが、勢いを防ぎきれずバリアは一気にヒビが入る。
だが今の見る限り反射神経がかなり早いのが厄介だな..。
「まだ終わらない!アタシだって強くなった!!二連強斬!!!」
「何!?ぐあああ!!!」
アリアの必殺はバリアを破り、ウォルーポを斬る。その瞬間大量にいたオオカミは消え、相手はウォルーポただ一人となった。
「ぐ...ぐう..!!まだだ..この程度に負けるわけには...!」
「いえ、終わりです。」
「...!」
「!?」
突然の出来事だった。
ウォルーポの首が....はねられた。
「...皆様、ご無事ですか?」
「...!ロティアート隊長..!」
え?あ、帝国関係者さん?
「遅くなってすみません。もうすぐゲトー副総隊長も到着いたします。医療班もいますのでまずは治療をしましょう。」
「えーと...帝国軍の方でしょうか?」
「ああ、お初にお目にかかります。僕は第7番隊、副隊長のロティアートと申します。
ゲトー副総隊長と向かっている途中、[オオカミが森を駆けどこかに向かっている所]を目撃しまして、もしやと思い駆けつけた所今斬った奴がいた訳です。」
「そうでしたか...。」
「おーい!!無事か、お前らー!!」
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今、目の前には桃色短髪の騎士の男がいる。
その名はゲトー。帝国軍の副総隊長である。
私達はようやく合流したのである。
それはつまり、もうすぐ帝王と話をつけれる事を意味するのである。同時に、この旅の終わりの訪れでもある。
「護衛のためにご苦労様です。」
「いえ、これも世界のため..平和のために我らはこの身を尽くします!」
おお!?すっげぇやる気あるなこの人。強そうだしこれは信用できそうだ。
「イッテェ!!」
「動かないの!ゼオ君、君はちょっと敵に突っ込みすぎだよ。この前1番隊隊長も心配してたよ?」
「へへ...すみません..。」
「えーと、目的地までにはどれくらいかかるのでしょうか?」
「東の門まではここから30分もありません。それでは向かいましょう。」
私の護衛はさらに増え、目的地サジェス帝国に向け歩むのだった。
しかしあの副隊長さん...さてはちょっと前から戦い見てたな..?
ゼオに敵に突っ込み過ぎって言ってたし。




