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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
帝国道中編
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第42話 旅の思い出

 「よぉ〜ひ...ひゅっぱ〜ふ。」

 「アリア...あくびしながら言うと決まらないよ..。」


 キジコです。


 現在早朝、海の町ゼスィーを今出た所である。外は少し霧が出ておりちょっぴり肌寒く、夏休みの朝のラジオ体操を思い出す。


 ちなみにゼスィーの領主であるラーシャさんは、自身に化けていたスクルゴが領内を荒らす前だった故、今後も問題なく町は機能していくそうだ。良かった良かった。


 ただ気になる事は...


 「...帝国までどれくらいあるの?」

 「4時間後にはゲトー副総隊長と合流しますのでそれくらいかなと。」


 この子達...彼らと一緒にいれる時間だ。


 彼らはあくまで私の護衛でついており、ボランティアではなく仕事だから、ずっといれるわけじゃない。


 帰りの護衛はわからないが最低でも彼らと一緒にいれるのは帝国に着くまでだろう。

 だからこの約4時間はせめて...


 「ねぇ、この道のりの何処かいい景色の場所ってあるかな...?」

 「いい景色...ですか?」

 「確か..クーリュ峠で早朝時間帯のみ絶景が見られたはずっすよね?」

 「ああそうか!あの景色、今の時間帯なら!」

 「私もあの場所に行くなら賛成です。」


 ほほう、早朝のみに見られる光景...こりゃ楽しみだ。前世で見た滋賀県の白鬚神社の大鳥居と湖面...!朝日に照らされるあの光景は今も忘れない...。


 「どんな光景があるの?」

 「それは見てからのお楽しみです♪時間も惜しいですので急ぎましょう!」

 「よし皆んな、クーリュ峠に行くぞ!」

 「おー!!」


 クーリュ峠:ミーシャによると、今向かっている帝国への道中にある峠で、早朝の時間帯のみに観れる絶景があると言う。


 皆んなの反応を見る限り、とても綺麗な場所なんだろうな。楽しみだな。


 そんなわけで私達はクーリュ峠に向かって歩き始める。



ーーーーーーーーーー


 どこかの地下



 「....報告は以上です。」


 「ゼスィーを出、帝国に向かい始めたか...。スクルゴは結局、何も役に立たなかったな。」


 「申し訳ありません。責任を持って奴は[始末しました]。今牢獄内にあるのは物言わない物体です、代わりに私が謝罪いたします。」


 「構わん、帝国は[我々の本拠地]。知らず知らず自らこちらに向かってるとも思わん猫を歓迎してやる。全ては我ら、魔物如きに左右されない真の人類の世界を目指す反神獣派のためにな。」


 「はっ!では失礼致します...。」



 くく..かはは...


 「ふん、真の人類世界...馬鹿馬鹿しい。奴らも皆ちょっと口説いただけですぐ騙される。我...私の目的はあの方だけが神獣となる世界。ああ...それはどれだけ美しい世界になるのか..!私とあのお方が目指した世界は..すぐそこだ。


 待っていろ猫め、貴様が死ぬ事で世界を美しくして見せよう...!」


 くく...かか..はーっはっはっはっは!.....

 


ーーーーーーーーーー


 「おお...目的地はまだなのに十分いい景色じゃないか...!」

 

 現在私達はクーリュ峠に入って30分くらい経った所です。振り返るとさっきまでいたゼスィーが遠くに見え、その横には広大な海がある。

 

 アニメや漫画とかでは崖上のガードレールのある海沿い道路的な所歩いてます。ちょっと怖い。

 

 「綺麗ですね、ご主人様。」

 「そうだな。...今の事件が落ち着いたらさ、帰り際に海に行ってみたいと思うんだけどどうかな、ルザーナ。」

 「はい、勿論賛成です!」

 「あ、ずるいっす!私達仕事あるのに!」 


 フハハハ、現在半永久休暇の私だからこその特権じゃー!でももし彼らも誘える時があるなら何処かに遊びに行ってもみたいな。



 そんな感じでゆったりしている時だった。


 「...誰だお前ら、観光客にしては妙な格好だな。」


 20人ほどの怪しい集団が現れる。


 「...我らはこの星を浄化する者、その猫を世から消すために参じた。」

 「ケッ、いい感じに盛り上がってる時に襲撃してくるなんてロクでもない。喧嘩売りに来たんだろ?いいぜ買ってやるよ。」


 せっかくの思い出作りに現れるモブ敵ども。間に合わなかったらどうするつもりだって言うんだよ。

 早く倒して急ごう...と思った時だった。


 「あーキジコ様、絶景ポイントはここから道なり行けば見えるので先行っててもらえませんか?」

 「え?」

 「やっぱり早く観た方が綺麗に見えると思いますし、この程度の奴らなら私達は何も問題ありません。」

 「な..我らが弱いと言うのか!」

 「おうよ!」

 「ルザーナちゃんも行ってらっしゃい。私達はコイツら倒した後でも追いつけるから!」

 「...はい!」


 下手に命散らす行為は止めるように言ったんだけどなぁ...まぁでもコイツら確かに魔力量全然ないし、ここは甘えよう。


 「まぁ最低限でも、どりゃあ!!」

 「どわあ!?」


 地面に向かって魔力弾を放ち煙幕にする。


 「それじゃお先に行ってきまーす!」

 「ヴルル!!」

 「な、貴様!!」

 「相手は俺達だ!」


 そんなわけでルザーナに乗って私とルザーナは走り抜ける。


 「急ぎましょう、もしかすれば霧が絶景と関係しているかもしれません!」

 「なんと!?...確かに霧は早朝辺りに最も出る...わかった!」

 「飛ばします!!」


 ルザーナは猛スピードで駆け、道なり道を進みゆく。ルザーナにしがみ付いてるが油断すればぶっ飛んでしまいそうだ。


 「いたぞ!資格の魔物だ!!」

 「邪魔です!青之火炎アズールファイア!!」

 「ギャアア!?」


 ルザーナが久しぶりに火を吹く。しかもスキルとして大幅強化され煌めく青い炎となっていた。強くなったね、ルザーナ。


 「そりゃあ!」

 「おお!?」

 

 ルザーナは急に高く飛び道から外れる。

 だが生体感知を使ってたからすぐわかった。道の先にさっきより多い数の戦闘員が待ち構えていた。


 ルザーナはそのまま険しい所を進み、飛び、目的地まで駆け抜ける。

 その合間聞こえたが

 「...あ...青い流れ星..!」

 と言っていた戦闘員がいた。どこの彗星やら。


 「お前ら!もうすぐ猫の魔物が通る!武器を構えろ!!」

 「おお!」

 「青之衝撃アズールストライク!!」

 「な!?ギャアアア!!」


 戦闘員達のど真ん中を狙いルザーナの必殺が決まり、青い疾風は駆ける。結構エグい事するね。

 

 しばらく走っているうちにルザーナが気づいた。


 「...!キジコ様!?霧が少し減っています!!」

 「な!?」


 まずい、霧が絶景と関係しているなら..!


 「...!あの辺り...霧の掛かり方が...あそこだああ!!」

 「ルザーナ!?」

 

 ルザーナは高く飛び、見つけた場所目掛けて突撃する。その際の勢いはミサイルの如く動くから落ちるかと思った私であった。


 そのままズドーンとルザーナが見つけた場所へ着地する私達。

 今いる場所は本道、その先には崖があり、霧の掛かり方に少し違和感を感じる。もしや..!


 私はルザーナから降りて全力で向こうへ駆け抜ける。

 そこには穏やかな太陽光が差す光のカーテン、光に反射した霧が見える...!

 間違いない...あそこだ...!


 私はようやく見つけた絶景にルザーナと向かい始めた。




 しかし、


 ピカッ


 「...!ご主人様ああ!!」

 「..!!!」

 

 地面に謎の魔法陣が現れる。...まさか!?


 「滅悪之光アクナキヨノヒカリ!!」


 

 突如大爆発が起きた。私達は間一髪回避することができた。

 だが...崖は、霧は、跡形もなく消えていた、消し飛んでいた。


 「魔物共めが!!貴様らが神聖なる光、[ディヴァインカーテン]を目にするなどあってはならん!!貴様らが見るくらいなら我らはこの地を破壊する!」


 は....?


 「皆の者!この功績は我らの素晴らしき歴史となるだろう!!祝うが良い!!」


 あ...?


 なんだと...?


 テメェら自分らの都合で...なんて事してくれてんだよ...。


 「この世の悪よ、貴様らもこの悪を滅する光で消してくれよう!!我らは正義、真の人間の世界を目指す正義だ!!」


 黙れよ。


 みんなとの...思い出を...貴様が...!


 あー...怒った。


 「ご主人様、あいつらぶっ飛ばしていいですか?」

 「いいよ。思う存分私もあいつらにお灸を吸えさえてやらなきゃ。」


 「...!リーダー、あいつら...こっちに来てますよ!?怯んで動けないはずなんじゃないんですか!?」

 「あ...あれ?」

 「ちょっと...ツラ貸せやああああああああ!!!」



 のちに、消えた絶景と瀕死の戦闘員、荒れたこの地を見た者達は神の怒りを買った愚かものとして噂され、後世にその恥を語り継がれましたとさ。


ーーーーーーーーーー


 「な...崖が..!」

 「それに...この戦闘員達は...!」


 しばらくして到着したゼオ達。

 戦闘員達としばらく戦って疲れていた。


 「あ、やっほー皆んな。」

 「キジコ様、ルザーナ!!ご無事でしたか!?」

 「こ...これは一体!?」

 「あと一歩之ところで絶景破壊された。だからお仕置きしただけ。」


 ....せっかく皆んなとの思い出になると思ったのに...。

 残念だ。


 「ご主人様....。」

 「...。」


 残念だけど別の道から進もう、そんな時だった。


 「...ん?霧が..?」

 「へ?霧はもう...?」


 突然、再び霧が立ち込み始めた。どういう事だ?

 それだけじゃない、


 ゴゴゴゴゴ....


 「おう!?足場...橋が出来てる!?」

 「まさか...!」

 『やっほ!ミーシャ。』

 「精霊さん!?」


 突如現れたのは水色の光とオレンジ色の光...精霊だ。


 『今日は元々霧が薄めだったけどからきっとすぐ見えなくなったと思う。だから、力を貸すから見てほしい!』


 私達は急いで岩の橋の真ん中へ渡る。


 「....!!」


 その光景は見る者全てを圧倒した。


 太陽の光は霧に吸い込まれたかのようにベール状となり、光のカーテンが現れる。


 これがディヴァインカーテン...。

 風が吹くたびカーテンは揺れ、輝く。

 霧の動きが変わるたびにまた輝き、煌めく。

 ああ...なんて綺麗なんだ...!


 「...綺麗だな。」

 「ええ、反神獣の奴らがぶっ壊した時はどうなるかと思ったけど...良かった。」

 「ご主人様、すごいです、キラキラです!」

 「はは!頑張った甲斐があったぜ!」


 一時はどうなるかと思ったこの景色。

 精霊の力を借りちゃったとはいえ、この美しい景色を見ることができて私はとても嬉しい。


 しばらくしてカーテンは風が吹き霧が消えると同時に消えていった。

 その光は最後まで美しく煌めき、絶景に相応しいものだった。


 「...良かった、皆んなとこの光景が見ることができて、私は..とても嬉しいよ。」

 「ヴルル!!」

 「俺達も嬉しいぜ、キジコ様!」

 「またみんなと見たいね!」

 「私も賛成です!」

 「キラキラフワフワ..凄かったっす!」

 「..本当に..綺麗だった。」


 朝日の影響か知らないけど、みんな目がキラキラしていた。


 『喜んでもらえて何より!ボク達霧と土の精霊は君達を祝福する、君達が無事である事を祈るよ!』


 そのまま精霊はどこかへ姿を消した。


 「さぁ、帝国まであと少しだ。もう一踏ん張り行こう!」

 「おーー!!」


 この世界に来てまた一つ大きな思い出ができた私。待ち受けるのは帝国、いざ出陣だー!!

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