第38話 海辺の町 ゼスィー
少し前
「おお、見ろよスー!海だぞ!」
「ゼオ、そこまではしゃぐか?」
平野を下りしばらく歩き、見えてきたのは広大な海。
この世界に転生して初めて見る海だ。昨日あんな事があったというのに海は何事も無かったかのように青く平穏な様子だった。
「...綺麗だなぁ...。」
「ご主人様、私初めて海を見ました。何というか..その..すごいです!」
「ルザーナちゃん初めて海を見るっすか。ちょうどいいっすから皆んなで浜辺まで行くっす!」
「いや、もうゼスィー見えてるし後でいいんじゃない..?」
「今行くっすよ!!興味は冷めない内っすー!!」
「あ、ちょっケイ待ちなさーい!!」
「..大はしゃぎ一名いたな。」
「ああ。」
ーーーーー
そんなわけで現在、私達はゼスィーに入る前に浜辺に行きました。
改めて近くで見るとすっごく広大。ザザーと潮の満ち引きが聞こえる度に前世でサーフィンしていたのを思い出す。
(いやっふーい!!)ザザーッ!!
(ちょっ先輩、普通休暇でそんな派手な技出します!?)
とりあえず歩くか。
ボスッ
おお!?この体になってもサラサラなのかザラザラなのか、中途半端なイメージのあるこの感触が懐かしく感じる。そして砂がこべりつく。
「いやーいいっすねぇ海!ようやくここまで来たーって感じがして、よりインパクトあるっす!!」
「アンタ本当こういうの好きね..。でも、その達成感は認めるわ。やっとここまで来たのね。」
「超過密な行動の影響もあるだろうな、スーとキジコ様が起きてまだ2日だぞ?2日。」
確かに、この2日間やる事が多すぎた。
特にロブスターの襲撃なんて夜中だぜ?お陰で私達、太陽が割と上にある時間に起きてしまった。
そしてドゥーカルンを出て3時間、ようやくゼスィー目前まで来たというわけだ。
今で大体13時半辺り。お昼ご飯はゼスィーでいただくとしよう。
「ねぇ、ゼスィーの料理って何が有名?」
「お?キジちゃんも食通になって来たっすねぇ〜。」
これでも前世、食べ歩きも趣味でしたので!
「..ゼスィーは海が近いというだけあって海鮮だな。今の時期は潮の流れに微生物が発生し、それを求めに色んな種類の魚が集まる。
中でもラピッド・ホーンと呼ばれる魚が程よい肉質と脂身を持っている。適度に鍛えられた赤身肉としつこくないのに旨味のある油が特徴でな、刺身、炙り、ソース和えなど様々な調理方法でもその美味さが楽しめる。それから〜〜〜...」
「待ったスー、そういうのは食べた方が早い。」
「ん?ああ、そうだな。」
(スー君、もしかしてかなりの食通..?)
(ああ、スーは修行時代色んな所に行ってたからこういうの詳しい上に割とハマったみたいです。)
「いい眺めっすねぇ。水着あったらよかったすね..。」
「観光じゃないんだから、そういうのは任務終わってからにしたら?」
「ふーい。」
みんな鍛えられているから水着を着ても恥ずかしくない体型だろう。
(特にケイは鎧越しでもわかる、ナイスバディ!!)ゲフン
とまぁ、私達は浜辺で一時の休憩を終えゼスィーに向かうのだった。
すると。
「フハハハ、待っていたぞ神獣の資格を持つ魔物め!俺は...」
「邪魔っす。」バキッ
「ギャハーーー!?」
...いや、特に何もなかった。
ーーーーーーーーーー
青く広大な海が見え、賑わう人々の声、港から運ばれて来た海産物、その料理を美味しく食べる人達...!
ついに到着、ゼスィー!!
この旅、まともな食事多くていいなぁ!!売店やレストランから漂う海産料理のいい香り!何が食べれるかなぁ..。
街並みは石造建築で白いレンガ作りの建物が多い。美しい造りだがかなり頑丈そうだ。
「お!あんた達か、魔物の大群相手に最前線て戦ってた戦士達ってのは!!」
突然、住民らしき方が私達にそう話しかける。
「ドゥーカルンに住んでる友人から聞いたぜ!冒険者や兵達が町の守護で手一杯の中、あんな数の魔物相手に最前線で戦っていた奴らがいたってな!!」
「...アタシ達..だな?」
「間違いねぇ!5人の戦士と2頭の魔物がゼスィーに向かってると聞いた!」
「はは...これは確実に私だな...。」
知らない間に話題になってた。
「なんだって!」
「あいつらが!?」
周りがざわつき始める、なんかやばい気がして来た...時だった。
誰かがこちらへ向かって来ていた。すると人々がこちらに向かってくる者達に道を開けていた。
「貴殿らがドゥーカルンを守った英雄殿らですか。」
そこに現れたのは結構な立場のあるかのような服装をした女性。
そこにミーシャが対応する。
「英雄かどうかは知りませんがドゥーカルンで魔物の大群と戦ったのは事実です。」
「...ではおそらく貴殿らでしょう。報告にあった特徴と一致するのは他にいません。
ああ申し遅れました、私はこの領土の管理を任されております、ラーシャと申します。」
「この町の領主様でしたか...。」
なるほど、確かに服装に納得がいく。ただ...気になるのは...。
「角...?」
そうこの女性、角がある。漫画で見た神の龍のような二本の角が生えているではありませんか。よくみりゃ顔の肌に謎の赤い線がある。
「もしやキジちゃん竜人族を見るのは初めてっすか?」
竜人族!そういやテュー兄が言ってたな、人間と呼ばれる種族の大国のうちに、竜人の国があるって。
キ「うん、初めて見た。」
ル「私も初めてです。」
...あれ、そういやエルフは種族的にどうなんだろ。見た目は似ていても根本的な何かが違うのかな。
「...?どうしましたか。」
「あ、いや、なんでもないよミーシャ。」
「立ち話も難ですので、私の館までご案内致します。」
「ああ、はい!」
(キジコ様...。)
(どしたのミーシャ?)
(ごにょごにょ...)
というわけで私達はドゥーカルンの事もあってゼスィーの領主、ラーシャさんの館に行く事となった。
館は町の北の方にあり、時折ここでこの辺りの領主達と会談があるそう。簡単に言うと公的活動の場でもある。
ちなみに体格的にルザーナは建物内に入れないのでスーロッタとアリアが一緒にいてくれるそうだ。
それにしても竜人族...。この漂う不思議な雰囲気がキャラを強めている。
聖人族、魔人族、獣人族、エルフ族そして竜人族...これぞ異世界だなぁ..。ちょっと感動。
ーーーーー
ラーシャの館、会議室
「さて、町について早々の貴殿らに頼むのも失礼に当たる事承知ではございますが...昨夜のドゥーカルンの出来事についての情報が欲しいのです。最前線にいた貴殿らの掴んだ情報があれば共有願いたいのです。」
私達はロブスター魔物が他の町を狙わずドゥーカルンに襲撃してきた事、というより私キジコを特に狙っていた事、ロブスターになんらかの誘導魔術が施してあった事、そして..反神獣派が関与している可能性がある事などを伝える。
「...噂には聞いていましたが...反神獣派。まさかそこまで悪しき事態を起こすとは...。」
「私達は[神獣の資格を持つ方]を帝国へ案内するために旅をしています。それ故奴らは無関係の人々を巻き込んでも標的を殺そうと動いています。」
ラーシャは少し考え込みながら話始める。
「...そうでしたか。神獣の資格...神獣になれる魔物が所有する称号の総称。称号名が様々あることから神獣の資格、神獣への資格など呼ばれ方も様々。そして覚醒した魔物は世界の秩序を知り、護る力を持つ存在へ昇華する。」
「...博識なのですね。」
「父から聞いた話です。神獣は100年に一度、たった一柱現れ、今の世代が丁度その周期と聞きました。」
...神獣は100年に一度しか現れないのか..。しかもたった一柱、てっきりもっと世代近いのいるかと思えば全然そうでもない模様。
「私達は[その内]に帝国へ向け出発します。道中トラブルがあったとはいえ、我らが帝王様から直々に承った任務である以上、なんとしても任務を達成しなければならないので。」
「では馬車の準備を...」
「いえ大丈夫です。我々も無関係な方を巻き込みたくはありません。」
「...わかりました。」
「さて、私達は旅の準備や補給がありますのでこれにて失礼致します。」
「はい、ご足労いただきありがとうございました。」
「キジコ様、[どうでしたか?]」
「ああ、[結果]なんだけど....。」




