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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
帝国道中編
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第35話 精霊の声

 「いやぁあたいお腹減ったよぉ、あれだけ驚く事があったからもうエネルギーすぐ消費ってやつだよ。」

 「私もスカーフ仕上げたからお腹減っちゃった。」

 ゼ「....。」

 ア「....。」

 ミ「...。」

 ケ「ワクワク...お料理ワクワク...。」

 ス「....。」


 キジコです。

 つい先ほどヴァリールさんとまた会い、食事を私が奢るという事で、現在食堂にいます。ケイはすでに食べ物の方が気になっている様子だが...他4人は固まっている。


 それもそのはず、ヴァリールさんは世界的に有名な手芸職人であり、彼女の作品は最大で日本円でいう2億も出たほど。


 「あ...あの、ヴァリール..様!」

 「「様!?」」

 「わ、私はミーシャと言います。生活魔法が得意で裁縫もできる身として...お聞きしたい事があり..ます!」

 「おや、裁縫ならなんなりと。」



 「..これを見てください...。」


 ミーシャは空間収納庫から少しボロボロのぬいぐるみを出す。

 するとミーシャの空気が重くなる。


 「これは?」


 「...昔、母がくれたぬいぐるみです。母は幼い時に消息不明になり、父がずっと私を育ててくれていました。その際父は、


 「ぬいぐるみが無事なら母さんも無事だ。このぬいぐるみはお守りだ、お前と母さんを絶対に守っている。だから諦めるな、絶対に母さんと会えるから。」


 ...と。

 

 私はずっと、このお守りを...でも、でも..切れた糸を直しても...汚れた所を洗ったり..潰れた綿を取り替えて..ずっと信じれるよう直しているのに..母は見つからないのです..。


 もう..お守りじゃなくなったのですか..?私が勝手に補修したから?何か間違ったの?

 だからこのぬいぐるみを...直しても..欲しいのです....。どこかで生きている母を..守って..欲しいから..。」


 ミーシャの目から涙が出ていた。彼女が探している母の大切な形見、母に会いたい、母を守りたいという気持ちが表れているのか、一部の布が古く見えた。


 「..わかった。明日までには仕上げると約束するよ。」

 「...!あ..ありがとう..ございます..」

 「あらあら、泣いてちゃ綺麗な顔が台無しだよ。」

 「..!!し、失礼しました..。」


 「お待たせ致しましたお客様!ご注文の料理です。」

 「それじゃ、いただこうか。」



ーーーーーーーーーー


 ...ああ、料理が美味しくてつい食べ過ぎてしまった..。スキル肉体理解あるのになぜ自爆気味な事してしまうか..!覚えてろ、美味しい料理めぇ!


 さて、このままだとゆっくり寝る事もできないから散歩でもするか..。そんな感じで廊下を歩いてる時だった、


 (「キジコちゃん!こっち、」)


 ヴァリールさんが扉を少し開け私を呼んでいた。何かあったのか?私はまたヴァリールさんの部屋に入った。


 

 「さっきのぬいぐるみなんだけどね..スカーレットハートのように何か力を感じるの..。」

 「力?」

 「ええ、でも魔力とは違うの。何かこう..神聖..というか。」



 『...ワタシの事か?』

 「「!!?」」


 突然だった、ぬいぐるみが..喋った!!?


 「...もしかして精霊か何かの類?」

 『そう、ワタシはこのぬいぐるみに宿る精霊。君達が会ったエルフの娘とその母親を守っている。』

 

 驚いた、まさか精霊が宿っていたなんて..。正にお守りってやつじゃないか。

 会ったことのある精霊なんて碌でもないの2体ぐらいしか心当たりないぞ。

 

 「二人を守っている..彼女の父親が言っていた通りじゃないか..。」

 『奴には少々恩があってな、二人の守護を頼まれていたんだ。』



 「...率直な疑問だけど、ミーシャの母親は無事なの..?」

 『..[生きてはいる、ギリギリ加護の反応がある]状況でな。』

 「...!!」


 その言葉には大きな事実と情報があった。


 ・ミーシャの探している母は生きている

 →『生きてはいる』=無事ではない可能性がある。


 ・ギリギリ加護の反応がある

 =生命力が弱まっている可能性。


 ・状況

 =精霊は加護の対象、ミーシャとその母について、どこまでかはわからないが何かを知っている。そして時が経つことに自身でもどうにもできなくなっている。


 「...ミーシャの母の居場所はわかるの?」

 『詳しい居場所まではわからないが、大まかなところであればわかる、帝国の中心だ。』

 「な..!?」

 「帝国だって!?」


 なんの偶然か、どういう運命か、誰の陰謀か、帝王に反神獣派に続き何が起きてるんだよサジェス帝国。

 ここまで来ると何もかも一切の無関係とは思えなくなる。帝王あたりがモヤモヤだが。


 「...やっぱりその感じからしてキジコちゃん、帝国に向かう感じかな。」

 「ああ、色々訳あって数日前から帝国に向かってる最中なんだ。」

 「なるほど、...なら食事が終わったばかりだけど急いだ方がいいよ。」

 「へ?」

 『...!まさか、ゼスィー近辺の海..。』

 「ああ、魔物の大量発生が来る。私は色々旅してた影響かそういうのがわかるっていうか、スキルを持ってるんだと思う。

 あくまで予報的なのだけど、結構当たるんだ。」

 

 拾いたくないフラグを回収した!

 キジコの機嫌が悪くなった!

 テンションが下がった!


 まーじかよ。個人的には綺麗な海辺を見ながら優雅に旅ってイメージだったのに。前世以来の海は穏やかじゃないですね。

 

 「早く伝えに行こう!」

 「待ってキジコちゃん、精霊さん。気になる事がある。」

 『?』

 「精霊さん喋れるのにミーシャさんには話しかけないの?」

 「..!」

 

 『...何度か話しかけたことはある。あの子は小さい頃からワタシを心配させるような子だった。単刀直入にいうと今のあの子は[精霊の声が聞こえない]。』

 「...?」

 『あの子..ミーシャは昔、精霊術がとても相性が良かった。簡単に言えば天才、生まれ持っての。当時の力もまだ幼いのに今よりずっと強かった。

 

 けど、母親..、ミルカーナがある日消息を断ってからか、ミーシャはそのショックの影響か心が不安定になり、精霊力が弱まり、次第に精霊の声が聞こえなくなった。」

 「...そうだったのか。」

 「その感じからするとぬいぐるみに取り付く前から見守っていたんだね。」

 『ああ、さっきも言ったがミーシャの父と昔から縁があったからな。

 さて、昔話は終わりだ。早く行こ..。」



   「大変だーーーっ!!!」

 「!?」

 「..まさか...!?」

 『...この気配...バカな!?海岸からは距離があるはずだ!』

 

 「すみません、一旦みんなの所に行ってきます。ヴァリールさんと精霊はここに隠れていて!」

 「わかったわ。修復作業がまだあるからね。」


 私は急ぎゼオ達と合流する。その際彼らも騒ぎにすぐ気づき外にいた。



 「みんな!」

 「キジコ様、緊急事態です。昼に言っていた海からの魔物が...!」

 「状況はわかっている!数は!?」

 「今ケイが偵察していま...待ってください、念話通信...ケイからです!繋ぎます。」


 「やばいっす!!水陸両用魔物テラー・オーシャンっす!!数は...多いのやら少ないのやら...1千はいるっすね。」


 テラーオーシャン

 ...甲殻類の魔物の一種。硬い甲羅と凄まじい力の鋏を持ったカニ...ではなくロブスター。

 ギチギチして怖い。


 「多い!!なんでそんな数がこんな森奥方面に来ているんだ!」

 「わからないっす、...けど様子が変っすね。」

 「様子が変?」

 「違和感あるっす。あの魔物は雑食性とはいえなぜ近くのゼスィーや近隣を狙わないっすか?道中予定外の町がいくつもあるのになぜピンポイントにこの町狙うっす?それに...動きに統率感を感じるっす。」

 「テラーオーシャンは群行動ではなかったはず...。」

 「ケイ!一旦戻って!」


 突如起きた緊急事態、果たしてキジコ達はこの事態をどうにかできるのか。


ーーーーーーーーーー

 

 

 邪精霊の件は失敗だった。


 だが今度はそう奴らも無事ですまない。


 ゼスィー近くの海の魔物がそろそろ這い上がってくる頃だったので利用してみればこうもあっさり使えるとは。


 単純な思考しか無い魔物だからちょっとした洗脳信号を魔力で送ってみれば大成功。


 猫め、貴様はどう切り抜ける?


 町の住民を見捨てるか?


 挑んで自ら死を選ぶか?


 まぁどの道貴様には死んでもらいたいね。


 全ては....様のために。

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