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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
帝国道中編
36/302

第34話 流離の手芸職人

変更訂正:通貨はゴールドやブロンズとかが出ていましたが色々変更します。


 ブロンズ=10円 シルバー=100円

 ゴールド=1万円 


 ドゥークの森に入る前の先頭にて手に入った通貨は58ゴールドから58シルバーに変えました。

 変更ばかり申し訳ありませんorz

 「ああ..?」


 キジコです。

 現在宿の廊下でうっかりガラの悪そうな女性に当たってしまいました。


 「....んあ?猫ぉ?」

 「ピィッ...は、はい猫です..。」


 鋭い眼光が刺さる。


 「うぉぅ!?猫ちゃんが喋った!あんた何者..?」

 「キ、キジコと言います...。」

 「名前あんのか...大丈夫か?あたいはヴァリール。」


 あれ、優しい。

 人は見た目によらないもんか。


 「それであんた、部屋から出てどうしたんだ?なんか急いでる様子もあったけど。」

 

 ああそうだ、ミーシャに布の染色方法聞きたいんだった。彼女は生活魔法が得意と聞いたからもしかすれば何か知っているんじゃないかと思って。


 「この布を色付けしたくて。」

 「んん?これSFスパークルフライセクトの糸で出来てるのか?見た感じ市販品じゃなくて個人で作られたみたいだけど、綺麗に出来てるな...。」

 「仲間に作ってあげたい物があるから、糸から作ってみたんだ。」

 「へぇあんたが....ふぇ!?あんたが作ったの!?」


 やっぱ驚くよね、その点。


 「色々スキルがあったから出来たんだ。だけど無地のまま作りたい物にするのは味気無いから他の仲間に染色について聞こうかなと思って。」


 ヴァリールは考え込む。


 「ああーんんー...ちなみに送る相手はどんな奴?」

 「宿の獣小屋にいるLKライトキッカーサラマンダーだ。」

 「うぇ!?あのサラマンダーあんたの仲間だったのか。珍しいのがいるから誰のヤツかと思っていたけど..。」

 

 やっぱり珍しいのか。ルザーナの種族はそもそも複数の個体で行動する群体魔物。1匹だけってのは例外でなければ余り見ないらしい。


 「....あー..うん、よし!とりあえずあたいの部屋に来な。色々教えてやるよ。」

 「へ...?わかりました。」


 

 よくわからない状況ではあるが急に自信満々な様子になったヴァリール。そのまま私は部屋に案内されヴァリールは椅子に座り込む。


 「...それで、どんな物を作りたいんだ?」

 「スカーフを作ってみたいんだ。だから色が白のままはあれかなと思って。」

 「スカーフか、なら色付けは後でいいな。作り方わかるか?」

 「うん、とは言ってもあとは揃っていない糸を処理して、端を少し内側に縫えばいいだけって感じ。」


 するとヴァリールがバッグの中から何かを取り出す。出てきたのは何かが入った箱。すると箱を開けて...


 「あたいの針と糸、貸すよ。」

 「え、ヴァリールさんも裁縫道具持ってたの?」

 「こういうの好きなんだ。だから旅に出ては町で買った布で色々作るの。」


 なんと意外な一面。見た目はちょっと怖いけど本当に優しい人のようだ。私が裁縫の話を出した時も目が輝いていた、本当に裁縫が好きなんだろう。


 私はお言葉甘えて針と糸を借りて縫う所全て縫うことにした。久々の針を使った波縫いは、ちょっと緊張した。


 「ふぅ..。」

 「流石に疲れたかな、あたいがやってみるよ。」

 「へ?」


 ヴァリールは布と針を持つとスイスイ縫い始めた。器用で素早く、正確に。


 「ほえぇ...。」

 「ふふん、上手でしょ?小さい時から頑張ってたから今じゃ余裕のなんの。」

 

 家庭科の先生よりも上手です。

 そうしてヴァリールが残りも仕上げてくれて、いよいよ染色をする事になる。


 「あんたのサラマンダー..あー...。」

 「ルザーナっていうんだ。」

 「ルザーナは色が空色寄りの青だから、赤がいいと思うけどキジコはどう思う?」


 ふーむ..同色系だと目立たないし黒も違う。けど確かに赤色なら対比色で目立つからいいかもしれない。


 「私も赤がいいと思う。」

 「決まりね!じゃ、見てて。」

 

 ヴァリールが出来上がったスカーフに指を当てると..


 「赤之染色カラーレッド。」


 するとスカーフがみるみる綺麗な赤色に染まってゆく。それは混じり気の無い、純粋で気品すら感じるものである。


 「出来たわ、糸の詰まりもこれといって無いからとても綺麗に染まったわ。」

 「これが染色...、綺麗。」

 「せっかくだし名前も入れちゃう?ルザーナって子に送るんでしょ?」

 「名前入れれるの?」

 「ええ、染色スキルはちゃんと文字も書けるわ。えーとルザーナちゃんはなんて書くの?」

 「えーと...あ。」


 しまった、この世界の文字は知らない!!考えてみれば念話通じた会話ばかりと知識ばかりで、文字についてはまだ何も学んでいない!


 「...文字知らないです。」

 「ありゃっ、えーとなら..(ゴソゴソ)あった、この表に書いてるのが基本的な文字よ。私が普段作った物にも刻んであるわ。」

 「なんと読むのでしょう...?」

 「聖魔人族の基本文字ではあるけどこれがル、ザ、ー、ナ、よ。これでもいいかしら?」

 「はい。あ、でも私が書いてみたいのですが染色スキルはどう使うのでしょう?」

 「へ?いいけど..うん、自分の手の先に魔力を纏い、色彩とかを思い浮かべてみて?」

 

 それだけでいいのか、試してみよう。

 とは言っても色彩か..日本ならそれに見合った四季の絶景いっぱいあったからそれを意識してみる...


 「おお!?キジコお前!」

 「へ?」

 

 私の手の魔力になんというか...色鮮やかさ(?)を感じた。


 (補助スキル:染色を習得しました。)


 「...誰でも覚えられるわけじゃないのに、今の説明で習得できたなんて...!すごいよキジコちゃん!!」

 「おお!?そんなにすごいのか...。」

 「それじゃ、白で書いてみようか!」


 そして私はルザーナと慎重に、丁寧に書いた。

 

 「いいじゃんいいじゃん!ついでにキジコちゃんの名前も書いてみたら?きっとその子も喜ぶよ!」

 「ふーむ、じゃあヴァリールさんも書いてもらえます?」

 「へ?あたい?」

 「こんなにお世話になったんだから記念としてはどうかな..?」

 「いいよ...いいよありがとう!」


 別の所に自分の名前、ヴァリールさんは私の名前の下にスラスラ書いた。

 

 「わぁぁ..ありがとう!キジコちゃ...んん?何、スカーフから...魔力が..?」

 

 (魔法具:スカーレットハートが作成されました。この魔法具は個体:ルザーナ専用。製作者、キジコ ヴァリール)


 「..!?何この声..?まさか...思いを込めたことで、このスカーフは魔法具に昇華したっていうの...!?」


 マジで!?

 いや、待って待って、確かにルザーナに送ろうとは思ったけど趣味で作った物がどうしてこうなる!?ビックリなんだけど!!


 魔法具:魔力を纏った特殊な武具道具。魔法を使える物や使用者や装着者に特殊な効果をもたらす。


 「...多分あたいの人生でトップクラスの驚きになったわ。まさか目の前で魔法具が誕生するなんて...!」


 ヴァリールさんはめちゃくちゃ驚いてる様子だった。どうやら相当レアな光景らしい。

 そう考えるとミーシャのブレスレット型の魔法具も結構なレア物になるのかな...?


 「...キジコちゃん、ありがとう..!こんなすごい事に協力出来てあたい..最高の気分!」

 「こちらこそありがとうございました。ルザーナも喜んでくれそうだから私も嬉しいです!」


  ....ーん?」

 「キジちゃーん?どこっすかー?」

 「やば、起きた事言ってなかった。それじゃ私はそろそろみんなの所に行ってきます。」

 「ええ、とてもいい思い出になったわ。また会えるといいね!」


 そして私は部屋を出てケイの声が聞こえる所へ向かった。





 「ごめん、ちょっと寄り道してた!」

 「おおいたっす!そろそろお腹すいたっすよね?そろそろ席が空いてきたっすからみんなで食堂に行くっすよ!」

 「そういえば、どこかへ行ってたのですか?」

 「ああ、これを仕上げてたんだ。」


 スカーレットハートを見せる。


 「うぉお!?いつのまにか染めてたんすか!?」

 「ちょっと前に出会った人が色々教えてくれて、手伝えてもらえたんだ。」

 「...それはキジコ様が作ったスカーフなんだよな..?..魔力を帯びていないか?」

 「まさか...魔法具に...!?」

 

 ミーシャがとても驚いていた。やはり只事じゃなかったのか。だがもっと驚く事が起きた..


 「ちょっと待って、その文字..名前..まさか..ヴァリール!?」

 「「「「!?」」」」

 「ん?確かにその女性はそう名乗ってたよ。こんなすごい事に協力出来て最高の気分って言ってた。」

 「キジコ様!?ヴァリールは世界的に有名な流離の手芸職人ですよ!?その天才的な腕前から作られた品は最安値でも50ゴールド(日本円でいう50万円)、最高値で200万ゴールド(日本円でいう2億円)もするんですよ!?その方と会えて手伝えてもらえたなんて只事じゃないですよ!?」

 

 ちょいちょいちょいミーシャ文字数多いって!


 「ままままままさかヴァリールがこの宿にいるの!?」

 「まぁそうなるね。でも食堂行く前に行くところがあるんだ。」


 それから私はルザーナのいる小屋へ向かう。


 「zzz..zz...ヴル?」

 「寝てるとこごめんねルザーナ、これを君に贈る。」

 「ヴル..?」


 ルザーナの首にスカーフを巻いた。

 よし、似合っている!

  

 「..!!..りがとう..ありがとうございます...ご主人様...!」

 「おお!?ルザーナちゃんの魔力量が増えたっす!」

 

 ルザーナは予想以上に喜んでいた。念話が漏れ出てしまうほどだとは作った側としてもとても嬉しい。

 それに魔法具を装備したからか、魔力量が上がったらしい。今起きたばかりなのに飛び跳ねるように喜んでいる。


 さてお腹すいたし食堂に行きますか。

 


 「やぁキジコちゃん、ルザーナ喜んでる?」

 

 入口からさっき聞いた声と見た姿があった。

 

 「あ、ヴァリールさん!」

 「「「「「ヴァ!?」」」」」

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