第286話 地上戦②
今回はとある竜人令嬢が主人公!
「ぃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「どぅおるああああ!!!!!」
ここは竜人国。
響き渡るは貴族のちびっ子の声、
轟くは一人の少女の声、その拳は黒い怪物の骨を外からでも十分聞こえるくらい大きくグロテスクに豪快に砕く!
「ふぃ〜、一丁上がり!」
ヘナヘナと座り込む貴族のちびっ子達、
洗浄術式札で体を一瞬で洗う少女。
「...あ...あり...がと...。」
「あー....この場合私の方が怖いヤツかな?」
全力で首を縦に振るちびっ子達、
自分のした事に呆れる少女。
彼女の名はヴィオレット・フィエドゥラ。
キジコと同じく元日本人の転生者にして危うく悪役令嬢ルートを進みかけたラノベ好き。
旧名は花之宮菫。
転生して12年経った彼女はなんだかんだ人生を謳歌中、転生といえば何かしら力を得たり補正が入ったりするメタ的なものがあるが彼女の場合は.......、
「じゃあ、さっさと脱出するわよ!グズグズしてたら私の肉体でも助ける事は出来ないわ!」
「瓦礫を拳で壊すアンタが言っても説得力無いわよ!!!」
怪力、
純粋な肉体戦闘能力、怪力である。
ヴィオレットは竜人族では稀な[地竜種]。
遠距離の魔力適正....簡単に言えば長距離対応の魔力を扱う能力が弱く翼も無いので飛ぶ事も出来ない。だがその代わりに近接戦闘能力はズバ抜けて高いのだ。
(同じく地竜のルザーナも広範囲技は使えても遠距離技は使えません。)
そしてヴィオレットは幼くして才能開花。
可憐な見た目に対しその拳は鋼鉄を砕き、脚は巨大な魔物すらねじ伏せる。
彼女の人生にタイトルをつけるならば....、
[転生した私は怪力無双竜人令嬢]
....である。安直かな?
さてさて急に違う話に入ったので大まかだが説明しよう。
まずは現在地上の状況を、
時はキジコ達が邪獣討伐へ出発してからだ。
邪獣が復活した事で世界各国は邪獣の手駒の怪物達が暴れていた。
今まで戦っていたのが前兆個体と言うだけあってか、怪物達の数は今まで以上。各国は国や人々の守護に力を注いでいる。
違う点を挙げるならば魔力消費コストの高い人型個体はいない事だ。人型個体は知能や戦闘力、小回りなど戦闘設定に関しては優秀だが構成が細かい分多くの魔力を使わなければならない。
ロボットアニメで例えるなら、
人型は[ワンオフ機]...高性能、高コスト。
通常怪物達は[量産機]...並〜低性能、低コスト。
その量産共を邪獣は世界で暴れさせる、目的は負の感情エネルギーの供給。邪獣にとって人のマイナス感情による負のエネルギーは生命の源でありさらなるエネルギーを得るための力。だが流石の邪獣と言えど一体で出来る範囲もあるので数で人々恐れさせエネルギーを得ているのだ。
特に自身を倒そうとする存在が己の元へ来るなら戦闘に備えより広い範囲を襲撃させより多くエネルギーを得る。
ちなみにちょうどその頃にフィースィとヴェレンが戦っている。各国も現在進行形で戦っているが、そのお話はまた後にしよう。
さて、話は竜人国。
この国も怪物の襲撃は例外ではなく現在絶賛大パニック。竜人族は平均的な強さが高くほとんどの者は空中戦が可能。陸からも空からも相手を制するのだ。
「やっぱり他の国の襲撃と比べて数が多い、撃ち漏らしがいたのだろう。」
「加えて怪物達の動きは細かい部分までは統率されていない様だ。だから動きが読みづらいし数も多いから対処の難易度は上がって当然だな。」
「流石は第一第二王子様!分析力が素晴らしいですわ....って今の私達には最悪でしかないじゃない!!?」
「そだよ。」
邪獣はその辺考えていたのか竜人国に送り込んだ怪物達の量は他国と比べて多め、国を守る兵や戦士達が少ないわけじゃないが守備の隙を突いて一部が国内へ侵入しているのだ。
「なんでこんな事に...。」
話は巻き戻すこと少し前。
戦いが始まるにあたりヴィオレットら貴族の子供達は安全(だと思ってた)な城に避難。
その際ヴィオレットは友人らと合流した。
・竜人国第二王子のセア。
ヴィオレットの婚約者である。
年齢は10。
竜種族は背翼種。
・竜人国第一王子のエイレン。
セアの兄で歳は12。
頭が良く頼れる友人だ。
竜種族は背翼種。
・同じ歳で元意地悪令嬢のサンドラ。
実は誰かと仲良くなりたい不器用系でした。
年齢は12。
竜種族は背翼種。
・和風系の服装が好きな令嬢のモミジ。
かなり昔から王家を支える家系であるらしく、この見た目は昔からの伝統なのだとか。
年齢は11。
竜種族は前腕種。
・サンドラの若き執事であるフレーク。
自身が慕う令嬢サンドラを誰よりも理解しているイケメンボーイ。歳は12。
竜種族は前腕種。
いわゆるレギュラーメンバー。
ヴィオレットは彼らと共に今の人生を歩んでいるのだ。
彼らは才能あるもののまだまだ若い、城で事態が収まるまで避難をしていた。
だが邪獣の数暴力作戦を相手には分が悪かったらしく、とうとう城にも怪物の一体が襲撃。
怪物は壁を、窓を壊しセア達の部屋を襲う。
城にいる皆は悲鳴をあげ逃げる、セア達も逃げようとするもの瓦礫で出口が塞がれてしまう。
もうダメか...その時だ。
「はぃやあっ!!!」
「!?」
ドガァアアッとぶっ壊れる瓦礫、
皆は仰天。
「そーれ!!!」
「ギャオオオッ!!?」
瓦礫はズドーンと投げ飛ばされた。
「(ギロッ)」
「ぃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「どぅおるああああ!!!!!」
瓦礫が命中し吹っ飛んだ怪物が起きた先にはセア達の姿。血の滴る赤い目で睨むとサンドラの絶叫が響く。
そしてヴィオレットの剛拳が怪物を砕く!
現在に至るッ!!!
大雑把なあらすじ終わりである。
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「皆様、お怪我は?」
「大丈夫よフレーク。...ヴィオレットのおかげ様で。」
「相変わらずの馬鹿力だ、君はどれだけ僕らを驚かせる気だい?」
「お言葉ですがセア様、私の力を何度も目の当たりにしている癖にどうして慣れないのですか?」
「そ...それはだな...。」
「ヴィオレット。セアはただただ..、」
「皆さん、せめてそういうお話は脱出してからにしましょう。」
何か展開があると婚約者が反応、令嬢主人公物語でよくある事ですなぁ。甘酸っぺ。
って呑気にしている場合じゃないわ。
この子達才能自体はあるけどまだまだ弱すぎるのよね、いや私が異常なのだった。
エリアから聞いた話だけど雉野さ...じゃなかった、キジコさんは今事態の元凶を倒しに行ったそう。いいなぁ冒険系....。
なんにせよ今この子達を守れるのは私だけだ、歳上(前世年齢20)として頑張らなくちゃ。
「んっ...なにこれ、扉が開かないわ!」
「さっきの襲撃で歪んでしまったのでしょうか、であれば...。」
「私の出番ね!!」
私の言葉に皆が頷く。
「そりゃあ!!」
大きな扉を蹴り飛ばした!
「早く脱出するよ!」
「脱出ってどこに!?」
「あ...。」
「ノープランかい...。」
「2階の大広間に行こう、あそこも避難場所に指定されているから守りは硬いはずだ。」
「なら決まりね、行くよ!!」




