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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
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第284話 暗き魔女の森③

 その昔、自分はただの竜だった。


 強いて特別な所を挙げるならば...種の中で唯一遺伝子の突然変異により銀色の鱗を持って生まれたという事。


 色々あって勇者の称号を持つ奴らの家に住み、鍛えられたり旅をしたりと、生物としては平穏な日々を送っていた。


 家にやって来てある時[アルジェント]という名をもらった。その男...マース曰く「俺の世界のある言語で銀色を意味する言葉。」らしい。


 だとしたらかなり単純な名を与えられたと思うが別にそれほど気にはしなかった。 


 気になる事は他にあるにはあった。どういうわけか、十年、二十年、何年経ってもそいつらは老けない。


 変わったのはアイシャの妹達が大きくなり家を出て行った事。何年か経った日に家族を連れ数日泊まったりもしていた。


 長い時を生きる竜種の若造だった当時の我にはただそういう風にしかわからなかった。

 

 

 そんな平穏はある時消え去った。


 俺は体の色んな部分を傷つき失った。

 

 ソイツは黒い肉体、この世のものとは思えない異形の獣。突然町に現れ何もかもを滅ぼした。


 マースが守り、度々通っていたその町はほんの短時間で建物も生命も消え去った。


 その時マースと女は家を不在としていた、俺は単独で異形の怪物に戦いを挑んだ。

 結果は我が勝った、異形の獣の肉体は崩壊したが我の肉体も無事では無かった。


 今思えば五体満足で戦ったのはそれが最後だっただろう。


 その時戻ってきたらヤツらの顔は大粒の涙で濡れ怒りに震えていたのを今でもはっきり覚えている。



ーーーーーーーーーー


 フィアは力を解放し、魔力を放っている。

 クロマは上空から魔法を撃とうとする。

 

 「では行くぞ。」


 フィアは翼を広げ飛び立つ、クロマは魔法弾を撃ちフィアを落とそうとする。


 「ぬぅあああ!!!」

 「っ!?」


 魔法弾が効く様子は無く、フィアはクロマに向かってそのまま突進する。突進を受けたクロマは高く打ち上げられフィアは転移、先回りし尻尾で薙ぎ払い撃ち落とす。


 クロマは地面に叩きつけられる寸前に転移、フィアの目の前に現れ反撃をする。


 「波雷撃サンダーウェーブ。」

 「そいつも効かん。」

 「!」

 「その程度で我の魔力防壁バリアを壊せると思うな!防壁打撃シールドバッシュ!!」

 

 フィアのバリアが突然飛んできた、クロマはまともに受けて飛ばされた。


 「っ、落雷雨サンダーレイン。」

 「ふんっ!!」


 クロマは体勢を立て直し雷の雨を放つ、

 フィアは降り注ぐ雷の中、翼を広げて優雅に飛び回っている。雷は1発も命中していない。


 クロマはひたすら落雷を当てようと撃ちまくる、だがフィアはまるでどこから来るかをわかっているように動いている。


 「...!」

 「無駄だ、我はグランドドラゴン。空と陸を制し竜種、貴様ら人間と違い雷の予測程度難なく可能だ。」

 「...誘導プログラム...。」

 「遅い!!」

 「っ!」


 フィアはクロマの優位に立っている。雷を予測し転移を使い、圧倒的な強さで押している。焦っているのかクロマの行動に必死さがある、何がなんでも絶対に倒そうとする本能的な何かを感じる行動を。


 「!!」

 「どうした、何をそこまで必死になる!」


 「凄い...。」

 「ああ、...自分達がいかに未熟だと言うのを痛感するよ。純粋に強いだけじゃない、天候を察知し空を舞う...竜としての力を存分に使っている。」

 「竜種は獣人と同じく周囲の気配を高度に察知する力を持ってる、その中でも天候を読む力に関しては獣人を圧倒するどころかトップクラスだわ。特に雷は高い所に落ちる性質上、空を飛んだり森で暮らしている時は危険。それ故に竜種はそういった機能を持ったと一説で言われているわ。」

 「...悔しいけど今は任せるしかないか。」


 森の木々に隠れ、身を休めている二人。

 さっきまで必死に戦っていた相手にフィアがすぐに優勢になったと思うと少し複雑な気持ちになった。

 ダメージを与えたからもあるだろうが自分達が負けたのは事実、フィアが助けなかったら死んでいた。

 結局足でまといになったのかと、悔しい気持ちが湧き上がっていた。


 「何を落ち込んでいる!!」

 「「!」」


 言ったそばからだ、フィアは二人の様子を感じ取っていた。


 「貴様らが半人前なのは事実、だが貴様らはその小娘に傷を負わせた!そして小娘はそこにいる貴様らを今も警戒している、これで追い込むことが出来た、今までとった行動で動きを制限させる事が出来た!礼を言おう、現代の勇者達よ!!!」

 「「...!!」」

 「....!!!」


 追い込まれた末なのか、クロマは膨大な魔力を一気に解放し始める。最悪自爆をする可能性がある。


 フィアはその様子をすぐに感じ取り行動する、


 「フォースエナジー解放、体内魔力エネルギーと接続、融合を開始する。」


 フィアは何かをぶつぶつ言い始めた、

 するとフィアの体を淡い紫色の光が纏われ始める。


 「融合完了、」


 瞬間、フィアの肉体が強大な魔力の解放と共に輝き始める。


 「強魔力保有鉱石魔力フォースエナジー融合型フュージ体内保有魔力マジックエネルギー...解放完了。」

 「....極限雷魔力大放出ギガボルトバースト!!!」

 

 クロマは自身から全ての魔力を全体に向けて放出。その瞬間、無機質気味に話していたクロマから感情的な言葉で技を言い放つ。


 「...洗脳された心が揺らぎ始めたか!はあああああああ!!!!!」


 フィアはクロマが魔力を放出しエネルギーが広がり始めた瞬間に...なんと魔力を纏ったその体で抑え始めたのだ!


 「!?」

 「驚く様子もだいぶ明確になってきたじゃないか。いくら技が強くとも不安定になったその心では我を倒すことはもう出来ん!さっさと髪色戻して出直してこい!!!!」

 「!!!!?」


 クロマは全ての魔力を放出し切る前に技を解除した。

 同時に洗脳された体がフィア[達]勝てないと判断したのか、クロマの体が元に戻ってゆく。


 周囲の景色はただの荒地となり近くには黒い穴が空いていた。


ーーーーーーーーーー


 「....はっ!?」

 

 起き上がる狼獣人魔女っ子。

 目の前には二人の勇者、後ろには寝転がる一頭のドラゴン。


 「あれ...私....。」

 「...何も覚えてないのか。」

 「え、あーーーー!?なんで貴方がここにいるんですか!?」

 「待ってくださいクロマさん、アタイ達が説明しますから!」


 勇者説明中ピンポンパンポーン......


 「...すみませんでしたーーーーー!!!」

 「だから謝る必要ないんですってば!」

 「ふん、元に戻ったらやかましい小娘よ。さっきの方がマシだった。はぁー。」

 「んだとゴルァ!!!」

 「落ち着いてくださーーーい!!!」


 結局...元に戻ったクロマを宥め終わるまで黒い穴には突入しなかったとさ。










ーーーーーーーーーー


 「...ようこそ、ご主人様。私の部屋へ。」

 「黙れ、その体で喋るな。」

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