第279話 青き闇のバラ①
黒い空、
舞うのは青い花びら。
見渡す限り、青いバラが揺らめいている。
黒緑のイバラが道を開ける、
貴方は招待された、
黒い精霊さんのダンスパーティに。
「...ここは?」
「確か...穴に飛び込んで...っ!」
「これはまずいですね。」
目が覚めると3人、ニコ、朱斗、蒼鈴だけがその場にいた。
「そんな...みんなどこ!?」
「念話が届かない、どう言う事だ?」
「...どうやら、分散させられたみたいですよ。」
気がつくと周囲はイバラだらけ。
青いバラが見渡す景色を埋め尽くす。
「入った時にはぐれたか...。」
「誰かが単体になっているか心配ですが、今は私達がこの場にいる事を幸いと思うべきですかね。」
「みんな大丈夫だと思うよ。私達が無事なんだし。」
「そうか、だがあまり余裕はこけそうにないらしい。見ろ。」
イバラがカサカサと動き道を開けた。
「...青いバラ畑で戦うってか。私達の指名者は随分絵面を気にするみたいだな。今なら私ももっと綺麗に見えるかな?」
「かもな、俺もそう思ってる。」
「奇遇ですね、お茶ぐらい出るでしょうか?」
「言っとくけど私そう言った礼儀作法は得意じゃないよ。帰ったら習ってみる?」
双子は鼻で笑い堂々とこう言い放つ。
「「お断りだ。」」
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朱斗視点
俺達は開いた道を進んだ。歩くたびに前のイバラは道を開け、後ろは閉じていってる。
後戻りは出来ないのはリーツを出発した時点で決まっている。今更狼狽える事でもない。
さて誰だ?
俺達を誘ったのは。
歩いても歩いてもバラ畑。ほぼ同じ光景を進んでばかりで退屈だ。
「いつまで歩くの?」
「知らんな。」
退屈だ。
場合によっては眠くな....待て。
「お前ら。」
「わかってる、十分睡眠をとって正解だった。」
「あと3秒だ。」
パキッ
「ほら当たった、俺達の首を目掛けてイバラが伸びてきた。」
人間って同じ光景を延々と繰り返し見ていると催眠効果というのか、眠たくなってくる。
「なんだこれ、バリアにヒビが入ったぞ。手入れが行き届いてないな。」
「いや、そうなるよう育ったんじゃない?」
「なるほどな、ならあそこにいる園芸家は相当乱暴者らしい。」
バラ畑が円形状に開けてゆく。
その中心には毛先がバラのように青く黒い着物をきた精霊がいる。
真っ赤な目に映るのは彼ら。
「おぅどした?自慢の花が触られるのが嫌か?」
俺はイバラに火をつける。
『...!』
それに反応したのかソイツは俺に目掛けて槍のような木の根を伸ばしてきた。
「そんなに怒るな、間引きをしただけだ。悪い苗やら増えすぎた部位を排除して、丈夫に育てるのはお前が基本としていた事じゃないか、スア。」
『...。』
「朱斗、枝を減らすのは間引きじゃない。どちらかと言うと枝切りだ。」
「いや、蔓じゃないの?」
「どっちでも良い。」
わざわざ向こうから出向いてくれたんだ、探す手間が省けた。
「おら来いよ。」
スアは地面から色々禍々しい植物を生やしてきた。
「ウチを退職するなら....せめて1〜2年は働け!!!」




