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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
289/302

第278話 みんないるね?

 13月6日....リーツ邪獣襲撃から2日。


 普通なら皆ヘトヘトで補給も十分に確保なんて出来ない状態。町も桃花様が邪獣を少しでも抑えるために戦い荒れている。

 こんな時に大きな事なんてするはずがない、一度立て直し万全の準備が出来るまで動かないのが賢明だ。


 そう、普通なら。


 「...みんな、ちゃんと眠れたな?」

 「ああ、問題ない。」

 「不思議と快眠でした。」


 皆は私の質問に頷く。

 これは出撃しても問題ない...そう言う意味だ。


 私達は普通じゃない、正直誰がやられてもおかしくはない。なのに私達は行く...邪獣討伐に。


 「でかい襲撃受けて2日でやり返しに行くとはな、俺でもこんな事はしないぜ。」

 「今は“俺達”だ、一人一人自分以外の意見も尊重される。バッチリ参加してる時点であんたも普通じゃない。」

 「300年生きてる奴に普通なんて単語はなかなか無いもんだぞ?」

 「300年生きてなくても誰だってそんなもんだろ。」

 「はいそこ静かに、こっちは戦力限られて絶賛ピンチなの!私達は今から邪獣のとこにカチこむんだ、整列してシャキッと!」

 「お前は学校の先生か。」


 邪獣討伐組...

 キジコ、ハルカ、朱斗、蒼鈴、

 教授、フィア、ニコ、シルト、ヴェアート


 以上9名。

 他の戦力は町や国...この世界の守護に回る。


 勝てる自信はあるのか。

 はっきり思う、知らない。


 次...私が家で寝る時は皆がいる。

 ただそう決めただけ。


 絶対に勝つ、勝たなければならない。

 

 「さて、出発前に確認だ。昨日俺が持ってきた書類にも書いていたが、邪獣は自身を封印してでも器を捨ててでも生きようとするしぶとさがある。邪獣自身...邪獣の本体がなんなのか、ウィルスなのか精霊的な存在なのか、それがまだはっきりとはわからない。だが俺はもうヤツを逃す気は無い、これでも手立てはいくらでも用意している...この時のためにな。」


 冷静に淡々と話す教授、だが手を強く握りしめている...。


 「でも厄介なのは今邪獣が器としているのはルザーナ、強さも戦い方も違う。」

 「以前...当時の序列4の緋雨様ですら邪獣を倒すのに手こずった、さらに強く不慣れな肉体で桃花アイツといい勝負した時点で嫌な予感は当たっている。」


 戦闘力インフレどこまで進むんですかー。


 「だが勝負に出るなら今なのは確かかもな。」

 「ん?」

 「奴の器はルザーナと言う意思を持った複雑な存在、2日3日で完全に掌握出来るとは思えない。向こうに隠れているのは細部まで肉体を馴染ませるためだろうな。」

 「でも邪獣は思ってた以上に狡猾だ、そう思わせて私達を向こうにまた閉じ込める可能性がある。」

 「それもあるかもな。」

 「も?」

 「邪獣ウィルスがまだ蔓延していない。」

 「!」

 「邪獣ウィルスはそもそも器から発生させられる、当然そんな肉体となっちゃもうそいつは邪獣と言う存在そのものに限りなく近い何か、汚染、支配されたと考えている。邪獣ウィルスからも邪獣は人の負のエネルギーを集める事が出来る、それを今していないのはなぜだ?」

 「肉体を作り変えるため...。」

 「ああ、そしてルザーナ自身は抵抗しているはずだ。お前らの仲間がそう簡単にくたばるとは思えないのでな。」


 あの子達を救える希望が増えた。

 私は静かに頷く。


 「なら。」

 「さっさと行くか、アルジェ........フィア!」

 

 シュンッと転移で現れるプロト10ことフィア。


 「...随分古い呼び方をしてくれたな。」

 「.......。」

 「アルジェ...誰?」

 「キジコちゃん、アイツが言おうとしたのはアルジェントって言ってね。それは...、」

 「その答えが知りたきゃ邪獣をぶっ倒せ。行くぞ!」


 ちっ、面白い事聞けそうだったのに。

 邪獣を絶対に倒す理由が増えてしまった。


 「...倒したら洗いざらい聴取させてもらうからな、教授。」

 「当然だ。」


 私達はフィアの脚部に手を当てる。


 「じゃあ桃花様、行ってきます!」

 

 最初引き締まっていた緊張が緩んでしまったようだが気にしないキニシナイ。桃花様達に見送られながらレギスの森へ転移した。


ーーーーー


 レギスの森に着いた私達8人と1頭...竜って頭で数えるんだっけ?いや私自身もたまに匹で数えてて....あーもうめんどくさ。


 気を取り直して...。


 

 私達は神域のさらに奥...禁足地の入り口付近へ。

 そこにはテュー兄とマウ姉の姿があった。


 「待っていたよ、キジコ。」

 「テュー兄、邪獣は?」

 「入り口に変化は無いね、でも邪獣の魔力は...察しの通りだよ。」


 入り口に近づくだけで感じる邪獣の魔力、その恐ろしい気配に当てられ尻尾と髪の毛が今にも逆立ちそう。


 「...髪が変だよ、突入する前に整えたら?」


 っ!...髪に触れて気づいた、毛が逆立ちそうじゃなくて既に立った後なのだ。中途半端にボサボサになった髪とタヌキのような尻尾に私は驚いた。


 ...最悪の場合は腰を抜かした事にも気づかず呆気なく死ぬと言ったところか。


 「...。」

 「...キジコ?」

 「っ!!!」

 「!?」


 後ろでニコは白く輝いたが気にしない。


 「はわわ...き、キジコ様!?」

 「何を!?」

 「やり返しただけだ、髪は整えるのが大変なんだぞ。」


 入り口、奥深くまで届くよう威圧を飛ばした。

 喧嘩を売られたなら買ってやると言いたいがそんな甘っちょろい話じゃない。


 返品してやった、嫌がらせ込みでな。


 「...お母さん悪質だよ。」

 「邪獣程じゃないさ。」

 

 私は久遠を取り出す。


 「はっきり言う、普通ならちゃんと補給を確保し大勢の仲間引き連れもっといい感じの展開で邪獣に挑むだろう、だが実際は人手は十分じゃないし大半は国の守護、そして家族を掻っ攫われて私はすっごく焦っている!さっさと返してもらうぞ、あの子達を...私の家族を。邪獣、お前に用のある奴がここにいっぱいいるぞ、首を洗って長くして待ってやがれ。」


 もう一度威圧を飛ばした。

 喧嘩を売るのは私だ、お前じゃない。


 

 バチバチッッ!!!


 「!!」


 入口に黒い火花が散った。

 それがわざとなのか、本気で怒ったのか、

 わからないが私の喧嘩は買われたようだ、毎度あり。

 購入特典は邪獣討伐組です。


 「お母さん、みんな、準備はいい?」

 「ああ、いつでも殴れる。」

 「特に問題はありません、私も朱斗も。」

 「今回の討伐組はえらく楽しそうじゃねぇか。羨ましいねぇ、ただでさえ不味い状況なのに。」

 「そう言うお前も楽しそうだぞ。今まで集めデータを使い最終調整を終えた我を使うのがそんなに楽しみか?」

 「うるさい。」

 「キジコ、私は問題ない!ニヒッ!」

 「私達も問題ありません。」

 「アタイ達足引っ張らないよう頑張るよ!」


 「なぁ、今の勇者さん達よ。」

 「!」

 「突っ込む前に聞いておきたい、[アイシャ]と言う名前に聞き覚えはあるか?」

 「アイシャ...ぁ、何代か前の魔勇者です。確か邪獣を討伐した...?」

 「そうだ、...そいつは邪獣討伐後何があったか記録にあるか?」

 「いえ...。」

 「そうか。」


 教授は左手のグローブを取り手の甲を見つめる。

 そこには何か、紋章のようなのがあった。


 「!...その紋章は。」

 「変な事を聞いてすまなかったな。」

 「貴方は...!」

 「時間を取ってすまない、もういいぞ。」

 

 ...用は済んだみたいだな。


 「キジコ、帰りを待ってるからね。」

 「ルザーナちゃん達を助けてきなさい!」

 「うん!行くぞ!!!」


 私達は黒い穴へ飛び込んだ。

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