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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
281/302

第271話 ソレは青を濁す黒

 「これは...。」


 何層にも、何重にも、その魔法陣は張られていた。

 その奥は...黒。

 光を感じない真っ黒なドーム状の空間。


 ここが邪獣封じられし地、

 邪獣が眠りし地、

 災いの黒....。


 「...来てしまったか。」

 「これが邪獣を封じる空間....。」

 「この直径15m程度の真っ黒な空間に...今私達の目の前に災厄がいるのね...。」


 見ているだけでも震える、背筋がゾッとする、手に汗が出る。


 この封印が消えた時、私は意識を保てるだろうか、立っていられるだろうか、娘を守れるだろうか。


 〈お母さん、大丈夫。みんながいるから、私がいるから。〉


 ハルカは私の手を握る、

 その手はほんのり冷や汗があった。


 皆、怖いのだ。

 今目の前にあるのは冗談でもネタでもない正真正銘の災厄、私達はすでに恐怖を...生物としての本能がすでに感じ取っている。


 これが...邪獣....!!


 「帰れないからここに来たけど....私達はどうするのがもっとだと思う?」

 「封印を強化してみるという手がある。気休め程度かも知れないがな。」

 「一気に滅ぼせる自信は?」

 「無い。」

 「なら調べるだけ調べるって感じでいいね?私達は邪獣を復活させに来た訳じゃない。」

 「当たり前だ、邪獣は俺達をわざわざこちらへ案内して来た理由も知りたいね。」

 

 出口には行かせないのにここへはすんなり向かえた。ここに辿り着いた途端、オーラ個体が一体も現れないのだ。霧も晴れあたりは白い謎の花で埋めつくされている。


 さっきまではいろんな色の花があったが今は白一色で空も暗い。


 食物鑑定、この白い花...


 [ーーーーーーーーー]


 ・?ー?ー?ー?ー


 解析不能


 「あのドームはどうなっている....。」


 鑑定...


 [解析不能]

 [対象補足失敗]


 ダメだ...。

 封印の結界が邪魔しているせいかな、向こうの様子を確かめられそうにない。


 レーダー機動、

 ...っ!?


 「キジコちゃん!?」

 「...ごめん、レーダー使ったけどなんだろう...腰が抜けちゃった。」

 「しっかり、よいしょっと。」


 これもダメだ、濃密な負のオーラが邪魔で感じ取れない。


 「次はハルカが。」


 破邪のオーラ広げレーダーを起動。


 「....何も感じ取れない。ただの負のエネルギーしか感じ取れない、分厚い壁のように、底が深い海のように、確かめたいものに辿りつけない。」

 「僕も空を飛に回ったけど...他に何も無かったよ。」

 「マウリはどうだ?」

 「熱波で何か感じ取れそうか確かめたわ、でも結果はみんなと同じだわ。」

 「そうか...。」


 ブラックボックスならぬブラックドーム、何にも調べさせる気がない。ただ封印を解くためだけに閉じ込められたってのがよくわかる。


 「ヴァルケオ、イグニールさんに連絡は?」

 「...聞こえない。」

 「そう...。」



 あれ、

 聞こえない....?


 「聞こえない...それって!?」

 「加えてこの魔法陣、壊れていない。」

 「!?」


 ゾッとした。


 「ま...待ってよヴァルケオ、封印が壊れていないなら前兆個体なんて発生していないはずだよ。」

 「そうだよ、封印の魔法陣だって言うのは間違いない。何も壊れていないなら今までの事は一体.....、」


 「誰が全部、封印の魔法陣だと言った?」


 ああ、

 嫌な予感だ。

 悪寒で震える。

 

 「一番上のあの魔法陣...あれは封印の魔法陣ではない。[貯蔵の魔法陣]だ。」

 「!!」

 「ヴァルケオ、そんなまさか!?」

 「ギルドで配布される鞄には簡易の空間魔法が施されているのは知っているな?あれはそれの応用、ある程度魔力と知識があれば外からなんでも取り込める。邪獣は長い時をかけ封印の魔法陣一つだけを書き換えた、力を蓄えるために。」

 「ちょっと待ってよ...それだとさ、邪獣はこの封印をとっくに...。」

 「破っているな。[ヤツの本体である何か]くらいはとっくの昔からここにはいないのかもな...。」

 「...なんて事だ。」

 「でもヴァルケオ、だったら私達がここへ向かえた理由って...?」

 「認識だ。」

 「え?」

 「邪獣の負のエネルギーは生物...それも人間のような繊細な感情を主体に出来ている。だがそんなエネルギー、はっきりとした物を見た事は無いんじゃないのか?あるとしても感情で膨れ上がった力、感情そのものの力。そして色々な感情が混ざり合った何か、それを負のエネルギーとして俺達が観た時点でその精神的かつ概念的な力は本物の力へと変わった。」

 「...本当にやられたね、つまりこれは邪獣が眠る地ではなく邪獣のエネルギー貯蔵庫、私達はエネルギーを完成させてしまった側。なら邪獣が動き出すのはタイミングは...、」


 ....みんな!!!




ーーーーーーーーーー


 「...その体、返して貰うわよ。」


 血に染まった手を舐めるルザーナ...いや、それはルザーナではない。


 「この前聞いたわ、ルザーナちゃんが青と黒の炎を使ったと。呪力で構成された恐ろしい炎だって!」

 「...。」


 桃花はソレに拳を振る。


 ソレは窓を突き破り外へ飛ぶ。


 「っ!」

 「母上!?」

 「今のは!?」


 街道の中央には体勢を立て直したソレ。

 桃花はクロマとスアを魔法で治療し街道へ降り立つ。


 「朱斗、蒼鈴...その子はもうルザーナじゃないわ。」

 「!...抑えるぞ、蒼鈴。」

 「ああ。」


 「...ハイドラ・2。」


 ソレは髪が黒く、

 ソレは黒い鱗を現し、

 ソレは目が血のように赤く輝き、

 ソレは青く黒い炎を纏う


 「...我慢してねルザーナちゃん、絶対に助けるわ。」


 桃花はすでに自身らを中心に結界を張っている。

 結界の中は威圧で埋め尽くされている。

 結界が壊れた瞬間、住民は威圧で動けなくなり巻き込まれる死ぬだろう。


 「...ずっとそこにいたのか。」

 「覚悟は出来てるんだろうな...異物。」

 「私らが相手よ....邪獣。」

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