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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
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第264話 少女が引き摺り出す

 それは黒い空間。

 中には二人の人物の影と、倒れたロイヴィの姿。

 

 「あれは....誰だ?」

 「......。」

 「アイ?」

 「...行くよ、あにを助けよう。」


 吐いてスッキリした私が見たのは、

 アイの悲壮が混じる、無表情だった。


 「どうやって助ける、破邪の力が届かない。どうなってんだこれは...?」

 

 ハルカは黒い壁に破邪の魔力を纏い触れるもそれは壊れない。夜空の星を掴もうとするかのような感覚。


 今までとは違うもの。


 「...ハルカ、その魔力って黒いのに有効なの?」

 「?、そうだけど。」

 「私に分ける事って出来る?」

 「うん、破邪の魔力を送る事なら出来る。」

 「私に出来る限り送って。なんとかする。」

 「...わかった、無理はし過ぎるなよ。」



ーーーーー


 空が夕日に染まり始めた。


 僕は父さんと母さんと手を繋ぐ。


 温かい手に握られながら、


 道を歩く。


 僕がつまずいたら、


 父さんは僕を引っ張る、


 母さんが僕を支える、


 僕は笑う。


 「なぁロイ、お前は大きくなったら何になりたい?」

 「うーん...お父さんとお母さんを守る!」

 「そうか、なら老後の介護は心配ないな...。」

 「そうね。」

 

 僕は...父さんと母さんを守りたい。

 

 ...ずっとここにいたい。


 「頼むぞ、ロイ。」

 「私と一緒にいましょうね。」

 「俺達と。」

 「私達と....。」


 家族でありたい。


 早く帰ろう。


 僕らの家に...。


 僕らの...


 



 「あに!!!!!!!!!!!」


 

 それは何よりも眩しく、槍より鋭く、一番温かいようで、怒りの混じった氷のように冷たい声。まるでプレゼントを1ヶ月遅れで渡してしまったかのような重厚な何か、やらかした後悔と恐怖迫り背筋を凍てつかせその足を止める。


 ああこれはやばい、掃除機かけ忘れたとかの比じゃないくらいのお怒りを買った、皿洗い忘れたよりも深い罪を背負った、風呂掃除忘れる以上に大きな迷惑をかけた。


 洗濯物裏返したままの洗ったあの冷たい視線...!!


 きっと目覚めた瞬間、矢で射抜かれるよりも凄まじい怒号が来るに違いない.......、いや毎日してるわけじゃないんだよ?でもしっかりするべき社会人の兄がそんな体では情けないってのは正論過ぎるって!!!.....


 目覚める?

 それよりも....俺は何に恐れているんだ?

 何に怖がっているんだ?

 兄って誰だ...

 兄....?


 そういえばアイは..............ぁ、


 そうだ、

 俺を、兄と呼ぶ奴が、

 わざわざ訓読みでそう呼ぶ奴が、

 俺に平気で、躊躇なく、容赦無く、


 睡眠魔法をかけてくる怖い妹が...俺にはいる!!


 「...どうしたロイヴィ?」

 「早く帰りましょ。」

 「...帰るさ。」

 「なら...。」

 「俺の居場所に帰るのさ。お前らの行く先に俺を待ってる奴はいない、多分あるのはアイツのいないつまらない日常、波の無い大海原でじっとしてるようなものだろう。今の俺はなぁ...妹に尻敷かれてんだよ、だから俺の居場所はこんな生温い世界じゃねぇ......氷河期が何度も訪れる寒くて危なっかしいあの世界だっっ!!!!」

 「!!?.......、」


 世界に白いヒビが入り、


 俺は手を伸ばした。


 そして向こうからも手が見えた。

 幼い女の子の手。


 その手は........俺の足を掴みヒビの中に引き込んだ。

 ...いや、外に連れ出された。



ーーーーー


 「どぅおおおるあああああああ!!!!!」

 「ええええええーーーーーーー!!!??」


 ハルカは目を疑った。

 11歳程度と思われる少女は黒い壁に手を突っ込み豪快にロイヴィを足から引っ張り出しやがったのだ。


 「ついでに起きろ!どっせい!!!」

 「ぐおおあああっっっ!!!??」

 「ロイヴィさーーーーん!!?」

 「ぐはっ、ぐへっ、....アイか?」

 「はぁ、やっと助けれた。」


 ロイヴィの顔に雫がポタリポタリと落ちている。

 その魔法具の隙間から。

 

 「...心配をかけるな、親戚がいるかもわかんないのに私を置いていく真似はするな。あと風呂掃除4回サボった分の埋め合わせもしてもらってない皿洗い3回忘れたぶんの代わりもさぁ?」

 「.....はい。」


 あれ、アイから変な赤黒いオーラが見えるよ?

 心なしかその涙は液体窒素のように冷たく見えた。

 

 でも...悪い涙ではない。


 「...。」


 黒いオーラがを纏うその二人はこちらを見ている。

 

 「....アイ。」

 「わかってる、あんな黒い空間の中は...私ははっきり見えてたから。」


 アイは二人の所へ向かう。


 「...ハルカからある程度は聞いたよ。だから本物じゃない事くらいはわかる。」


 アイは魔法具の目隠しを外し、ルビー色の瞳で二人を見る。


 「...さようなら。」


 その瞬間二人は紅蓮の炎に包まれる。


 「....アイ。」

 「....。」


 「...ありがとう。」

 「「...!!」」

 「元気でね...ロイ、アイ。」


 

 ...その言葉を最後に、二人は炎の中に消えた。

 

ーーーーーーーーーー


 「...おやっさん、御者さん、アイ、それと...。」

 「ハルカです。」

 「ハルカさん...迷惑をかけてすんませんした!!」

 

 ロイヴィは頭を深く下げた。


 「ロイヴィ、お前さんは何も悪かねぇよ。得体の知れない奴から助け出せなかった俺の方が情けねぇよ。」

 「おやっさん...。」


 ひとまず解決かな。

 教授、人型の前兆個体は強い奴が基準だとか言ったけど早速外れたよ。



 ゾォッ


 「!!!!!???」


 突然それは起きた。

 今まで感じたことが無い重厚な威圧、

 それを感じ取ったのは私だけのようだ。


 「うぉ、ハルカさん!?毛が逆立ってるけどどうした!?」


 これ....お母さんが言ってたやつか?

 一体、人型の前兆個体の存在ってなんなの?


 結局この時、答えは見つける事は出来なかった。

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