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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
273/302

第263話 少女と囚われの兄

 ...あれ...


 俺...何を...


 確か...父さんと...母さんが...



 「ロイ、どうした。」

 「...!」


 夕日になる前、

 日が沈み始める時間、

 俺はどこかの草原にいた。


 気がつけば俺は...僕は寝ていたのだ。

 父さんが俺を起こしてくれた。

 目の前には母さんがくすりと笑っていた。


 ....そうだ、僕は父さん母さん達この場所にやってきたんだ。いつものように...手を繋いで散歩を、いつものように笑いながら。


 父さんと母さんの温かい手に握られながら。

 

 「そろそろ帰りましょう、ロイ。」

 「暗くなる前に帰るぞ。」

 「...うん!」


 帰ろう、僕ら4人で.....


 4人....?


 僕は何を思っているんだ、僕達家族は3人だろう。

 僕に兄弟も姉も妹はいない、そうだ、そのはず。


 僕達は幸せな3人。

 幸せな....家族。


 [ずっと続く]


 幸せな日々




 「はぁ....はぁ....な、何が..起きていやがる!?」


 親方と馬車の御者は身構える、今目の前で起きている状況に。


 「テメェら何者でぇ、ロイヴィの親はとっくに死んだと聞いてるぜ。だったらテメェらそっくりさんは一体誰だ!!」

 「...。」

 「...。」


 先程ロイヴィはその場に倒れ、謎の二人は


 「ロイヴィを離しやがれ!!」

 「お客さん、危ない!!」


 親方はその辺に落ちていた木の棒を片手に、黒いオーラを纏ったロイヴィの両親らしき人物に襲い掛かる。


 「今助けてやる!!」

 「....。」

 「なっ!?」


 親方は木の棒を振り男を叩くがビクともしない...いや、黒いオーラがバリアとなり触れる事すら出来ないのだ。


 「どうなってやがる...おい、ロイヴィ!返事をしやがれ!!」

 「お客さん逃げろって!」


 黒いオーラの中でその二人はロイヴィをただじっと見つめる。

 その赤い目でずっと見ている。


 「...訳がわからねぇ、アイツらは何がしてぇんだ。...ロイヴィ!!」


 しかし声は届かない。

 そして己では力不足。 

 近くの町まではまだ距離がある、警兵を呼ぶ間に何が起こるかわからない。

 

 「...今助けてやる!!」


 親方は無力とわかっていてもロイヴィを助けようと木の棒でとにかくバリアを叩き続ける。


ーーーーーーーーーー


 どこかの空...


 青白いワイバーンに乗りロイヴィの元へ急ぐ少女が二人。

 凄まじい感知力を持つ少女。

 とんでもない視力を持つ少女。

 髪を靡かせ竜の背に乗り飛んで行く。


 「あに...今行くよ。」

 「アイ、あんたの勘は大当たりだよ!まだ薄いけど向こうら辺から黒い気配を感じるよ。とても嫌な予感がする!!」


 アイは兄ロイヴィに危機が迫っている事に気づいた。

 妹だからか、目に関する様々なスキルの中にそう言うのがあったからなのか、詳しい事は鑑定でもしない限りはわからない。


 でも気づいてしまった上に友達の兄だ、手を貸さない理由はない。


 私は友達として全力で助けてやる。


 「アイ、聞いてもいい?」

 「?」

 「アイは何かスキルを持ってる?戦闘になる可能性が高い。」

 「持ってる、普段は採取依頼しかしてないけど持ってるよ。洗脳されてた間に身につけた技全部使える。」

 「なら、私の頭に手を当てて!魔力共有で連結リンクスキル[視覚共有]が使えるか確かめたい。」

 「?...わかった。」


 私の後頭部にアイの手が当てられる。


 「私に魔力を送り込んで、私はアイに魔力を送る。」

 「こう...?」


 すると両者から不思議な魔力が溢れ出す。


 「(お母さん、手伝って!)」

 〈あいあいさー!!〉

 「〈連結リンクスキル、視覚共有!〉」

 「加えてレーダーフル稼働!」

 「スキル[アイサイト・ディスパーション]。」

 


 それは凄まじかった。

 まるでゲームをしているかのような視覚。

 

 見える。

 あらゆる方向が見える。

 そしてフル稼働レーダーがさらなる感覚を掴む。


 言葉だけでは表せない重複効果。

 これは...

 これは......

 これ....ウプッ、


 やばい、酔ってきた。


 「解除して....グフっ。」

 「え、え。」

 

ーーーーー


 「...普通に戦おう。」

 「うん、青い顔見ればヤバかったのはわかる。」


 危ねぇ、こんな空でゲロりそうだった。

 あんなの慣れるのにはかなり時間がかかる、人間の脳では処理するにゃ負担が大きい。


 戦う前にカッコつけて使うんじゃなかった。

 

 「...大丈夫?」

 「うん...。」


 アイが私の背中をさする。

 

 「...あれは!」

 「あに!!」


 見えてきたのは道と平原、そして馬車と...


 黒いオーラだ。


 「あれか.......ウプッ!?」

 「竜さん降りて降りて。」


 このあと少し離れた位置で吐いた。

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