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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
268/302

第258話 ハッピーバースデーワタシ

 「...。」


 家の屋根の上。

 私は猫の姿で星空を眺める。

 前世の夜空よりもずっと輝く星々。


 「...ハッピーバースデー、私。アイムさんじゅーよん。」


 12月27日、前世で私が生まれた日。

 雉野きじの 小夏こなつとして向こうの世で生まれた大切な日。


 三十路を超えて男運無かったが幸せだったよ。

 日菜ちゃんも元気でいるといいな....。


 思えば向こうの世界に行く事って出来ないのかな、

 世界という概念があるならば行けない訳でもなさそうだ。


 でもトラブルが舞い込む私の生活だ、

 案外世界を巻き込むデカい事件あったり...なんてな。

 現在進行形で邪獣っているソレが起きてるからフラグは多分大丈夫。


 

 ...誕生日かぁ。


 お父さんお母さん、毎年私のためにケーキ買って来てくれたのがまた懐かしい。わざわざデパートで売ってるようないちごがこれでもかと使われたのを買ってくれた。


 今度作ろうかな。

 ルザーナやクロマにスアと作ろう。

 ニコも呼ぼう、

 朱斗にも教えよう、アイツそういうの作るの好きだし。

 

 次は私が作る番だ、

 ハルカに作ってあげよう。

 誕生日聞かないと。

 あの子の母親として。


 はは、こんな猫になっても楽しみが尽きないなんて。


 「お母さん。」

 「ん?」


 またハルカが屋根に。

 また見えてるってはしたない。

 あんたはハイソックスなんだから見えるんだって、

 夜空に水玉見えてるって。


 「おいしょっと。」

 「なんだ、母親抱えてどこに連れてく気だ。動物病院か?私人間だぞ、一応この世界保険証あるよ?」

 「連れてかないよ、お母さんバチバチ健康じゃん。連れて行くのは館だよ。」

 「館?何かあったの。」

 「うんあった。だから私がタクシーになろう。」

 「ん?」


 様子からして邪獣とかそういうのではないようだ。

 ここはハルカに任せよう。


 「ハルカ、重くない?」

 「霊獣覚醒後のお母さんの猫形態は体格の大きな家猫くらいでしょ。尻尾増えても猫だね。」

 「でもハルカの体格じゃ難しいでしょ。」

 「忘れたの?私も統合スキル[化け猫]を持ってるんだよ?」

 「...!」


 ふと気づいた時に目の前に私がいた。

 でも髪型が少し違う、私よりもサラサラ。

 顔も少し違う、目が半目気味。

 でも可愛らしい女の子....、


 !!!!


 「どうお母さん、妖変化でお母さんのノーマル獣人形態と同じ15歳くらいをイメージしたけど。身長もほぼ同じだからこれじゃ双子だね。」

 「...ぁ...ぁぁ...。」


 私は獣人に速攻で戻る。


 「お母さん?」

 「ぁぁ...綺麗...綺麗だよ...晴夏...!」

 「どうしたのそんな顔赤く涙ボロボロこぼして。」

 「だって...だってぇ...娘が...こんな綺麗に....。」

 「これじゃお母さんが泣き虫妹だよ。」


 夜空の下に現れたそれは何よりの宝。

 いずれ訪れる磨かれた宝石も姿。

 私の涙は止まらない。


 「おやおやどうしたの、どっちがキジコちゃん?」

 「...!、どう゛がざま゛...。」

 「あーあーキジコちゃんグシャグシャになっちゃって。娘の成長した姿に泣いちゃった?」

 「お母さん、涙脆くなるには早いよ。」

 

 ハルカは私を抱きしめる。

 どうしても泣いてしまう、その姿に。

 もうとっくに涙脆い歳なのかね。


 私は涙を拭いハルカを抱く。


 「いい光景やね、太陽より輝いとるわ。」

 「お母さん、早く行くよ。」

 「ぐずっ...うん!」



ーーーーーーーーーー


 えーと館の大広間へ向かっているのか。

 でも明かりがほとんどない。


 「停電でも起きたの?」

 「大丈夫、あの扉を開けたら一気に眩しくなる。」

 「?」


 

 


 ガチャッ


 「ハッピーバースデーーー!!」


 「...!!!」


 え...


 あ...


 ああ.....


 「そっちの言葉でお誕生日おめでとうって意味であってるわね?」

 「うんあってる、お母さん誕生日おめでとう。お母さんのために準備しました!」


 綺麗な装飾、

 色んな食べ物、

 私のためにここに来た皆、

 こんな私を祝うために、

 大変な中...私の誕生日を祝うために....

 

 ボロボロボロボロ...


 「お母さんまた泣いちゃってる。」

 ル「ご主人様ーっ!!...ってあれ、そちらは...。」

 ク「師匠おめでとーーっ!!...あれ、もしかしてハルカさん?」

 ス『親子だからそっくり、誕生日おめでとうなの。』

 朱「おいおい、扉開けた途端見た事あるようで無いのがいるんだが。」

 蒼「驚かす側を驚かせるのはやめてくださいよもう。」

 ニ「キジコーーーおめでとーーーーっっっ!!!」

 菫「おめでとうございます、キジコさん!」

 

 「な...なんで私の....。」

 「私が教えたの。頑張ってるお母さん誕生日なのに祝わない訳にはいかないからさ。」

 「ハルカ...。」


 「おめでとうございますキジコ様!それとヴェア、ご苦労様。」

 「大変だったわ。」

 「やっぱりヴェアさんも知ってたのか。」

 「フフンッ!」


 なんと、落胆していたとはいえ気づけなかったとは...。

 私って心理戦弱いのかな。


 「キジコ様、帝王様や女王様からこちらを預かっております、どうぞ。」


 キジコは[ブラックスターマリン]を手に入れた!

 キジコは[ホワイトスタースカイ]を手に入れた!


 「これは...?」

 「我らの国のお守りでございます。」

 「黒は帝国から、家族や仲間との絆という意味があります。」

 「白は王国から、自身の輝きと美しさという言葉が込められています。」 

 「ほぇぇ....すごい高いんじゃないの、これ。」

 「その大きさとあれば物凄い価値が付きますね。」

 「やっぱりか!」

 「今後ともどうぞよろしくお願いしますって意味合いもありますけどね...。」

 「構わないさ、聖王国の首都はまだ行った事ないからね。」


 すごい物をもらってしまった。

 盗まれないようちゃんと管理しないと...。


 それからも私へのプレゼントラーッシュ!

 

 ・桃花様親子は謎の魔法陣の描かれた紙。

  触れると...


 (補助サポートスキル[鑑定(10)]を習得しました。)


 「....ふぁっ!?」


 ・ニコは和服洋服の数々、色んな帽子や構わない飾りやその他などなど、とにかくファッション関連。


 「似合うのいっぱい買ったよ!私の目に狂いはなかった、またお出かけしよ!」

 「うん!」

 

・ゼ「誕生日おめでとうございます、キジコ様!」

 「ゼオ君達も来てたのか!」

 ア「これ、皆んなで作ったの...クッキー!」

 ミ「アリアの案なのですよ、プレーンとココアのハート型マーブルクッキー!」

 ケ「アリアは女子力意外と高いっすねぇ!」

 ア「ぃやああーーー言うな!!!」

 ス「別に照れなくてもいいだろう。皆で作ったのだから。」

 レ『私は楽しかったぞ。』

 ゼ「まぁそんな感じだ。」

 「美味ーい!」

 ゼ「もう食ってる!?」


 ・守護獣組

  代表でヴァルケオが私にそれを渡す。

  大きな箱に入ってるけど

 

 「これは...鏡?」

 ヴ「ただの鏡じゃないさ。」

 桃「これ...明鏡銀めいきょうぎんの鏡じゃない。これまたお高いの貰っちゃって。」

 「明鏡銀?」

 桃「鏡として使われる希少な銀よ。産出量が元から少ない上に加工も難しい素材だから高いの。でも見ての通りとても綺麗でしょ?大切にするのよ。」

 「はい!」

 マ「おめでとう、キジコちゃん!ギューッと!」

 テ「マウリ、キジコ苦しそうだよ。誕生日おめでとう、キジコ。」


 プレゼントの数々は家に入りきるのかが怖い。

 特にニコは数が多い、本人は親友だから!って言って早く着てくださいって目を輝かせていた。パーティ中に着替えなきゃな。


 「...あの、ご主人様!」

 「!」

 

 ルザーナ達が私の前に来る。

 手に持っているのは箱。


 「これ...皆で作りました!ご主人様のために、これからも皆のために!」

 「...!!」


 それは黒い表面と厚く白いソール。

 壊れた靴と同じくシャフトが付いておりマジックテープのタイプ。

 ソールは力の分散や吸収など機能性がしっかりあるデザイン。これが出来るのは...間違いなくあのヴァリールだな。

 これすごい、今の私に凄く合う重さ。

 漫画とかなら「すげぇ軽ぃ!」とかなるだろうけどこれは違う。

 軽いには軽いがズッシリ、ちゃんと重量がある。


 何よりこの気配...私の靴の...。


 「キジコ、その靴はあの靴が生まれ変わった姿だ。魔法具[閃光]を雛形にキジコのために生まれた靴。」

 「名付けて...[ 猫風ねこかぜ ]。ただ光にならない、輝くだけじゃない、流れる風は人を包み、己の道へと自由に進む。その風は自分だけじゃない...私達にも、今も渦巻いています。そしてご主人様、私は...私達も...貴方の風としていたいのです。今後も何が起こるかわかりませんが...改めて、よろしくお願いします!!」

 「うん、こちらこそよろしく!」

 「師匠ー!」

 『主ー!』

 「あっ!...ご主人様ー!!!」


 ...プレゼント、帰ったら整理しないと。



ーーーーーーーーーー


 「ふぅ、ちょっと食べすぎた。」

 「私も。」

 「二人共似てるね、双子に見えるよ。」

 

 館の屋上、いつものように風に当たる私とニコ。

 そしてハルカもいる。

 

 「綺麗でしょ、私の娘は。」

 「うん、私があげた服似合ってる。」

 「なんで私お母さんの服着せられてるの。」

 「いいじゃん、親子でこういうのも悪くないでしょ。」

 「まぁ...悪くない。」


 ニコのプレゼントの服を親子揃って着た。

 私はニットとデニム、そしてスニーカー。

 ハルカはジャケット、デニム。いつも履いている真っ黒な厚底皮ブーツと似合っている。


 「ねぇ、お母さんの記憶に誰かと一緒に屋上で夜の町や空を見る光景が結構あるんだけど、お母さんはこの景色が好きなの?」

 「そうだよ、何かあるといつもここにいたなぁ。」


 今更だがこういうの、今まで何度しただろうか。

 この景色が好きだから。


 「ここにいたのですね。」

 「あれ、菫ちゃん。」

 「ヴィオレットさん!」

 「綺麗な景色ですね、私の暮らす所にも負けない絶景です。」

 「でしょ?」


 「...いいですね、前世の誕生日を祝ってもらえるのは。」

 「...!」

 「今の私の誕生日はこっちの世界基準ですからね...少し寂しいな。」

 「菫ちゃん...。」

 

 この子も転生者、

 私と違う生き方をしていても向こうの世界を懐かしむ気持ちは同じ。

 

 「...あんまり辛気臭い話はするものではありませんね。」

 「そうだな、今日は私の誕生日だしな。なんか話して笑おうや。」

 「ふふっ。」

 「師匠ー!」

 「ちょうどメンバーも増えた、そうだな...。」


 私の異世界生活はとても濃い。

 胃もたれするほど濃い日常。

 起きている時間は1年も満たないのに、多くの出会いをしている。だから今日こんな事になってしまったのだろう。


 無いわけじゃないけどさ、

 もっと静かな日は来ないもんかなと、物欲センサーに引っかかっての毎日。


 しかし同時に思う。

 ありがとう私の運命よ。

 お陰で今私はとても幸せだ。

 

 私はこれからもこの世界で頑張って生きてやるよ、それが皆にとっての私、私にとっての私だからな。


 「お母さん、これ。」


 お、これはハチミツのサイダー。


 「ちょうど2個残ってた。」

 「そうか、じゃあハルカという私の誕生日も含めて。」


 「「乾杯!」」

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