第253話 燃えるのは何か
〜ハルカ視点〜
現在私は焦っている。
それはなぜかって?
「お母さん、帝国に行っちゃったーーーーっ!!」
今夜サプライズでお母さんの誕生日会をするって言うのに、急な仕事で帝国に行ってしまったからだ。
今日に帰っては来れるだろうけど予定時間に間に合わない可能性がある。
ん?ならばずらせば良いって?
ダメなんだってそれがぁ!
実を言うとね....お母さんの誕生日パーティをこんな状況下で行うべきかって最初は会議したんだよ?
私も別の日でいいんじゃねって思ったよ?
でもね.....、
ヴェア「祝ってあげるべきです!キジコ様は色々な事件の功労者です、誰に何を言われようが誕生日は大切にする物ですよ!!」
シルト「落ち着いてヴェア、でもキジコ様の誕生日を祝うのは賛成だよ。」
帝王「ああ、キジコ[様]にはまだ恩を返しきれていないのでな。あのお方は強欲だがこだわり気味だ、今回ばかりは盛大に祝わせてもらいたいな。」
女王「私も賛成です。」
竜人王「あれぇ、何か面白そうなのしてるじゃん。」
桃花「うわぁあ!?あんた呼んでないぞ傍受野郎!」
竜人王「おいおい忘れちゃ困るぞ。うちの2番目の息子の婚約者のご令嬢はキジコ様とすげぇ仲が良いんだぜ。王としてもその辺手伝ってやるって言いたいのさ。」
桃花「わかったわもう。」
桃花「あれ、ガイストとエルタナに繋がんない。」
竜人王「じゃ後でいいだろ。」
桃花「そうね。」
ハルカ「...本当にしてもいいんだね?」
全員「意義無し!!!!」
ハルカ「...じゃあ時間は12月27日夜7時でお願い出来ます?」
そして私は屋根の上で昼寝している母の元に向かいました....。
...とこれが昨日あった話だ。
つまるところ話を広げたせいでタイムリミットが生まれてしまったのだ。
私のせいだけど。
そう言うわけで私達はお母さんを夜7時...19時までには町に帰らせないといけないのだ!!ええい、まずいぞこれは!!
「連絡はついた、転移役の用意はなんとか頼めた。」
「ほっ、帰路は確保出来たね...。」
「だがこの話はお偉い様に広げてしまったんだ、このままだとケーキ以外に蝋燭立てるハメなるかもなぁ...。」
「大丈夫だ、仮にも一国の主が私達に蝋燭立てる真似はしないだろ。火がつくのは世間様だ。」
「結局ダメじゃねぇか!」
「まぁどっちもないだろうさ、そもそもこれは私達からキジコ様へ何かをする話だ。流石にそこまでの事はない......、」
「緊急報告!!!帝国方面の街道にて邪獣前兆個体が発生!!!加えて前兆個体の能力により森が火災、大混乱になっています!!!」
「...すでに火は付いてたのか。」
「言ってる場合ですか!!?そこにお母さんが!」
「!!」
ーーーーーーーーーー
〜キジコ視点〜
「火事だあーーーーーーっ!!」
「!?」
「キジコ様、火災です!森が燃えています!!!」
「はああ!?」
馬車に乗って帝国へのぶらり旅終了。
慌てて窓から外を見ると、紫色の炎が森を燃やしていた。
付近の傭兵や兵士達が水魔法をかけている、だが火は進む...いや消せない!?
間違いない、あの炎は魔法によるものだ。
普通の日なら今の水魔法でもしっかり消える、だが全く消えていないって事はあの炎はその魔法を上回る魔力を有し燃えている、つまり強い魔法そのもの。
これはまずい!!
「御者さん、近くに怪我人がいるか探して!!燃え広がる速度が速い、早く乗せてあげて!!」
「了解しました!!おーい、この馬車を使えーー!!」
よし、次は少しでも燃え広がるのを防ぐ!
あれが魔力で出来た炎ならこっちも魔法だ。
水魔法は覚えてないけど魔力なら自信ありじゃ!!
いきなり全力で行かせてもらう!!
「霊獣妖力...大妖怪モード!!!」
深紅の衣が私の体に取り込まれる。
髪と尻尾が妖炎色に染まり妖しく光る。
鋭い金の目が見る先には火災、
レーダーで感じ取るは邪獣の前兆、
「見つけた...あそこだな!とりあえず炎は彼に、幻魔召喚...ヤグルマ!!」
ヤグルマを召喚、私は命ずる。
「燃え広がる炎を消せ、今のヤグルマなら容易いだろう。」
『御意。』
「なんだ、黒い獣人が現れたぞ!!」
「おい、炎が!!」
人々は騒ぐ、
ヤグルマは空気を操る、
火は酸素を失い消えてゆく。
「そこまでだ、あとは道を開けて欲しい。」
ヤグルマが手をかざすと、炎が消え道が現れる。
その先にいるのはサラマンダー。
「シュルル.......!!!!」
「アイツか....連結発動、破邪の魔力を貸してもらうよハルカ...魔砲弾。」
青白い光の爆発が人々の目に入る。
黒い結晶が跡形もなく消し飛ぶ。
炎が消えてゆく。
「...討伐完了。」
「おおおおーーーーー!!」
「キジコ様ーーーー!!!」
はぁ、鳥とりあえずこれで帝国に向かう事が出来るってわけだ。馬車降りちゃったな....まぁ金はあそこに置いてきたから無賃では無い。
「あ、あの、キジコ様はどちらへ!?」
「ん?」
「も、申し訳ありません!どこかへお向かわれてるご様子でしたので!」
「ああ、帝国に少し用があるだけです。ただこれじゃ帰りが遅くなってしまいますね、はは。」
「であれば...、」
ーーーーーーーーーー
「報告です!!!邪獣の前兆個体はキジコ様によって討伐!!同時に火災も消えたとの事です!」
「...お前がその連絡スキルとやらが発動した時点で察したが無駄な心配だったな。」
「うん...。」
「それももう一つ、現在のキジコ様なのですが.....、」
「ひゃっほーい!!」
街道の馬車用道をかける馬、
たなびく雉虎柄の髪の女性。
「ヒヒィーン!!」
「早いなお前!まさかあの時のリトルユニコーンの兄弟に妹がいたなんてな!」
それは闘王闘技が始まる少し前、私がレギスの森で修行をしていた頃にたまたま森で魔物に襲われたヴィリーという貴族を見つけて事があった。
魔物に襲われて従者や馬車の馬と逸れた所を助け感謝された事があるのだ。
その時ヴィリーが連れていた馬はリトルユニコーンという、ユニコーンの末裔に当たる種族だったのだ。
その子達は兄弟なのだが先祖返りでユニコーンのような大きな角を有し、勝手な危険性を押し付けられ殺処分寸前の所をヴィリーに拾われたそうだ。
そして実はその兄弟に妹がいたのだ。
さっき話した男はヴィリーとは知り合い関係であったらしく、ヴィリーからその妹ユニコーンを預かり可愛がってたそうだ。
そこでたまたま困ってた私を見かけ、その子の兄達を助けたお礼で貸してくれたのだ!いやぁ、人の繋がりって広いよねぇ!
「(兄達を救ってくれてありがとうございます!お礼に私をコキ使ってください!!)」
と、念話翻訳越しに感謝の言葉もくれた。
これなら思ってた以上に早く着きそうだ!
ちなみにこの子を貸してくれた貴族さんは適当に馬車に乗って後で向かうそうだ。
気の長そうな人で安心した。
「よーし、いっくぞー!」
「ヒヒィーン!!」
しかし馬車と違い割と目立つ。
そのため霊獣がリトルユニコーンに乗って帝国へ走って行ったと話が広がったり、私が乗った馬車は人助けにも貢献したとかで有名になり、後に大出世して富を築いたのだとか...まぁ私は知らね。




