第242話 親子でギルドに
〜ハルカ視点〜
翡翠亭での食事を終えた私達。
お母さんはご機嫌、サプライズには気づかれていない。さてこれからやる事は...、
・お母さんをクルジュさんのお店に近づけない。
・館のもう一つのプレゼントに気づかれない事。
...の二つだ。
なるべくこのまま上機嫌でこの日を終えて明日を迎えてくれると良いんだけどなぁ。
お母さんはじっとするのが苦手だからほぼ同じ思考を持つ私がカバーやらフォローやら色々しないと。
「んじゃ俺は館に戻ってる、弁当を冷蔵庫に入れておかないとな。」
「それじゃ私ら女子3人はこのままどこか行ってるわ。」
「いや母上はまだ仕事残ってるだろ。この町に来たついでだ、片付けるぞ。」
「あああ母親を引っ張るなああ〜!!」
桃花様は蒼鈴にしょっ引かれました。
「んー.....クルジュさんの店にまた行かない?」
「それはダメ!!!」
「なんで!?」
とりあえず制作で忙しいと言っておいた。
間違ってないし。
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「おい...あれ...。」
「キジコ様だ...。」
「隣の女の子は誰だ...?」
ざわめく人々の声...、
「久しぶりに来たな...。最近は直接布の買取依頼来て、稼ぎは困ってなかったから。」
「私も久しぶり、記憶は研究所襲撃の頃から分岐したものだからね...。」
今私達はギルドの前にいる。
お互い最近ここに寄ってなかったからか、私達をみて冒険者や住民がざわついている。
...いや違うな、ざわついている原因は..、
「お子さん...?」
「いや、妹さんだろ。」
「親戚じゃないのか?」
「それにしたって可愛いのは事実だ!」
「ああそうだ(キリッ)。」
...私だな、お母さんが私を連れて歩いてるからこうなってるな、うん。
「(お母さん、周りの目どうするの!)」
「んー...燈朧。」
「え。」
「おお!?キジコ様の姿が変わった!」
「やっぱり親子なんじゃないのか!?」
ややこしくしやがったーーーーーっ!?
いや確かに親子だけども!?
「...この子に近づくなよ?」
ここに来て母性本能!?
...ギルド長の部屋...
「お待たせしましたキジコ様。それと....。」
「ハルカです。」
「ハルカさんですね、了解しました。」
相変わらず威厳のある見た目だな、ギルド長。
今回ここにやってきたのは他でも無い、特別な依頼を受けに来たのだ。内容は大まかに言うと一般、上級の狩人や冒険者、兵士にでも頼めないような高難易度の依頼。今の私達のような化け物級の実力者でも受けられないとかそう言うのだ。
「今回来ていただき助かりました、手がつけられない依頼が一件舞い込んだのですよ。」
「これは...。」
依頼者:シルト・ソーレ
・現在、王国領域で[スティング・ホーン・ディアー]の群れが邪獣の前兆個体に住処を追われ、周辺の町や森で暴れると言った被害が出ています。数は55頭、この依頼は群れの個体を元の住処に返すものであり討伐依頼ではありません。そのためこの依頼は、かなりの実力と人手が必要となります。
報酬:50G
「結晶の生物に住処を追われた魔物の群れの鎮圧です。」
「なるほど...そう言った二次災害が起き始めたか。」
「幸い、この地域はムート王国領内。聖勇者シルト様が結晶を破壊したそうですが、結果的に起きてしまった事であり結晶に続きこの件を受ける事になったそうです。しかしこの件を片付けには実力者の人手が足りないと言う事です。」
「今王国兵も各地の街の守護や調査で人手回してるし、動員出来る人手が限られるのは仕方ないか...。」
「厄介だね...この魔物、[スティング・ホーン・ディアー]は普段は大人しいけど気が立ったらハードアイアンディアーより手がつけられない。確かにこれは並以上の人じゃ手がつけられないね。」
「おっしゃる通りです。加えて頑丈な肉体を持っている故、暴れた後の森の木々や住宅が荒々しく傷付けられると言った被害が出ます。どうか、このご依頼を受けてくれますでしょうか。」
「勿論です。シルトさんには昔とある件でお世話になりましたので喜んで受けます!それにハルカも実力があります、以前ミッドエデルの闘技場の工事現場に現れたワイバーンを倒したのはこの子なのですから!」
「それに数もなんとか出来る。だから大丈夫です。」
「なんと、そうでございましたか!であればこれ以上心配はございません。出立はいつに?」
決まってる。
「「今からです!」」
「了解しました、では直ちに手続きをして参ります!」
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ムート王国...
「シルト様!」
「どうした。」
例の依頼の被害が出ている地域に佇む聖勇者シルト。今動かせる兵らと共に魔物鹿の鎮圧、森への移送をしている。
「例の依頼を受注した者が現れました。受注人は...キジコ様とハルカと言う者です!すぐこちらに向かうとのことです!!」
シルトはそれを聞いて驚いた。
「なんだと、キジコ様が!?それにハルカと言う者は邪獣の情報提供者本人だ。」
「えええ!?」
「...どうやらこの残業、すぐに終わりそうだな。」
彼は疲れているのか、その事を聞いてとても安心したそうな。




