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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
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第241話 バレないように

 「まぁ見事なゴアマ!」

 「この寒い時期が旬だから脂がのっていそうだな。」

 「(なるほど、確かにアマゴによく似た別の魚だ。)」

 「(本来のアマゴは旬が違うからね。)」


 「あ、キジコちゃーん!」

 「あれ、桃花様。」


 町へ帰ると桃花様と蒼鈴がいた。今公務中のはずだが何故ここに....いや私の知る事でも無いか。


 私を見かけるなりクーラーボックスの中身が何か気になる様子だったので、見せたら今の通り。

 釣り場のおっちゃんからおすすめの魚だと聞いたが、旬であるならラッキーだ。例の料亭にこれの料理を作ってもらおう。


 「ではこれで。」

 「どこに行くんだ?」

 「翡翠亭です。あそこならこの魚を使った美味い料理を作ってくれますので。」

 「そう...私達もいいかしら?」

 「それは...、」

 「勿論です。お母さんがいつもお世話になってますので。」

 「!」


 うぐっ...ハルカの言う通りだ。

 いや私も分けて良いと思いはしたよ?

 でもなんの迷いも無くハルカが返答しちゃったよ!

 この子の方が礼儀があるじゃん!?

 8匹もいるし...別にいいよね、うん。

 いやいやそういう問題じゃない、礼儀だこれは。

 いつもお世話になってるお礼だこれは。


 「ハルカの言う通りです、是非一緒に食べましょう。」

 「わーい!」

 「母上、はしゃがないの。」

 「そうと決まれば早速行きましょう!」



 (むぅ...よし。)

 (なんとか合流出来たな。)

 (上手く時間稼ぎをするわよ!)

 (でも今のはちょっと危なかった、返答が少し早かったもしれない。バレて無いといいな...。)


 「ん?」

 (((ビクゥッ!?)))


 「1匹だけ違う魚だけど、誰が食べる?」

 「.....イワナはお母さんが食べて良いよ。」

 ((ホッ........。))


ーーーーーーーーーー


 「おぉ、これは立派なゴアマとゴマシロ!任せてください!」

 「ゴマシロはキジコちゃんによろしくお願いします。」


 [翡翠亭]

 町の南東側にある料亭。 

 ある時このお店に寄ってみたのだが、見た目と味、共に素晴らしいものだったので店に寄っては亭主と親交を作ってた。お金は掛かったがそれなりお得意様になったので、こんなふうに持って来た食材で料理してもらえるようになったのだ。


 (よし、元から寄る予定ではありましたがこれでしばらく時間は稼げますね。)

 (長く保たせるために今は何か会話をしよう、なるべく明るい話題な?)


 「ねぇキジコちゃん、...今元気?」

 「ん?」


 ((質問下手か!!!??))

 (今聞くそれ!?他言語会話教室の訳かなぁ!?)


 「え、あ、いやーあはは、顔色が...少しくらいから...はは。」

 「ん?あーすいやせん!!そこの魔灯の魔力切れとりました!!」

 「あ、だから私の顔色悪く見えたのか...私が補給しますよ!」

 「おお、ありがとうございます!!会計安くしとくよ!」

 

 (((セーーーーーーーーーーッフ!!!)))

 (何してんだ母上!!?)

 (てへペロ☆)

 (何がペロッだ馬鹿!!)

 (...この世界にもテヘペロあるんだな。)


 「ん!?」


 (((ドキィッ!?)))


 「...背中痒い。ハルカ、かいて。」

 

 (((ガクッ。)))


 「自分でかけるでしょ、何さりげなく娘に甘えてんだ。」

 「えへへ...。」

 「我ながら恥ずい...。」


 (((ハァ....。)))

 (でもお母さんの背中、あったかい。)

 (可愛い....!!)

 (母上...。)


 (ハルカ...眠くなって来たのか?)


ーーーーー


 「お待ちどうさん、まずは香ばしく塩焼きです。」

 「おお、良い匂いだ...!」

 「早く食べよ、お母さん。」 

 「だな、いただきまーす!」


 あむっ....んん!!

 ホクホクした身、たんぱくだが油と塩の旨味が絡み合う...!!


 「んー...美味しい!」

 「身も骨も柔らかくていいわぁ!」

 「ああ、美味い!」


 パリッとした皮の香ばしい風味が食欲を刺激する、

 もっと食べたくなって来た...!!


 (よし、お母さん明日の事は特に考えてる様子無し!)

 (順調だわ。)

 (朱斗ごめん、俺達だけ良いもん食ってるわ。別払いでここの弁当買ってやるから許せ...。)


 ※朱斗は現在ルザーナ達の所にいます。


 「今日はいい日だなぁ...今日....。」


 (((ドキィッ!!)))


 「...今日みたいな日々、今後もいっぱいあるよね。」

 「!」

 「ちょっと変な事言っても良いかな?」

 「どうしたのお母さん。」

 「...ハルカ。私達は邪獣や何かのトラブルで忙しい日々を送ってるだけど、そんな中でもこうやって平和に過ごせる場所があって嬉しいの。現にこうやって、娘と美味しい物を食べてる。ハルカはどう思う?」

 「...幸せだと思うよ。周りに目を向け過ぎるのは返って辛くなるだけって教授から聞いた。だから今は今の幸せを味わうのが一番良いとおもう。」

 

 ((急に重い話来た....。))

 

 「正直思うのさ、いつになったら平穏な毎日を過ごせるのかなって。」

 「?」

 「今迄での人生、色々詰め込んだスケジュールの中で生きてる感じでさ。...楽しい日々も数えきれない程あるけどさ、どうせならもっと落ち着いた日々を過ごしたいって自分もいるんだ。」

 「...。」

 「...こんな急に変な話をしてごめんね、あまり気にしなくても良いよ。」

 「大丈夫、言ったでしょ。私がいるからお母さんは今後退屈な日常は送らせないって。寂しい生き方もさせないって。」

 「ハルカ...ありがとうね。」


 (...今のがキジコちゃんの。)

 (本心...だな。いつも元気そうにしてるくせして本当は内心、疲れているんだな。)

 (いざって時にキジコちゃんのために動いてあげるのが今の私達の役目かしらね。)

 (ああ。)


 ...酒を飲んだわけじゃないのに急に言いたくなった。

 腹から、心から、湧き上がった何かをありのまま言った。

 言ったにも関わらず、何故か隠したい気持ちがある。

 迷惑をかけたくないような何か。

 

 それが何故か、分かりそうで分からなかった。


 「さぁ出来ましたよ、季節の野菜とゴアマの衣揚げ!キジコさんがゴマシロで合ってるかい?」

 「はい、ありがとうございます。」


 私は衣を纏ったイワナを頭から食べた。

 これで少しは、

 それを理解出来る脳になって欲しいもんだよ。

キジコ「美味ぁ.....!!!」

ハルカ (思ったより早く思考塗り潰されてる。)

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