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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
250/302

第240話 サプライズに向けて

 「そりゃっ。」

 「おお、立派なヤマメ!」

 「アマゴだよ、まぁどっちもこの世界に分布してないけど。あくまでよく似た魚だよ。」


 ルザーナ達がエルフ国に居る頃、キジコはハルカと共に山の川魚釣りに来ていた。クルジュの店から麦わら帽子買って親子のお出かけ。


 「でも美味いんだろ?」

 「うん、でもちゃんと冷凍してちゃんと焼いてちゃんとよく噛んで食べるのが絶対だよ。」

 「食中毒はごめんだしなぁ。」


 現在私2匹、ハルカ3匹、...私、負けてます。

 しかしなんだ、今日のハルカは妙に健気と言うか子どもらしいというか...遊びたがりだ。


 加えて教授についても聞いた。

 なんでも教授は近頃資料まとめては寝落ちと情けない姿を見せているらしい。休暇中にゲームしてた私達を思い出す、風邪引くぞ。


 前兆が現れ始めてからは凄く忙しい様子だと言う。

 それが何故なのか、どんな深い理由があった教授という男がこうしているのかは知らないらしい。


 ただ最近、教授とよく似た男が写った写真を見たのだとか。そこには綺麗な女性と女の子2人の3人の魔人族も写っていたという。

 ...どの道彼には何か過去があるのは間違いないらしい。

 実際、今起きている事態の始まりはあまりにも突然だったにも関わらず、かなりスムーズな対応がとられている。

 桃花様のお陰もあるが、急展開で一時休戦とかそういうのではない、最初からこの時のために動いてるっていうのが感じる。


 さらに聞いた。

 他の大陸でマギアシリーズが前兆と戦っているのを。

 改修した事もあり、かなり戦果を上げているらしく、人手の足りない地域に派遣されているようだ。


 ちなみに今残っているマギアシリーズは教授が直接量産させた存在で、ゴーレムでは出来ないような動きや知能が役に立っているそう。


 改修型のマギアシリーズはなんと人工魔法具装着型、生物自体は改造無しで使えるという明らかにその画期的発明の場面書けよ写せよな案件ですが...気にしない。


 制作元が違うとは言え、以前アレほど争ったマギアシリーズに感謝する日が来ようとは...私もおかしくなってきた。


 「ねえ知ってる?非人道の研究所メンバーが捕まった事。」

 「うん、今朝の新聞に書いてたね。」

 「あれリークしたのさ、内部の人間だったらしいよ。」

 「え?」

 「やっぱりさ、あの研究は目的があってもやり方が間違っていると思う人達がいたらしい。教授も手を貸して一斉捜査だってさ、今回は自首に近い形だったしとりあえず全員警兵行き。ああ、通報側は今頃情報をベラベラ言ってるだろう。」

 「...思えば教授はなんであんな奴らと手を組んでいたんだろう。」

 「元は教授と研究所は別だったんだ。研究所は元から非人道の秘密組織、そこに面白いアイデアという感じで情報を与えマギアシリーズの生産体制を整えた事で、皆から教授って呼ばれてんだ、あの男...グラザムは。」

 「そうだったのか。...尚更気になるねぇ、過去に何があったのか。」

 「だね。...グラザムはこの事件が終わり次第ちゃんと自主するつもりだ。その時に色々話してもらえると助かるね。」

 「そうなったら面会行かなきゃなぁ。」


 グイッ


 「っかかった、どおりゃああ!!」

 「...これ、イワナだね。」


ーーーーー


 カッチコチに固まってるアマゴ。

 カッチコチに冷やす術式箱。

 

 「凄いな、この世界のクーラーボックス。」

 「だね、これあったら前世の釣りがもっと楽しかっただろうね、鮮度が保てる。」


 ちなみに釣りの結果だが...。


 私...3匹 loser....、

 ハルカ...5匹 winner!


 負けたよ畜生!!!!!

 ハルカはさりげなくドヤ顔だったよ!!


 「アマゴ...どうやって食べる。」

 「町の料亭に持ち込もう。良い店に心当たりがある。」

 「流石こっちで暮らした私。母親として本当に信頼が出来る。」

 「何度でも言え。」


 私達はレンタルの釣竿を受付に返し家に帰る。


 「そういや、ルザーナ達は朝早くから家を出たけど...何か忙しい仕事があったのかな?」

 「そうじゃない?向こうは社会人だし。」

 「...私このままで良いのだろうか。」

 「いや霊獣という存在なった時点で色んな意味で就職先ないでしょ、むしろ貢がれる側じゃん。」

 「うぐっ。」

 「大体お母さんギルドの依頼仕事で十分稼いでるし、高品質の布の提供で儲かってるらしいじゃん。」

 「まぁね、強者しか行けない場所にいる虫から取れる糸でさ、布を作ってみればあら不思議なんて素晴らしい肌触りって感じ。お陰で高値で売れるのだわ。クルジュさんがお得意様だよ。」

 「...今度服を買ってくれない?クルジュさんの店はさ...良いのがいっぱいあるからさ。」

 「いいぜ、母親だからなぁ!」



ーーーーーーーーーー


〜ルザーナ視点〜


 「凄いです、こんな細かい造形。」

 「足に掛かる負担を軽減させる構造だ。ただ溝を掘れば良いわけじゃないのさ。」

 『流石職人なの...。』


 現在スニーカーのソール部分を作っているヴァリールさん。普通こういうのは私達がやるべきなのでしょうけど...ヴァリールさんは、


 (出来ない事を無理にする必要ないさ、出来るからやるんだ。私だけだったらこんなの作れない、けどルザーナちゃん達がいたからこんな面白そうな仕事が舞い込んだ。だから気にする事はない。)


 との事です。

 見た目はちょっと怖いのに相変わらず良い人で安心しました。


 「そう言えば、鱗から取り出した軟質素材ですが、さっき白くしたのは何故でしょう。」

 「ああ。色はただの染色だけど、この素材の丈夫さや機能性を上げるために、持ってた素材と掛け合わしてみた。対して弾力は変わってないのにより長持ちするようにね。」

 「掛け合わした?」

 「職人旅の末手に入れたスキル[ 創作クラフト 」だ。コレがあれば保有してる知識を最大限に活かし作りたい物を出来る限り作れるようになれるのさ。掛け合わせの知識は主に西にあるゴーレム技術の国で得た知識だ。合成金属を学んでたんだ。」

 「手芸職人なのに金属?」

 「針とかの道具だよ。私の仕事には欠かせない。」

 「なるほど、それは確かに重要ですね。今使ってるそれも?」

 「そうさ。結構高くついたよ?」

 「だとしたら...今作ってるそれもお値段が....。」

 「大丈夫よ、やりたい言ったのは私からだし。でもそうだな...うん、今回の設計図をまとめたのを私が持っていっても良いかな?ああ勿論模写した伏線のを。」

 「全然良いと思いますよ!」

 「『うんうん!』」

 「ありがとう!そうだ、欲しいのあったら私に教えてよ、もっと色んな物作ってみたいから!」

 「じゃ、じゃあ!私も...スニーカーが欲しいです...。」

 「オッケーい!後日になるけど任せておきな!」



 ドンドンッ


 「...力のこもったドアノックですね。」

 「どちらでしょうか?」


 「おい、お前ら!」

 「おおう、朱斗さん。」

 「...まずい、キジコが今、町に帰ってきた!」

 「!?」

 

 え、もう!?


 「それで今ちょうどここに向かっていた、蒼鈴と母上、ハルカがなんとか別の話題に切り替えた。だがこのままだと下手すればバレかねない。」

 「...それはまずいですね。」

 「気をつけろ。」


 まずいですね、バレたらせっかくの苦労の大半が吹き飛んでしまいます。


 「...良い感じに追い込んでくれるじゃないのキジコちゃん。ならやってやろうじゃないの、私の全力を...!!クルジュちゃん、この設計図通りにコレを作ってくれない?」

 「任せてください!!」

 「ルザーナちゃん達は周囲の見張りよろしく、私はより集中したいから。」

 「はい!」


 (面白くなってきた〜....!!!キジコちゃん、素晴らしい物を見せてやるよ!!)

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