第23話 目覚める私とアイツ
「....んん?あれ、もう朝か?」
おはようございます、キジコです。
邪精霊との戦いで気を失い、そこから記憶がありません。
気がついたらふかふかの布団の上です。
よく寝た。
えーと、ここどこ?目指していたはずの1つ目の町か?
窓があるな、ちょっと外を見てみるか。
どれどれ..うお!?
後ろのベッドにスーロッタの姿があった。
まだ寝ているようだ。
昨日(?)の事件で色々あったからな...。
起こさない方がいいか...?
「ん...あ...?」
やべ
起こしちゃったなこれは。おはよーです。
「ん?.......ふぁ!?!?キキキキジコ様!?」
よし、素だな!
「おはよーです、スーロッタ。」
「あ...ああ!!も..も..!」
「藻?」
「も、申し訳ありませんんんんーーー!!」
「おわ!?」
ベッドから飛び起きそのまま土下座するスーロッタ、
「先日は大変申し訳ありませんでした!!このスーロッタ、責任持って自刃いたしまーー!!」
「わあああ待った待った待ったあああ!!」
数分後....
「落ち着いた?」
「...はい、取り乱してしまいすみません。」
「傷は..大丈夫みたいだな。」
「ええ、...邪精霊に取り憑かれていたにも関わらずキジコ様達に手を出してしまい..本当にすみません..!!」
「!...意識があったのか?」
「はい...。途切れ途切れで、記憶がおぼろげながらではありますが、
ハード・アイアン・ディアーと戦っていたあたりから急に、キジコ様の事が強く疑わしく思え始めました。
その後椅子代わりの岩を探しに行ったあたりからさらにその思考が強まり始め、ゼオと合流したあたりには..まるで今の自分が自分じゃないような意識になりました。」
...もしやあの鹿魔物の群れは仕組まれた奴らなのか?
その内1体に邪精霊が取り憑いていたとしたらスーロッタが突然あーなってしまったのも頷く。
予想以上に厄介な事態だ。
「...俺は守るべき仲間を傷つけてしまった...。この手で...この手で...!」
「...大変だったな。今の君がちゃんと優しい人間であって良かった。暴走したままだったらし焦ってたぞ?」
「...その時は皆にまた止めてもらうしかありませんね。」
スーロッタにどこか悔しそうな雰囲気があった。
「ああ、また何かあったら私が相手してやるよ。私も目の前で誰かが死ぬのは嫌だから、ただの客としてではなく、仲間として動きたい。」
「仲間..。」
「君達が私を守るというなら、私は君達を守る。だからそんな悔しがらなくてもいい。何かあったら少しくらい甘えろ、それが仲間ってやつだ。」
「...!」
スーロッタの目から涙が溢れていた。
この人は仲間の事を誰よりも大切に思っている。
彼にとって仲間は守るべきもの。だから余計な甘えはしたくなかったのかもしれない。
もしかすれば寡黙な一面はそういう所から来ているのかも。
そんな彼は今回仲間を傷つけてしまい、心が潰れそうだった。
でも私のかけた言葉が、彼の何かを変えた。
私にとっちゃ前世で十数年社会で学んだことをある程度まとめただけなんだがな...。
いや、上司が似た事言ってたな。
でもまぁ、前世30過ぎてた私から見てこの子も青年であってもまだ子供だ。
色々背負い過ぎる所があるから仲間として支えてあげなくちゃ。
「... いい..のか..この俺が..?」
「いいんだよ、仲間なんだから。」
「..!...あ..ありがと..ありがとう..ありがとう..ございます..!」
「はは、こんな事で泣いていたら後がないぞ、まだこれから色々あるんだ。頑張らなくっちゃ!」
スーロッタは溢れ出ていた涙を拭く。
「...はい!このスーロッタ、1人の人間として、1人の仲間として行動する事をより精進し、この任務を遂行致します!!」
「ああ、そうこなくちゃ!」
トットット.....
「ん?部屋の外から..?」
ーーーーーーーーーー
「そろそろ起きてるかなぁ。」
「わからないわよ、目覚める気配が一向にないんだから。」
「ドア開けたらもう起きてるって事はないっすかなぁ。」
キジコとスーロッタの見舞いにやって来たゼオとアリアとケイ。
<お、勘がいいな!当たりだぞ!
「やっほーい当たった....す!?」
「「え!?」」
慌てて部屋に入る3人
「おっすおはよ。」
「...おはよう、みんな。」
「....!!!」
起きた私達を見てヘナヘナと気力が抜けるように座り込む3人。
同時にさっきのスーロッタのように涙が溢れ出ていた。
「...良かった...目覚めたんだな..!!スー、キジコ様!!」
「..はぁ、お寝坊が過ぎるだろ...もう。」
「わあ゛あ゛あ゛よがっだ..よかったっずううう!!」
え、めっちゃ予想以上にオーバーな反応なんすけど?
(な..なぁスーロッタ、妙に3人の反応オーバーすぎないか?)
(俺にもわかりません....少し聞いてみます。)
「な..なぁ、なんでそんな泣いてるんだ..?昨日そんな迷惑かけたか?」
「昨日...?何言ってるんだよお前!」
「「え?」」
「...邪精霊の戦いからもう[2週間]経ってんのよ...アンタ達!!」
「...2週間か。」
「ふむふむ2週間.....ん?」
「「え?」」
「「ええええええええええええええええええええええええええ!?」」
どうやらとんでもない寝坊をした私達だった。
その後ゼオ達もようやく落ち着いた。
宿の外に出た私達。
「ヴルルルル!!!!!」
「おお!?ルザーナ2週間ぶり...。」
起きた私を見るなり大声で駆け寄り頭を擦り付けるルザーナ。
「本当にご無事で良かったです、キジコ様、スーロッタ。」
実はさっきまでゼオ達同様泣いてたミーシャ。
「そういやどこなんでしょう、この町。結構広いじゃん。」
「この町はヴィールといい、中立の領域にある町です。」
発泡酒みたいな名前だな。
「帝王様の命でキジコ様とスーロッタの無事が確認出来次第で出発ということになってましたのでしばらくここに滞在していたって言う状況ですね。」
「...大寝坊だな。」
「ああ。」
前世だったらかえって死んでないか心配されてるわ、2週間睡眠なんて。
しかしまぁ、これだけゆっくり寝たのは案外久しぶりかもしれない。
異世界きてドタバタだったし。
「ああいえ、この前の邪精霊の事件の発生により各地で反神獣派の存在が確認され、帝王様が身の安全確保を優先した上で行動する様にと通達が来ましたので大丈夫ですよ。」
「反神獣派...もしかして私を狙って来た奴も関係あるの?」
「はい。」
「だとしたら長居は危険かな..町の人にも迷惑かけるかもしれない。」
まだどんな奴らなのか詳しくはわかっていないし、どこに潜んでいるかわからない以上、下手に留まるのは逆に危険だろう。
帝王の言っていた通り無事を確認次第出発は最善かもしれない。
ぐぅ.....
「..そういやずっと何も食ってねぇ。」
「ああ、俺も流石に腹が空いた。」
ずっと寝てたのによく生きてたな私達。
スーロッタもあの時からずっと食べてなかったもんね。
「それはちょうど良かったです、もうすぐ食事が運ばれて来ます。」
「おお!それはナイスタイミング!」
「...この町から輸送される農産品は良質で有名だ。」
「なんと。」
「スーロッタの言った通りこの土地は農業が発達していて、美味しい食べ物もいっぱいありますよ!」
「ほほう!それは楽しみだ。」
ようやく美味しい物が食べられる。
ひゃっほう食べまくるぜ!
....そういやこの体魔物とはいえ猫だから飲食鑑定を発動させておこう。
ウェイター「クックック....。」
ケイ「ぬ、殺気?」




