第239話 スニーカーと手芸職人
エルフ国の一件を終えた私達はリーツに帰って来ました。
「お帰りルザーナちゃん達!こっちはもう出来上がってるよ。」
「ええもう!?」
桃花様達はよくわからない魔法陣が描かれた紙を見せる。
『コレは...術式?』
「どう言う術式でしょう、かなり複雑に何かが設定されてると言いますか...。」
「内緒よ、使う時に見せてあげるわ。」
「むー...。」
一体どんな内容なのかが凄く気になります。
...っと、そんな場合じゃない。エルフ国でもらったこの本について見てもらいましょう。
「この本は...?」
「ふーむ...わからん字やね...。」
「そうですか....。」
「でも何かあるのは間違いないわ、これほど強く質の高い状態保存魔法の掛かってるなんて余程の何かが書かれてるに違いないと思うわ。こんな本にしこんな頑丈に保存してまでの内容、解読しがいがありそうだわ。私達が預かってもいいかしら?」
「は、はい!」
これはちょっと時間がかかりそうですね、解読される日を大人しく待つと致しましょう。
「さて、私達は私達のやるべき事をしましょう。」
「ですね。」
『ですの。』
「頑張ってね〜。」
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とは言ったものの....
「どうやって作るのでしょうか....?」
この一言に尽きます。
始まって3秒で灰になりましたよ私達。
詰んで燃え尽きました。
「武具屋の人に聞いてみます?」
というわけで行ったものの.........
「ゴメン!わかんない!!!」
まとめるとこうだった。
「普通に靴屋行ってみましょう。」
だが、
「ダメだ、キジコ様の靴は見た事がない種類のだから俺じゃ技術に信頼が無い、すまねぇ...。」
未知に挑むのは難しいですからね、ましてや今のご主人様は結構な立場持っちゃってますので失敗すれば責任感のストレス激増ですら可愛い状況でしょうね。
そもそも制作に必要な道具が無さそうですのでどの道無理だと感じました。
『クルジュに頼むのはどうなの。』
そして行ったものの...........
「わかんないよぉぉ......。外からじゃ単純構造っぽく見えてもあれはかなり複雑だわぁ。靴底や内部、底の形や角度その他、調べた事がないから無理だわぁ。」
「ご主人様呼んでみます?」
「キジコ様はさっき女の子連れて帽子買って山に行ったみたいよ。だからどこに行ったか知らないですぅ....。」
「なんてこと........。」
ああ....これじゃ明日のご主人様の誕生日はどうするべきなのでしょうか?
「衣服に困った人の気配がするねぇ、君達かい?」
「「『?』」」
建物の影から声が聞こえた。
そこにいたのはサラサラの金髪のショートボブ、ちょっぴり小麦肌で目付きが鋭く、妙にカジュアル感ある装備をした...
ガラの悪そうな女性でした。
「...貴方は!!!」
「魔法具スカーレットハート...相変わらず似合ってるね、ルザーナちゃん。」
「...!!!」
つい勢いで抱きついてしまいました。
あまりにも懐かしくて、
助けを求めたくて。
「うわぁっ!?あっはは、本当に元気そうです良かった!久しぶり!!」
「えーと...ルザーナ、その背の高い女性は知り合いですか?」
『どちら様なの。』
「後でわかるよ!でもあまり口外はしないでね、町を歩けなくなるから!」
「『???』」
このスカーフを...魔法具スカーレットハートを作ってくれたもう一人の恩人。
「髪切ったのですね、似合ってます!」
「最近はボーイッシュにしてるんだ!...さて、腕に自信のあるお姉さんが悩みを聞いてやろうじゃないか。」
「アレ、腕は隠さなくていいのですか?」
「私だって鍛えてるんだ、君達が信頼出来る人だって言うのはすぐわかるさ。」
久しぶりに出会った手芸職人のお姉さんは、
とてもイケメンでした。
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クルジュさんのお店
「なるほど誕生日か...事情は分かった。私もキジコちゃんに大きな恩がある、任せておきな!」
「はわわわわ.........。」
「あわわわわ.........。」
『精霊だから馴染み無かったけど信頼出来るわね。』
このイケメンお姉さんがヴァリールさんである事を知ったクロマは驚き、馴染みのないスアはその姿勢を見て信頼した。
そしてクルジュさんはクロマと同様固まってる。
「なるほど...確かにそれは複雑だ、でも私なら出来る。」
「本当ですか!!」
「ああ、たまにこの町には来ていてね。内緒でキジコちゃんと会ってるんだ。でもより身近にいるのは君達だ。だから君達は知り得る情報を書き記して欲しい。」
「はい!」
それと同時にヴァリールさんは紙にすごいスピードで何かを書き始めた。と言うか見たことのないペンを握ってます。なんと言うか、フタを開けたらすぐに書けると言いますか、インクに付けてないのに書けている。もしかしてあのペンの中にインクが内蔵されてるのでしょうか。
「キジコちゃんは変身出来るから靴のサイズは基本を....cmでいいけど....魔法具...絶対してみせる...ブツブツ....。」
すごい集中力です。
仕事に打ち込む姿勢がまっすぐ過ぎて眩しい。
「...これが私の知ってる限りです。」
「素晴らしい、十分過ぎるよ。君は本当に主思いのいい子だ。」
「えへへ...。」
「ルザーナ...貴方ヴァリール様と面識あったなんて。」
「まだ、ただのサラマンダーだった時に出会いました。」
「ただって...ルザーナちゃんその時から念話使ってたよね?まだそれほど流暢では無かったけど。あの時の魔人族の5人は元気かい?」
「はい、凄く元気です!」
「そうか、あの子達色々ありそうだったから心配したけど、ルザーナちゃんの様子からして本当に元気だってわかるさ。また会いに行こう。」
ヴァリールさんはもう描き終えた。
「さあ、作ろうじゃないか。スニーカーを!」
ヴァリールさんはキジコから一応靴の情報を聞いた事があるためスニーカーという言葉を一応知っています。
ヴァリールさんはたまに茶屋にやって来ています。




