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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
邪獣動乱編
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第230話 愚かな復讐

 12月25日、ミッドエデルに使者がやって来た。彼らの王国は戦力が少なくここエデル領から兵力を貸してほしいというものだった。

 しかし実際には一般兵の待遇は粗悪なもので場合によっては奴隷に売って国の金にする流れになっていたのだ。


 この事を事前に調べていた桃花様、しかしバレて吹っ切れた使者は部下を使い町に爆破術式を仕込ませ多くの命の人質に。しかし桃花様にそんなものは通じず秒で解除、使者はキジコの猫パンチを受けて窓からぶっ飛んでいったのだった。


 その後の使者は....


 「申し訳ありません、王よ!!」

 「ぐぬぬ....まぁ良いわ、入国管理を甘くした我にも責任はある。だが何も持ち帰らずではなかろうな?」

 「はっ、海岸沿いや周辺の環境はとても良いものでありまして、資源を他国に売るだけでも大きな利益が見込めます。また、中立国家だけあり海辺の町にも多数の種族が住んでおります。弱い女子供を攫い奴隷商に売ればさらに儲けが出ましょう...!」

 「ほほう、アテはあるんだな?」

 「はっ、私にお任せください....!」



 「キジコちゃん派手に吹っ飛ばしたねぇ、バリア張ってなかったらアイツ死んでたわ。死んでくれた方が良いけど。」


 スキルで窓を一瞬で元通りにした桃花様。私が使者をぶん殴った事に大変ご機嫌な様子である。


 「アイツ気配の時点でイライラしたし、国の事をどう伝えて来るか様子見たけど、しょうもない嘘つくよりもタチの悪い話だったわ。」

 「あの...国家間的に不味くないですか?今更ですが?」

 「ええよええよ、住民も他国の奴隷商に売りつける様なヤツらにあげるもんは無い。あの王の事や、十中八九攻めてくるねぇ。」


 私とんでもない事に首突っ込んだわこれ。

 こんな時期に国家の争い?

 やらかしたわノリって怖いよもー。

 

 「キジコちゃん、向こうはおそらく攻める際どさくさ紛れに海沿いの町から人攫うわ。だから商品目当てで武力の揃った奴隷商も引き連れてくるわ。」

 「まじで!?」

 「勘よ。」

 「...えぇ...。」


 でも桃花様の力は未知数だし当たるだろうなぁ。それにここは異世界、欲深い事を堂々大胆と行うようなヤツらが居ても不思議は無い。あぁ、忙しい時期になんて事...。


 「あの国は奴隷商によく人間売りつけとる、奴隷商からしたら良い仕入れ元。貸し借り恩返しやらで武力揃えて仕返しに参加するかもね、向こうからしても良い商品を手に入れるチャンスだもん。」

 「それじゃあ...。」

 「...キジコちゃん、今夜私と海辺にお出かけしよっか。」


ーーーーーーーーーー


 エデルの北、海上。

 船が2隻、エデルに向かって進む。


 「...今回は良い仕入れが出来るという事で我々は参ったのです。リヒト王国の人形になったわけではありませんのでご理解を。」

 「わかっている。」


 リヒト王国の者達は現在船の上にいる。

 なぜなら彼らはエデル領の住民を攫うためにエデルに向かっているからだ。エデルの良質資源を求め邪獣で荒れる世の中で呆れた行動である。


 同時に船に乗っているのは例の奴隷商。

 良い仕入れが出来るという事で、ほぼ雇われた形だが彼らもこれに参加したのだ。


 「今向こうの大陸は邪獣の兆しが現れ疲弊しているに違いない。なにせ邪獣は災厄、かつて世界を滅ぼしかけた存在だ。いくら強者であろうと無事であるはずがない、町も混乱しているに違いない。」

 「...本当にそうか?仮にも向こうは大国、主は位階序列。加えて神獣霊獣共にあの地とは親密だ、普通手を出す方が愚かなのだぞ。それでも勝算があるとかいうから俺達は来た。....いくら仕入れの恩があるとはいえ、ふざけた真似はするなよ?」

 「ふん、安心しろ。向こうは馬鹿やらかした俺を生かすような連中だぞ。そんな甘い連中がいる国はこうなるって教えてやらなきゃなぁ!」


 男は後ろにある大きな箱に目を向ける。


 「俺達を怒らせた罰を見てもらうぞ、エデル!!俺の顔に傷をつけた罪は重いぞ!!はーっはっはっはっは!!!」

 「(愚かなのは誰か...。)」


 奴隷商も呆れた目をしていた。

 それから船は夜の海を進みエデルに向かう。船に張られた魔物避けの術式が海の魔物を遠ざけどんどん進む。


 「さて...そろそろエデル領域の北西海岸だ。漁村に住む獣人達は皆狩の訓練を受けている。テメェら奴隷商にはいい獲物だろ?」

 「...そうだな。」

 「テメェら!気配探知の阻害術式を使え!獣人は稀に敏感なのがいるからなぁ!」

 「(意外にしっかりしているな、さすがは雑兵に金をケチる軍だな。)」


 「(だが手遅れだ。)」


 バシュッ...


 「....!?」

 「すでに気づかれてるな。」

 「は、早くいえよ貴様ぁ!!戦闘体勢に入れ、入れ!!!」


 「うーむ、長距離狙撃ペネトレーザ...初めてやってみたけど外したな...。」

 「キジコちゃん、まずは空間把握に集中するのがいいよ。もし出来れば...それっ。」


 桃花様は指先からレーザーを撃つ。

 レーザーは...どこに当たった?

 遠くて見えん。


 「あのー、見えない。」

 「キジコちゃんこれ、望遠鏡の術式。」

 「ああ、ありがとうございます。どれ...おお!?船首のど真ん中撃ち抜いてる...。」

 「こんなふうに、望遠鏡なしでも撃ち抜ける様になれるってわけ。」


 桃花様すげぇ...。

 リヒト王国の謀略は私と桃花様の射的ゲームに変わってきましたーーーー!!!

 

 「そうね、牽制でもいいからとにかく撃って感覚掴む事からしよう!」

 「はーい!」


 「ぎゃああああ!!!!」

 「海岸だ!何者かが狙撃している!!」 

 「馬鹿な!?ここは大陸からまだ距離があるぞ!?」

 「あーあ、乗らなきゃ良かった。」


 船の上は大騒ぎ。

 奴隷商は呆れる。


 「なんでこうなった!?なんでバレている!?」

 「国にスパイは?」

 「ぁ...。」

 「(コイツ...怒りに身を任せ色々忘れてやがったな畜生!!!)」

 

 ここからじゃ自分らの魔法も届かない。

 大砲も届かない。

 一方的な攻撃。


 「それっ。」

 「ギャアアアッ!?」

 「ナイスよキジコちゃん!!大砲ぶっ壊したじゃない!」

 「えへへ...。」

 「信号だ、信号弾を撃て!撤退だ!!」

 

 赤い光が空に上がる。


 「あー帰ったわね。」

 「追い討ちの必要も無いね。私達の勝ちだ。」

 「キジコちゃん、今の感覚を忘れちゃダメよ?」

 「はーい!」


 こうして桃花様の狙撃教室は終わった。


ーーーーーーーーーー

 翌日...


 「12月26日...明日か。」

 

 何気にリーツに来ているハルカ。

 何かを探し回っているようだが...?


 「明日がどうかしました?ハルカさん。」

 「....んぉ!?ルザーナ!!」

 「こんにちは!」


 ルザーナをしゃがませて撫でる。

 

 「成長したんだね...よしよし。」

 「ふふふ...そういう所はご主人様と同じですね!それで、どうしたのですか?」

 「あのね、明日...12月27日はね...。」


 12月27日...それはお母さんの前世の誕生日。

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