第22話 動き出す者達
その日の夜
「...報告は以上です。」
「..まさか邪精霊が同日中に2度も襲撃してくるとは...。」
「うむ、これはどうやら想像以上に重い事態のようだな...。」
念話通信で魔勇者ヴェアートとサジェス王に報告をするミーシャ。
簡単に言うとオンライン会談みたいなものだ。
ちなみに特殊な技術により盗聴に関してはご心配なく
(向こうから襲うなんて...帝王様の命令ではなさそうね..直接確かめたい相手をそのタイミングで殺すなんてあり得ない..。)
「どうした、ヴェアートよ。」
「あ..いえ、邪精霊に取り憑かれていたスーロッタが気になりまして...。」
「スーロッタは現在も意識を取り戻しておりません。治療で傷は癒えましたがまだ..。」
邪精霊を止めるためとはいえ、かなり怪我をさせてしまい回復に時間が掛かってしまった。
「そうか...。」
「神獣の..いや、キジコという者を狙って来ていたという事はおそらく、ゲトーの言っていた奴ら、いわば反神獣派の者達によるものかもしれん。」
「邪精霊の召喚は並以上の実力をもってしても難しいとされています。なのに向こうは同時2体も召喚した。おそらくその反神獣派にはかなりの実力を持った存在がいると考えます。」
「こんなにも早く狙ってくるなんて...。」
「キジコを殺したその先、奴らの真の目的まではわからんが、奴らは間違いなくまた狙ってくるだろう。」
「はい..。ですが現在もキジコ様、ケイも気を失っており、アリアとゼオが手当てをしています。
そのため今夜中に近くの町へ向かうのは難しく思われます。」
今キジコ達がいる森から最も近い町へ行くにはまだ距離がある。
無事たどり着いていれば問題なくそこで休養が取れたが負傷者多数により困難となってしまった。
「奴らの襲撃も考えると帝国への到着が予想よりも遅れるでしょう..。」
「ミーシャよ、翌日に無事を確認次第近くの町、ヴィールに向かえ。そこで準備を整えると良い。」
「承知しました。」
「こちらも念のため何か情報が流れていないか兵達に確認を行います。」
「ああ頼んだ、双方ともご苦労であった。」
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「様子はどう?」
「ダメね..傷は癒えたけど起きる気配がまだないの。」
「そう...。」
通信を終え、キジコ達の元へ戻るミーシャ。
焚き火がパチパチと音を鳴らす中、
そこには意識を戻さないスーロッタ、眠ったままのキジコとケイ。
「ゼオは傷の方は大丈夫なの?」
「ああ。」
「キュルル....。」
「大丈夫よルザーナ、君の主人は無事だから。」
「...これからどうする?」
「翌日に無事を確認次第、ヴィールに向かうと良いとおっしゃっていました。。」
「キジコ様とケイはまだしも、スーロッタはまだ当分意識は戻らないぞ。」
「担いででも向かうしかない。向こうに着いた方が色々設備は整ってある。」
「そうね。」
「...ん...んん?..あれ、夜っす。」
「「「ケイ!!」」」
「おお!?ハモってどうしたんすか?!」
ケイが目覚めた。
「大丈夫か!?」
「うう、そんな大きな声出さなくっても大丈夫っすよ..。まぁ、まだ痛むっすけど一応無事っす。」
「...良かった..。」
[闘牙」の反動が結構大きかったのか、少しだるそうだった。
「ああ、そういえばキジちゃんとスーロッタは大丈夫っすか!?」
「まだ眠ってるわよ。」
「はぁ〜、安心したっす。」
グゥ.....
「腹減ったっす。」
「ずっと寝てたもんね。」
「皆んなはもう食べたんすか?」
「ええ、ヒールの交代時にね。」
「ヴル!」←この子も食事済み
「まだたくさんあるから、いっぱい食べても大丈夫よ。」
「きゃっほー!いただくっす!」
「だからって全部食うなよ?」
「うぐっ...。」
キジコの分もあるので、上げて下げられた気分のケイだった。
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二度の邪精霊との戦いで疲れ果て、
眠りについた私。
スーロッタも目覚めぬまま次の日を迎えた。
「ルザーナちゃん、スーロッタの運搬重くない?」
「ヴルル!」(大丈夫!)
「どっちも起きないまま、朝になり出発して数時間か。」
担架とか怪我人用の道具とかはないので、
ルザーナにスーロッタを固定して運ぶことにした。
一方私はミーシャが抱えて運ぶとの事。
...心なしかケイが羨ましそうな目で見ている。
アンタ一応怪我人なんだから。
「ミーシャ、ヴィールに着くにはあとどれくらい掛かる?」
「このペースならあと20分も有れば着くわ。」
「うへぇ、アタシ疲れたぞ。」
「アリア、あと少しだ頑張れ。」
「アンタは足のスタミナ無尽蔵かよ...。」
フィエド平野から離れ中立の領域へ辿り着いたゼオ達。
目指すはヴィールという町。
その町はそれなりに規模のある農業地域であり、長い旅で訪れる者が多いそうだ。
特に地産地消活かした料理が有名なんだとか。
ゼオ達は一度その町で準備を整え、私とスーロッタが回復次第、出発再開することになった。
「お、見えてきた!」
「はあ“〜はあ”〜やっとここまで...きた..。」
「アリア死にそうっすよ?」
「大丈夫だケイ、そういうやつは大抵死なない。」
「鬼かよアンタ。」
.....!
「キジちゃん...!?」
「おう!?どうしたケイ、キジコ様はまだ寝てるぞ。」
「いや、そうじゃないんす。
なんつーか..キジちゃんの魔力が急に増大したような...?」
「え...?」
「そんな急に増えるのか?」
「...本当に増えてるわ。昨日が過密スケジュールだったらしいとはいえ、戦闘経験による経験値の量が凄まじいわ...!」
「本当か、アリア!?」
「アタシの狩人之目とケイのセンサーの精度は高い。この子..キジコ様は少なくとも、昨日よりもかなり強くなっているわ。」
狩人之目:獲物を狙う目。捉えた相手の魔力のの計測や行動のある程度の予測が可能。
そして私には補助スキルで、
興味を持って行った行動の経験値が倍増する[向上心]、
無意識も含めて聞いたり学んだ物事の理解力が増す[学習力]、
がある。
つまり1日この体で無理を強いられ必死こいた過密スケジュールで経験値が爆上がりしたのだ。
メタルナントカ倒すよりもハードだぜ。
「とりあえず急ごうか。少しでも早く安全なところで休ませよう。」
「はい!」
「ヴルル!」
「了解っす!張り切るっす!」
「ケイ、一応アンタもその1人だからね..。」
彼らは仲間の無事のために町へ急ぐのだった。
[個体:キジコの覚醒ポイントが1上昇しました。]




