第228話 腹減った、肉だ!!
その日の午後のお話。
疲れ果てた私とハルカはお腹が空いたので町に戻り美味しい物を探すことにした。なにせ朝レギスの森、昼頃はリーツ周辺で調査、と短時間で色々と起こる過密スケジュールで胃袋が空っぽになった。
この後何かあったらエネルギー不足で死ぬ。
お腹ぺこぺこで死ぬ。
過労で死ぬ。
「という訳でハルカ、昼間っから美味しい物いっぱい食うぞ!お会計は母親の私に任せろ!」
「おー!!」
しかしどこの店に行こうか?
飲食店はいっぱいあるけど迷う。
なんかこう、すごく満足感あるのを...、
「ねぇお母さん、確か向こうに精肉店あったよね。」
「?、うん。」
「あそこで肉を買ってさ、家の庭でバーベキューの如く好きに肉焼いて食べるのはどう?」
「...!!!」
稲妻が背筋に走った。
金はいっぱいある、そういうのもいいかもしれない。
「流石我が娘よおお!!」ギューッ
「ぐるじぃ...。」ギャーッ
産んだ訳じゃ無いけど血は繋がっている不思議な我が娘、よーし良い肉買おうではありませんか!
20分後、我が家の庭....
「これだけ有れば良いだろう、食べ応えあるだろう!」
骨付きの大きなハム肉、
厚めに切られた牛肉、
鶏の小型骨付き肉!
(そして夕飯用の脂の乗った豚肉。角煮にしよう。)
「精肉店のおばちゃん、サービスで牛肉くれるなんて驚いたよ。」
「今後売ってみる価値があるかどうかで私達に譲ってくれたね。この肉は昼に倒したあの牛の肉だよ。」
「ほぅ、硬い肉だと思ったがそうでもないな。」
「別にあの牛は常に暴れてる訳じゃないからね、なんなら向こうの地域では牧場で飼われてるんだよ。」
「そうなのか...なら、私達は検食という名の下しっかり味わなければな。」キリッ
「うん。」キリッ
あらかじめ買っておいた焼き肉用網に牛肉と豚肉、石で円を三つ作り火をつけ、油鍋、漫画肉を焼くセット、そして簡易七輪。
「うへぇ、ミニ肉祭りだ。」
「お腹空いた。」
「ハルカ、私の記憶を持ってるならフライドチキンの作り方わかるね?」
「当然。カリカリジュワッと仕上げてみせよう。」
どうせなら薬草畑から香辛料になりそうなのを持ってこよう。以前料理に使える種類を色々教えてもらった。
「ハルカ、チキンにはこれを!」
「おお、いい香り。」
骨付き肉にハーブを耐火性の糸で巻きつけ固定。
下ごしらえをして、さぁ焼くか!
お料理用簡易術式本にえーと...
さて、作業中は特に何もないので少し近況を言おう。
ルザーナ達は現在も館で仕事中。
従業員さん達とも仲が良いらしく、特にルザーナはスタイルが良いから他の女性従業員さん達に羨ましがられていて、たまに桃花様にどんな服が似合うか捕まっているんだとか。ルザーナは美人だからね!
ニコは国の公務で忙しい。
邪獣の件もあるからしばらく会えないかもしれない。本人はまた遊ぼと言っていたがいつになるやら。親友としてまた会いたいです。
ケイ達5人組は帝国に戻り国の守護。
聖獣に鍛えられ段違いで強い1人含め彼らの実力は本物。下手に心配はしなくて良いだろう。
邪獣の件が本格化した影響で各国と協力関係になったため帝国と王国の仲の悪さがもはや消えつつある。聞いた話では聖人族と魔人族は人種差別的な争いがあり、この大陸もつい最近までは争いが何度もあった。
各時代王達にも中立を目指す者が何人もいたそうだが、彼らは独裁を敷いてる訳でもないし不満が募る方針を急に出すのは内乱に繋がる。だから時間をかけて少しでも中立になろうと努力してきたそうだ。そしてようやく、この大陸でその歴史的な中立化が進み出した...そんな所だ。
でもこの大陸外の国々は現在も争っているらしい。両国これをきっかけに争いが無くなって欲しいと思っているようだ。
この前珍しくシルトさんから手紙が来た。
何でも王国に竜人国からの料理店を開く事が決定、菫ちゃんのアイデアが結構詰め込まれてるそうだ。
菫ちゃんはラノベ大好きだから異世界人を驚かす様な何かを持ち込んでるのは間違いない。オープンしたら是非行ってみよう!
それから...
「よーし焼けたね、いい香りだ!」
「こっちも大丈夫だよ。」
こんがり焼けた骨付き肉(大)、
レアに焼き上げた厚切り牛肉、
ザクジュワなフライドチキン!!
さ、ちゃんと手を洗ってから...
「早く食べようよ。」
「だな、では!」
「「いただきまーす!!!」」
漫画肉にガブリ、ハムの風味と脂が口の中にドカンと広がる!ハムの旨味と歯応えが食欲を増進させる!
レア牛肉をガブッ、上質な脂の甘みと口溶けが最高です!文句なしの上等なお肉ですーっ!!
そしてフライドチキン!!!ザクッと表面、ジュワッと肉脂!!熱々激ウマ、....美味すぎる!!!
「「う...ウマぁぁぁ〜〜.......!!!!」」
幸せ過ぎる。
空腹時に食う美味い肉は正義であり凶悪過ぎる!!!
「幸せぇ....!!!」
「凶悪ぅ....!!!」
私とハルカ。親子で初めての料理であり、親子で初めての幸せな時間。こんな形でする事になったのは驚きだけど私は嫌じゃない、むしろ楽しくて仕方がない。
さぁまだ肉はある、いっぱい食うぞー!




