第223話 教授-過去編②
「...とうとう出たのか、邪獣のスキルが。」
「邪獣の...スキル?」
教授は目を覚まして研究室に来た。
私はお母さんからもらった情報と視覚共有で見た結晶を紙に描き記した。すると教授は驚き真剣な表情をする。
どうやら何か知っているらしい...。
「呪力系のスキル[ 死霊之厄災 ]だ。かつてその地で死を迎えた存在の複製をするスキルでな、複製されたヤツは例外なく怒りに囚われ異常なステータスを持つ。」
「お母さん曰く、火力が増してる一方耐久力が全然ない、生命力を犠牲に力が増す、ってのがいたと。」
「そうか...。他に何かあるか?」
「一応お母さんから聞いた事は書いてある、えーと...、
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謎の光が纏われてから数年...10歳になった頃だ。
俺はこの世界で生きる上で重要な力...魔法を学んでいた。
一般的な魔法は、
1、スキルによる魔力エネルギー中心の技。
2、術式と呼ばれる魔法陣を用いた魔力技。
1は典型的なもの、自身の魔力を用いて撃つとかそう言うのだ。ただしスキルと言うのは上限が存在するようで、人間は多くて20個が限界らしい。これから様々なスキルを身につけたい以上、下手にあれこれ取るべきではない。
2は少々難しい。術式は1と違いスキルのカウントには入らない魔法技術だ。原理はまだわからないが元々精霊という存在が使っていた精霊魔法という技法を人間用に作ったのが術式だ。
魔力で陣を構築し発動する、一見単純だが使用するには結構練習が必要。その上術式効果を維持するには定期的に魔力を供給しなければならない。しかし使いこなせば戦いや生活など幅広く便利に使える上、さらに慣れればペンなどで魔法陣を描き使える事も出来る。
だがこれはあくまで相当な努力をしてこそのものであって一般人では簡易で弱めのしか使えないのだ。
俺も書斎や親から聞いた知識で色々調べようやく二つ身につけた。
「...よし、ちゃんと植物の細胞壁や葉緑体が見える。」
顕微鏡の術式だ。
正確には望遠鏡の術式を重ね加減その他もろもろ改良した事で作ったのだ。これでなんか病気かかった時は治せるー...訳ではない。その辺薬の分野は俺担当じゃない。あくまで...前世の未練的な何かで作っただけだ。
そしてもう一つは...
「...少しずつ熱が上がってる。」
物体の熱を上げる術式。
まぁ今の俺ではせいぜい35℃あたりで限界だが...。
ガチャッ
「その歳で術式を学び使える様になるとはすごいなマース。」
「!、ありがとうございます父さん。」
部屋に父親が入ってきた。
俺が術式を使っている光景を見て喜んでいる。
「流石は[勇者]の称号に選ばれただけはある、お前のような息子を持てて嬉しいよ。」
「やめてくださいよ父さん、僕なんてまだまだなんですから。」
...勇者の称号。
それは俺が以前光に纏われた際得た力。
勇者の称号はこの世界を危機から守るために相応しい存在に与えられるらしく、俺は典型的な異世界ファンタジーに巻き込まれたんだと強く自覚した。
ただ聞いた話では勇者の称号は俺ともう1人...つまり2人持っているというのだ。
その名も魔勇者。
この世界は様々な種族の人間がいるのだがその中でも多いのが、
・前世の人間とほぼ同じ見た目の[聖人族]
・ダークカラーで目が白黒逆の[魔人族]
この2種族だ。
聖人族と魔人族は昔から肌や髪の色で差別的な争いが多く、住んでいる大陸は別々なのだが今もちょくちょく戦争が起きているという。
この世界でも色がどうとかこうとかで争うとは...考えたくない。そんな戦争に駆り出されるのだけは絶対ごめんだな。
当然だが俺が身につけた力は術式だけじゃない。
「...魔法刃。」
魔力だけで作った赤白い光の剣。
前世金曜日で見ていた映画やアニメを元に作ってみたが...いいな。
でも魔力消費量が少し多い、どうにか抑えて戦いたいが...そうだ。武器に魔力を纏わせる事は出来るだろうか、試そう。
俺は父親に木剣を借り、魔力を込める。
少し時間はかかったが剣に魔力を纏わせる事が出来た。
父親にこの事を報告し、近くの森の木で試し斬りをする事にした。
すると木剣に魔力を纏わせたのに斬りつけた木は比較的細いとはいえ、斬り倒れたのだ。
父親には褒められたがこれでは弱い。
だが無理して出力を上げれば自滅するだけだ。
だから体外的な魔力が必要なのだが、空気中にある自然的な魔力では足りない。かと言ってエネルギー密度の高い物をいきなり使えば暴発する可能性も高い。
なら有効なのはなんだ...?
考えてる内に3日、森で悩んでいたら...、
『あーた、強いのね。』
「え?」
どこからともなく声が聞こえた。
「誰だ?」
『ここよ。』
声がする方向を見てみれば、そこにいたのは小さな子供。でもなんだ...人じゃない。
『ウチはこの森の精霊。森に変に強いヤツがいると感じたから来てみたけど...人間の子供じゃない。』
「...何か用ですか?」
『あんた、才能はあるっぽいのになんか魔力の扱いが下手ね...。』
「それがどうした?」
『そうね...。』
「グルルル....。」
「!!、熊だ!」
『見てなさい。』
森の精霊とやらは指先に魔力を込めて息を吹きかける。
すると風の刃が形成され熊に怪我を負わせ撃退した。
「今のは...!?」
『3日前あーたが使ったのと同じ量の魔力で放った風魔法よ。』
「なぁっ!?」
今のが!?
明らかに...次元が違う。
『よーし、あんたウチの弟子になりなさい!』
「いきなりなんで!?」
『あーた[勇者]でしょ?勇者がそんなのでいいわけ?』
「なんで知って....、」
『いいから!あーたこのままだと邪獣復活しても中途半端な強さになるわよ!?』
「...!!」
『邪獣の事くらいウチでも知ってるわ!わかったらさっさと返事しなさい!!』
突然強制的によくわからない精霊の弟子にされた俺は、うるさいので仕方なく定期的に森に通い鍛える事にした。
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「...以上だよ。」
「予想より早い気がするな、浄化の力が強い精霊水の川を汚染する程に力を戻し始めてるとはな...。」
「でも...邪獣はどう復活するのだろ。邪獣自体が特殊な感染個体だっていうなら宿主はどうするのか、そもそもの感染源は誰なのか。」
「...おそらくだが邪獣が感染源である確率が高い、ある聖獣に感染源である[何か]が取り憑きああなった...と考えている。」
「なるほど...でもこうやって復活するっていうならただ討伐するとかでは...。」
「ああ...無理だな。」
...あの時の俺は本当に未熟だった。
あの時しっかりしていれば...こうはならなかったかもしれない。
なんとしても、[今度こそ]消し去る。




