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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
闘王闘技編
207/302

第199話 メイドの一時

 クソドラゴンのラッゴに取り込まれてしまったルザーナの魂を助けるために再び獣人となったキジコ。しかしその体は全快しておらず、不撓不屈を酷使した結果肉体がとうとう限界を迎え、キジコは消滅してしまった。


 一方己を助けるために命を賭けた主への悲しみとラッゴに対する激怒に染まったルザーナ。復讐心の塊となり徹底的に痛めつけるもそれだけがキジコに報いる事ではないと気づき止める。


 ラッゴは桃花と朱斗の怒りの一撃をくらい、断末魔を叫びながら醜く散った。


 それから一夜。

 最悪のタイミングと言えるのか、ニコは目覚めた。

 襲って来たのは深い悲しみ。

 もっと一緒にいれるはずの親友を失った。

 失いたくない親友をとうとう失った。

 最後も自身を含めた誰かを助けるために命を賭けた友に、

 涙が止まらなかった。


 この件は最悪とも言える、目撃者が多かった。情報はすぐに広まりキジコと関わって来た者達は驚愕し、悲しんだ。

 この事もあり闘王闘技は中止の予定に進んでいる。

 同時に、闘王闘技の歴史上最悪の6日間とも言われた。


 



ーーーーーーーーーー



 「私が...覚醒途中だと?」


 場所は変わりあの世の豪邸。

 

 「ギリギリだったわ、キジコちゃんの覚醒に必要な力...そう、ポイントとでも言おう。キジコちゃんが不撓不屈を使う前にポイントが一定に達した事で新たな肉体へと再構築を始めたの。」

 「ええっ!?」


 キジコは覚醒条件を満たしていた。

 だが気になる所はまだまだある。


 「待って、私ってまだ進化出来るの!?てっきりバッドステータスの関係上あれが限界かと...。」

 「バッドステータスには引っかかっていました。」

 「へ!?」

 「キジコさんのバッドステータス[極められぬ者]は、称号[多趣味]によるスキル入手量の無限級の増大に引き換え、スキルの一定以上の強化や神獣やその他の進化を出来ないなどの効果があります。」

 「じゃあ...何で私は?」

 「肉体が崩壊したからだわ。」

 「え?」

 「崩壊した事で覚醒途中の肉体はより限界を伸ばす、拡張しようとしたの。その結果キジコちゃん自身の容量、キャパシティってのが増えた。それにより進化が可能となり現在肉体を構築中って所ね。」

 「じゃ、じゃあ私...その内向こうに戻れるって事!?」

 「そうよ。まったく...肝を冷やしたわ。」

 「ごめんなさい!!!」

 

 どうやらギリッギリのラインであったようだ。

 今皆んなどうしてるのかなぁ。

 ...そういやいつ戻れるのだろ。


 「戻れるの...いつ頃かな。」

 「そうね...12月1日のお昼頃だわ。」

 「ウゲっ、結構期間が空いちゃってる。」

 「まぁせっかくここに来たんだから、何か色々教えちゃうわよ。」

 「おお、マジですか!!」

 「結構呑気ですね...二人とも。」


 そういうわけで私はディメン達としばし過ごす事になりました。


ーーーーー

 

 「...で、何してんの。」


 目の前で私のアナウンス係のスズネさんと現閻魔の冥さんが争っている。


 「キジコ様はこちらがお似合いです!!!」

 「いいえ、こっちが似合います。」


 スズネさんはメイド服、冥さんは和服を持って私にどっちを着せるべきかを争っているようだ。そんなに争うか?

 それから15分くらい争っていたが結局じゃんけんでメイド服に決定。私は人生猫生初のメイド服を着る事になりました。


 わーなにこれ、フリッフリでヒラヒラのロングスカートタイプのメイド服。スズネさんとその他のメイドさんがお人形を着飾るかの如くあれこれ私をメイドさんに変身させた。

 割と恥ずい。


 「なんて綺麗なお人形さん...!」

 「誰が人形だ。」

 「フフッ、冗談ですよ。」


 目が怖いです、スズネさん。

 それから私はディメン...ではなく冥さんの元へ行く。


 「さて、キジコさんの退屈しのぎになれば良いのですが、しばらくは私が侍女的なのを教えます。向こうは紅茶がある世界なので美味しい淹れ方も教えるわ。」

 「おお、その辺はありがたい...。」

 

 それから私はメイド仕事やお茶会に関する事をあれこれ叩き込まれたというか、向こうが興味津々に教育してきた。

 特にスズネさん、可愛い後輩が出来たとかなんとかで冥さんの所に来ては私になんか着せてくる。だから私は人形でも妹とかでもないんだよー。


 ちなみに面白いのは紅茶や茶菓子作り。

 紅茶の適切な淹れ方があるのは知っているが、やってみれば意外と楽しい。

 先日なんてディメンが私の前世の世界から紅茶葉持ってきてびっくりした。私の知ってる味だから懐かしさに涙出た。


 「ぐすっ...日菜ちゃんが淹れてたのが懐かしいよぉー...。」

 「そんなに懐かしい味なのね。」

 「キジコちゃん、紅茶の淹れ方上手になったじゃない。」

 「そうですかー?えへへ...。」


 次に、スズネからの誘いで色々連れ回された。

 例えば湖のある草原とかで絵を描いてみましょうと。


 「わぁ、すごく上手です!」

 「そうかな、スズネさんは....え゛!?」


 それはそれはとても美しい水彩絵画。

 コンクール最優秀賞間違いなしってくらい素晴らしい絵画。


 「よーし、次は向こうまで競争しましょう!」

 「この服装で!?」


 いちについて、よーい...ドン


 バシュンッ


 「え!?」

 「ふふん、私の勝ちです!」


 何が起こったのか私にもわからねぇ。

 メイド服とは言え...私より早いだと...!?

 この人本当に何者だ???

 

 「...。」

 「...?どうしたのですか。」

 「スズネさん達って何者なんだろうなって。」

 「ああ、私達ですか?まぁ見たまんまですがディメン様に使えるメイドです。詳しく言えば...ある時死に、もっと生きたいという願望故ここにいるって感じです。」

 「あ...じゃあ、その未練的なのが無くなれば...。」

 「いえ、転生とか天国地獄も行きませんよ。」

 「え?」

 「今ここで暮らす事に強い生きがいを持ちましたので幽霊とかではない、別の何かになりました!」

 「べ...別の何か...。」

 「そんなわけで私はセカンドライフを捨てる気は無いですね!」

 

 本当に謎が多い人だ。


 そんな感じで私は、復活するその日まで呑気に暮らしていました。

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