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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
闘王闘技編
205/302

第197話 虚無ソマリテ/消エル

 それは突然だった。

 ルザーナが倒れた。

 

 「..っ!!!!」

 「ドラゴン・ソウルイーター...俺様の勝ちだ!コイツは竜族相手にしか効かねぇけどよ、条件さえ揃えば魂を瞬時に取り込む禁忌の術よ!!」


 魂...だと...、


 ゆっくりと、何かの...思考が、消えてゆく。

 染まり上がってゆく、怒りが...無が...。


 「うぅぅ....おあああああーーーーッ!!!!」


 ラッゴの魔力が膨大に膨れ上がり、巨大で恐ろしい見た目のドラゴンへと変貌する。もはや先程の面影なんて感じない、怪物だ。


 「グワーッハッハッハ!!!見よ、俺様が今まで取り込んだエネルギーを解放した姿を!!素晴らしい...素晴らしいぞ!!」

 「あ...ぁ....!?」

 「そこの青い竜の魂は俺様をさらなる強さに導いた!!礼として...主人である貴様も喰ってやるとしよう、主人も取り込んだ方が寂しくないだろうからな!!!」


 ラッゴの鱗に...考えたくもない、青い色が混ざってゆく。

 

 「ごちゃ...ごちゃ...うるせぇよ。」

 「ハッ、お仲間奪われて随分乱暴な口調になったじゃないか!そんなんじゃモテねーな!!」


 こんな短い期間でさ...なんでこうなるんだよ。

 スアが死にかけた。

 ニコが死にかけた。


 ...ルザーナが...ルザーナが...!!!!


 [覚醒ポイントが1上昇]


 「これ以上...。」

 「あ?なんだってー?」

 「これ以上...私から大切なものを奪うなよ...。」

 「ハーッハッハッハ!!いい眼だ、だがこの世は奪われた奴が悪い、敗北者なんだ!!」


 [覚醒条件を満たしました]


 奪われた奴が悪い?奪われた奴が敗北者?...確かに笑っちゃうよね。結局はこうなるんだもんな、いくら強くなっても...いくら成長しても奪われないものなんて無い。


 この世に絶対なんてない。私も大切なものを絶対守れるなんて保証はない。そういうのはわかってる...わかってるけどさ...。


 いざ直面するとさ...目の前で見るとさ...。


 「狂ってしまうんだ。」



ーーーーーーーーーー



 町に血の雨が降る。

 ラッゴの左腕が根本から切り裂かれているからだ。

 側には獣人、暗い顔の中から金の鋭い眼を光らせている。


 「....ッッ!!?ああああああーーーッ!!?」

 「奪われた奴が...悪いんだよな。」


 ラッゴは痛みで叫んでいる。

 私にその叫びは聞こえない。

 敗北者の叫びなんて聞こえない。

 聞きたくも無い、聞く価値もない。

 

 お前も似たような事したんだ、お前の価値観がそうであるならば私もその価値観で...お前から何もかも奪って消し潰す。


 「馬鹿な...!?魔力が無いんじゃないのか!?」


 なんで獣人に戻ったかなんて知らない。気にする気力もない。気にする価値もなく感じる。

 あー...なんだろう、前にも似た事があった。思考はあるけど...真っ白、真っ黒なのか?わからないけどまた一色になってる。

 

 まぶたがちょっと重い。

 やる気はある。

 アイツを殺せばいい。

 ただそれだけ。


 ペネトレーザ。


 「....!?」


 喉に大穴が空いた。

 ルザーナは助けるけどお前はさっさとくたばってくれないかな。

 ...ん?


 「......ッガアアアアア!!!」


 喉と左腕が再生した。

 しつこい。

 斬る。


 四肢を斬った。

 すぐに繋がった。でも痛みはあるらしい。

 炎のブレスを吐いて来た。

 魔力弾で押し勝ち顔に大火傷を負わした。

 でも再生した。

 

 ...しぶとい、不撓不屈。


 [危険、必要最低肉体強度まで回復しておりません]

 [肉体の崩壊度が30%を超えました]

  

 関係ない。まだ殴る。


 [崩壊度35%]


 私がどうなろうとも。


 [崩壊度40%]


 ルザーナを助ける。

 ルザーナの魔力を感じる。

 ルザーナはまだ生きている。


 [崩壊度45%]


 大切ないものを奪われた責任くらい取らせてほしいんだ。


 [崩壊度50%]

 [もうやめてください!]

 [体が...体が...!!!]


 体がヒビだらけで光ってる。

 ...そういやバッドステータスを強引に無視した力だから肉体がもう耐えられないのか。


 でも関係ない。

 

 [崩壊度55%]


 泣きたいのは私だ。


 [崩壊度60%]

 

 鍛えてもらった意味がなくなる。

 誰かを守る強さがわからなくなる。

 もっと考える事もあるだろう。

 どうやってルザーナを助けるとか。

 どうルザーナに謝ればいいか。

 

 わからない。

 わからない。

 わからない。


 ただあのドラゴンを殺す事に頭の中が染められている。

 ただルザーナを助けられれば良いと考えてしまう。


 沈む、もっと大切な事がいっぱいあるのに。

 染まる、戻る気力もない。

 崩れる、進む気力がない。


 [崩壊度80%]


 どれくらい時間が経ったかは知らない。

 ずっと無理をして来た私の体は今にも壊れそうになっていた。


 まだ死ぬわけにはいかない。

 ルザーナを助けれていない。

 家族として...助ける役目を果たさせてくれ!!


 (ご主人様....!!)


 [崩壊度85%]


 「!!」

 「...が...ぁ...。」


 一瞬、ルザーナの声が聞こえた。


 ...今しかない。

 ラッゴの首を掴み魔力をより解放する。

 魔力共有....いや、魔力を侵食させる。


 「ルザーナ...今助けてやる!!」


 私は魔力の塊の中からルザーナを引っ張り出した。


ーーーーーーーーーー



 「...っ!!!はぁ..はぁ...!!?」


 ルザーナが起き上がった。

 ...助けられた。

 

 [崩壊度90%]


 「ご主人様....え。」

 「ごめんね、ちょっと気づくのが遅かったから無理しちゃった。」

 「あ...ああ...!!!」


 ルザーナの目には、今にも消えそうなキジコの姿が映っている。だがその景色はすぐに歪み始める、大粒の涙で。


 「嫌...嫌...!!」

 「...思ってたより時間は経っていない。私って本当に自分の健康に疎いんだね。」


 [崩壊度95%]


 「キジコちゃん!!!!!」

 「キジコ!!!!!」


 今のは...桃花様達の声か。

 ...もう力が入らない。

 体から魔力の粒子が溢れている。

 ...体が魔力の粒子になっているのか?


 「死ぬな!!」

 「間に合ってくれ!!」


 脚が崩れた。

 地面に倒れた。


 頑張り過ぎた。

 前世も今世も死因は過労。

 情けないけど、誰かを助ける事が出来たなら、

 私はそれでも幸せだ。


 ...目が見えなくなって来た。

 ...突然すぎるお別れだ、せめて一言は言っておこう。


 「楽しかったよ、ありがとう。」


 [崩壊度...100%]


 その体は...魔力の粒子となり、



 消えた。


 「ご主人様ぁーーーーーッ!!!!!」

次回、別視点

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